野呂佳代、家業を継がなかった過去「本当にやりたいことが勝ってしまった」 屋台ラーメン一家に触れて募る“恩返し”の思い
●『銀河の一票』でも“受け継ぐ”役柄
タレント・俳優の野呂佳代が、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00〜 ※関東ローカル)のナレーション収録に臨んだ。担当したのは、8日に放送される「父と息子の屋台ラーメン〜令和の赤ちょうちん物語〜」。父の遺志を継ぎ、屋台ラーメンを守ろうと奮闘する一家の姿を追った作品だ。
実は野呂自身も、美容室を営む実家に生まれ、母方の祖父母は喫茶店を経営していた“商売人一家”の出身。一度は美容師を目指して専門学校に通いながらも、自らの夢を追って芸能界へ進んだ過去を持つ。家業を継がなかったからこそ感じる家族への思い、そして現在放送中のドラマ『銀河の一票』(カンテレ・フジテレビ系)や、俳優活動を通じて見えてきたこととは…。

『ザ・ノンフィクション』のナレーションを担当した野呂佳代 撮影:渡邊玲子
○「自分の選択は正しかったのか」自問する日々
埼玉・大宮の繁華街の片隅に夜になるとともる赤ちょうちん。今どき珍しい屋台ラーメンだ。飲み会帰りの人々が締めの一杯を楽しみに訪れる店はいつも盛況となっている。
店を切り盛りするのは、貴雄さん(40)。かつてはタクシー運転手をしていたが、1年前、父の死をきっかけに仕事を辞め、父が守ってきた屋台ラーメンを受け継いだ。47年にわたり上野駅や東京駅で屋台を引き続けた父は“伝説の職人”と呼ばれた存在。その父が言った最期の言葉が「屋台ラーメンを継がないか」。息子が父の味を受け継ごうと心に決めた瞬間だった。
しかし、現実は甘くない。営業は深夜に及び、帰宅は朝4時近く。妻と3人の子どもの5人家族の生活は余裕があるとは言えず、家族と過ごす時間も限られる。「自分の選択は正しかったのか」と自問する日々…それでも家族は「屋台が好きだから」と背中を押してくれる。今では、祖父の味に憧れる長男も店を手伝ってくれている。
高校受験を控える長男は、屋台を手伝う合間に常連客に勉強を教えてもらいながら、自分の夢をかなえようとしている。そして父・貴雄さんもまた、屋台の灯りをこの先どうつないでいくのか思いを巡らせていた…。

