【藤 和彦】求人サイトで工作員が暗躍、1万超の特許を不正取得…中国の暴挙に国際社会から非難が殺到している

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中国工作員が出した求人

海外の大手求人サイトには、中国の工作員が潜んでいるかもしれない。

米国、英国、カナダ、豪州、ニュージーランドの5カ国による機密情報共有枠組み「ファイブ・アイズ」の情報機関は6月3日、「中国のスパイがオンラインの求人プラットフォームを積極的に利用し、機密情報にアクセスできる人材を勧誘している」と警告を発した。

同通達によれば、中国国家安全部に所属する工作員がリンクトインやインディードといったプラットフォーム上で採用担当者やヘッドハンターを装い、「防衛や外交の専門家」「戦略産業の技術者」など特定の人材に近づいていたという。

過去には各国が個別に同様の警告を発したことがあったが、今回の共同文書は前例のないものだと言われている。これに対し、在英中国大使館の報道官は「中国のスパイ活動の脅威という主張は完全にでっち上げで悪意ある中傷だ」と猛反発した。

膨大な特許を不正取得

中国への批判はこれだけにとどまらない。

中国政府は、先端技術の海外取引に関する規制を強化し始めている。

中国国務院は6月1日、中国人投資家、技術、データ、国家安全保障に関する海外取引を精査する、規制当局の権限を拡大する包括的な新規則を発表した(7月1日に施行)。

完了した海外取引の撤回を、中国政府が強制するための公式の法的根拠を初めて示した形だ。中国政府は人工知能(AI)などハイテク分野の技術流出に敏感になっており、4月には米メタによる中国系のAI企業Manus(マナス)の買収の解消を命じていた。

一方、海外では中国の不正手段による技術獲得への批判が高まっている。ロイターは2日、「ベルテルスマン財団の委託を受けてドイツ経済研究所(IW)が実施した調査で、中国は過去20年間にドイツで開発された特許1万1300件以上の所有権を取得していることが明らかになった」と報じた。

特許が海外に移転することは通常のことだが、中国勢の取得攻勢が激しいため、IWは「中国市場は外国人投資家に対して閉鎖的でありながら、中国当局は欧米での戦略的買収を推進している」と警戒している。

企業が補助金漬けに

諸外国から中国への批判はまだまだある。

極めつきは経済協力開発機構(OECD)の報告書だ。OECDは1日に発表した報告書で、2005年から24年までの20年間で、中国企業が政府から受け取った補助金の比率は、他国・地域の企業の3〜8倍と突出して高かったとの分析結果を示した。

調査対象は、太陽光発電パネルや半導体、鉄鋼、造船など製造業15業種。政府による助成金や税制優遇措置、政府系金融機関などからの市場を下回る金利での借り入れの3種類を補助金とみなした。

中国に拠点を置く企業が得た補助金は、売上高の約2.5%に上ったのに対し、アジア太平洋地域の企業は約0.3%、欧州は約0.4%、北米は約0.9%だった。

報告書はさらに「中国企業の05〜23年の市場シェア上昇分の約60%が補助金によるものだと説明できる」としている。補助金を受けた企業は販売価格を引き下げてシェア拡大に走ったというわけだ。

数年前までは報告書の通りだろうが、筆者は「中国政府はもはや自国企業に補助金を出す財政的余裕がなくなっているのではないか」と考えている。補助金を出していた地方政府の財政が火の車だからだ。

地方政府の財政赤字は拡大し、不況は収まる様子をみせない。あおりを受けているのが若年層や非正規雇用の立場に置かれた人たちだ。たとえば火薬を扱う工場や炭鉱など、危険な現場で働かざるを得ない人々を巡る悲劇が相次いでいる。

庶民の不満は高まるばかりだが、後編記事『SNS投稿や海外サイト閲覧で政治リスクをスコア化…中国政府が開発を進める「デモ事前摘発AI」のディストピア』で見ていくように政府は景気回復ではなく、不満封じ込めに躍起になっているようだ。

【つづきを読む】SNS投稿や海外サイト閲覧で政治リスクをスコア化…中国政府が開発を進める「デモ事前摘発AI」のディストピア