貴雄さん(左)と常連客 (C)フジテレビ
○「気持ち一つで頑張っているところに熱いものを感じるんです」
ナレーション収録を終えた野呂は、まず一家の温かな関係性に強く惹かれたという。
「本当に素敵な家族でした。お子さんたちもすごく素直で、みんな家族が大好きなんだなっていうのが伝わってきて。どうやって育てたらそうなるのかなと思うぐらい、愛情にあふれたご家族でした」
タクシー運転手から屋台ラーメン店主へ――。決して簡単ではない転身だったはずだ。それでも貴雄さんが決断できた背景には、家族の存在があったと野呂は感じている。
「好きなことを仕事にしたいという気持ちも、もちろんあったと思います。でも何より、ご家族が応援してくれたからこそできた転職だったんじゃないかと思うんです。応援することも家族の愛情表現の一つ。どんな状況になっても支え合える関係性が、本当に素敵だなと思いました」
番組の大きなテーマの一つが、“受け継ぐ”ことだ。現在放送中のドラマ『銀河の一票』でも、野呂が演じる月岡あかりは恩ある人物からスナックを受け継ぐ役柄。そんなタイミングだからこそ、今回の物語により強く共感したという。
「貴雄さんは、お父さんの背中を見てきたからこそ、屋台を継ごうと思えたんだと思います。私も情に弱いところがあって、恩があると何かで返したくなるんですよね」
続けて、「仕事をする意味」についても思いを巡らせる。
「今は『楽にお金を稼ぎたい』という人もいる時代だと思うんですけど、どういう思いで仕事をするのかという部分にすごく惹かれました。気持ち一つで頑張っているところに熱いものを感じるんです」
●父の背中を追って美容学校に進学も…
そして話題は、自身の家族へと及んだ。
「私も一度は美容室を継ごうと思って勉強したんです。でもその時は、自分が本当にやりたいことのほうが勝ってしまった」
美容師である父の背中を見て育ち、高校卒業後は美容学校へ進学。しかし、芸能界への思いを捨てきれず、途中で退学した。
「高校卒業の時点で進路が決まっていなかったのが私だけだったんですよ。芸能界に入りたいという夢はあったんですけど、とりあえず手に職をつけた方がいいって、家族にも言われていて。一旦、美容学校に行かせてもらったんですけど、やっぱり本当にやりたいことが違うとキツいなと思ってしまって…」
家業を継ぐ道は選ばなかった。しかし今は、その選択を後悔していないという。
「もちろん今思えば、美容学校は卒業しておいた方が良かったかなと思うこともあります。でも今こうして『ザ・ノンフィクション』のナレーションをやらせていただいていることが、私の中では本当にすごいことなんです」
実家では家族そろって毎週欠かさず番組を見ていた。
「まさか自分がナレーションを担当できるなんて思っていませんでした。だから結果的に、家業を継がなくても良かったのかなって思えているんです。もちろん、家業を継がなかった私も、何かしらの形で家族に恩返ししたいという気持ちはずっとあります」
そんな野呂だからこそ、家族の支えを描いた今回の物語に強く感情移入したという。
「一番心に残ったのは、やっぱり支える側の家族ですね」
そう語る野呂自身も、現在は夫と支え合いながら多忙な日々を送っている。
「うちも共働きですし、夫に支えてもらっている部分も大きいんです。実家も商売をしていましたし、お父さんが困難なことに直面した時に、お母さんが一生懸命支えている姿も見てきました。だから商売人の家族の話というのは、すごく共感できるところがあるんです」

盛況のラーメン屋台 (C)フジテレビ
○常連客が集う「大人の社交場」に感じた懐かしさ
野呂は、母方の祖父母も喫茶店を営んでいた。
「その喫茶店が本当に大好きだったんです。レンガ造りの素敵なお店だったんですけど、私が高校生の頃に立ち退きで閉店してしまって…」
店内は決して広くなかった。2人掛けのテーブルが2つとカウンターだけ。しかし、そこには野呂にとって忘れられない景色があった。
「おじいちゃんが作るメロンソーダが大好きでした。今思えばシロップをソーダで割っていただけなんですけど(笑)、なぜかすごくおいしく感じて。トーストも本当においしかったんです」
祖父が厨房に立ち、祖母が接客を担当する。母や伯母も交代で店を手伝っていた。
「おじいちゃんが病気になった時も、家族みんなでローテーションを組んで毎日お見舞いに行っていました。だから今回のご家族を見ていても、『いい家族だな』と思いながら見ていたんです」
そんな幼少期の記憶は、今回の屋台ラーメンの物語と重なった。屋台には常連客が集い、ラーメンを食べながら他愛のない話を交わす。ある客は、屋台を「大人の社交場」と表現していた。ドラマでスナックのママを演じている野呂だが、その空気感はどこか懐かしいものだったという。
「私も小さい頃からお店を手伝っていたので、大人たちのくだらない話を聞いて育ったんです。競馬で負けた話とか、お店のテレビでお相撲を見ながら、みんなで盛り上がったり…。そういう人が集まる場所の空気感みたいなものは、なんとなく体に染み付いていますね」
だからこそ、店主である貴雄さんの人柄にも魅力を感じた。
「人が好きじゃないと接客業って楽しくできないと思うんです。貴雄さんは本当に表情も豊かで、お話も面白いし、人懐っこい。でも、軽口を叩いているようで、余計なことは一切言っていない。だからみんなが集まってくるんだろうなと思いました」
そして、その姿からは、屋台の先代の面影も…。
「生前、お孫さんと一緒に屋台に立っていた時の先代の笑顔が本当に素敵で…。きっと、先代もそこにいるだけでみんなが安心できるような方だったんだろうなって。そう思うと、この家族の今につながっているものが全部見えてくる気がするんです」
思わず笑顔を見せながら、こう付け加えた。
「あと、ラーメンが本当においしそうで(笑)。ナレーションしながら食べたくて仕方なかったです」
●毎日1袋は欠かせない…“心の拠り所”の食べ物

今回の番組では、屋台ラーメンが人々の心を支える存在として描かれている。では、野呂自身にとって、疲れた時にホッとできる“心の拠り所”のような食べ物はあるのだろうか。返ってきた答えは意外なものだった。
「最近、『よっちゃん いか』にハマりすぎちゃってるんです(笑)」
もともと子どもの頃から好きだったというが、再び夢中になるきっかけは、『銀河の一票』の撮影現場だった。
「撮影の序盤で、コンビニに駄菓子がいっぱい置いてあることに気付いて。その時に『よっちゃん いか』を見つけたんです」
なかでも心を奪われたのは、普段あまり見かけない白いパッケージの“大きいサイズ”だった。
「見つけた瞬間のときめきがすごかったんですよ(笑)。『これは!?』と思って食べたら、もう完全にハマっちゃって」
今では毎日1袋は欠かせない存在になった。
「ドラマの撮影が終わって帰る時に食べたり、舞台の稽古場で食べたり。『今日も無事に終わったんだな』ってホッとするんです」
屋台のラーメンを求めて人々が赤ちょうちんの下へ集うように、野呂にとっての「よっちゃん いか」もまた、慌ただしい日々の中で心を整えてくれる存在なのかもしれない。
○「物語に貢献したいという気持ちのほうが強いんです」
ドラマ、映画、バラエティ、そして舞台と活躍の場を広げ続けている野呂。この日も、新橋演舞場で現在上演中の舞台「熱海五郎一座 新橋演舞場シリーズ第12弾 東京喜劇『仁義なきストライク〜弾かれた栄光と約束のテンフレーム〜』」を終えたその足で、ナレーション収録に臨んでいた。
「舞台をやっているおかげで声の強弱は出やすかったと思います。舞台って時間が決まっているので、この時間に全力を出し切ろうって気持ちになれるんですよね」
近年は俳優としての評価も高まり、出演した是枝裕和監督作品『箱の中の羊』は、カンヌ国際映画祭にも出品された。
「海外の映画祭は、役者をやっている人ならみんな憧れる場所だと思います。私ももちろんそういう気持ちはあります。ただ、役の大きさに関係なく、物語に貢献したいという気持ちのほうが強いんです。そういう積み重ねの先に、もしチャンスがあったらうれしいですよね」
今回のナレーションも、スタッフから高い評価を受けていたが、その理由について自身なりの分析を語った。
「今回のご家族って、自分の育った環境と重なる部分がすごく多かったんです。だから自然と物語に入っていきやすかったのかもしれません。もちろん、自分と全然違う人を演じたいという気持ちもあります。でも偶然にも自分と重なる役やマッチするお仕事に出会えた時は、表現の幅がより広がることもあるんだと感じました」
最後に改めて、視聴者へメッセージを送った。
「最近、親子に関する悲しいニュースを目にすることも多いじゃないですか。でも今回の『ザ・ノンフィクション』は、本当に温かいんです。何も悲しいことがなくて、ただ愛情があって、支え合っていて。日曜日にこの物語を見た方は、きっとホッとして、また次の日から頑張ろうって思えるんじゃないかなって。愛情が詰まった、本当に素敵な物語でした」

●野呂佳代1983年10月28日生まれ、東京都出身。2006年に「第二期AKB48追加メンバーオーディション」に合格し、AKB48とSDN48のメンバーとして活躍した。12年にグループを卒業。バラエティ番組等への出演で人気を博すとともに、舞台、映画、ドラマへの出演を重ね、女優として高い評価を得ている。近年の主な出演作に映画『ハッピーメール』『怪物』『退屈なエンドロール』、ドラマ『ザ・トラベルナース』『ブラッシュアップライフ』『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』『アンメット ある脳外科医の日記』『ホットスポット』、大河ドラマ『光る君へ』など。現在放送中のドラマ『銀河の一票』にレギュラー出演中。

渡邊玲子 映画配給会社、新聞社、WEB編集部勤務を経て、フリーランスの編集・ライターとして活動中。国内外で活躍する俳優・映画監督・クリエイターのインタビュー記事やレビュー、コラムを中心に、WEB、雑誌、劇場パンフレットなどで執筆するほか、書家として、映画タイトルや商品ロゴの筆文字デザインを手掛けている。イベントMC、ラジオ出演なども。 この著者の記事一覧はこちら
タレント・俳優の野呂佳代が、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00〜 ※関東ローカル)のナレーション収録に臨んだ。担当したのは、8日に放送される「父と息子の屋台ラーメン〜令和の赤ちょうちん物語〜」。父の遺志を継ぎ、屋台ラーメンを守ろうと奮闘する一家の姿を追った作品だ。
実は野呂自身も、美容室を営む実家に生まれ、母方の祖父母は喫茶店を経営していた“商売人一家”の出身。一度は美容師を目指して専門学校に通いながらも、自らの夢を追って芸能界へ進んだ過去を持つ。家業を継がなかったからこそ感じる家族への思い、そして現在放送中のドラマ『銀河の一票』(カンテレ・フジテレビ系)や、俳優活動を通じて見えてきたこととは…。

○「自分の選択は正しかったのか」自問する日々
埼玉・大宮の繁華街の片隅に夜になるとともる赤ちょうちん。今どき珍しい屋台ラーメンだ。飲み会帰りの人々が締めの一杯を楽しみに訪れる店はいつも盛況となっている。
店を切り盛りするのは、貴雄さん(40)。かつてはタクシー運転手をしていたが、1年前、父の死をきっかけに仕事を辞め、父が守ってきた屋台ラーメンを受け継いだ。47年にわたり上野駅や東京駅で屋台を引き続けた父は“伝説の職人”と呼ばれた存在。その父が言った最期の言葉が「屋台ラーメンを継がないか」。息子が父の味を受け継ごうと心に決めた瞬間だった。
しかし、現実は甘くない。営業は深夜に及び、帰宅は朝4時近く。妻と3人の子どもの5人家族の生活は余裕があるとは言えず、家族と過ごす時間も限られる。「自分の選択は正しかったのか」と自問する日々…それでも家族は「屋台が好きだから」と背中を押してくれる。今では、祖父の味に憧れる長男も店を手伝ってくれている。
高校受験を控える長男は、屋台を手伝う合間に常連客に勉強を教えてもらいながら、自分の夢をかなえようとしている。そして父・貴雄さんもまた、屋台の灯りをこの先どうつないでいくのか思いを巡らせていた…。

○「気持ち一つで頑張っているところに熱いものを感じるんです」
ナレーション収録を終えた野呂は、まず一家の温かな関係性に強く惹かれたという。
「本当に素敵な家族でした。お子さんたちもすごく素直で、みんな家族が大好きなんだなっていうのが伝わってきて。どうやって育てたらそうなるのかなと思うぐらい、愛情にあふれたご家族でした」
タクシー運転手から屋台ラーメン店主へ――。決して簡単ではない転身だったはずだ。それでも貴雄さんが決断できた背景には、家族の存在があったと野呂は感じている。
「好きなことを仕事にしたいという気持ちも、もちろんあったと思います。でも何より、ご家族が応援してくれたからこそできた転職だったんじゃないかと思うんです。応援することも家族の愛情表現の一つ。どんな状況になっても支え合える関係性が、本当に素敵だなと思いました」
番組の大きなテーマの一つが、“受け継ぐ”ことだ。現在放送中のドラマ『銀河の一票』でも、野呂が演じる月岡あかりは恩ある人物からスナックを受け継ぐ役柄。そんなタイミングだからこそ、今回の物語により強く共感したという。
「貴雄さんは、お父さんの背中を見てきたからこそ、屋台を継ごうと思えたんだと思います。私も情に弱いところがあって、恩があると何かで返したくなるんですよね」
続けて、「仕事をする意味」についても思いを巡らせる。
「今は『楽にお金を稼ぎたい』という人もいる時代だと思うんですけど、どういう思いで仕事をするのかという部分にすごく惹かれました。気持ち一つで頑張っているところに熱いものを感じるんです」
●父の背中を追って美容学校に進学も…
そして話題は、自身の家族へと及んだ。
「私も一度は美容室を継ごうと思って勉強したんです。でもその時は、自分が本当にやりたいことのほうが勝ってしまった」
美容師である父の背中を見て育ち、高校卒業後は美容学校へ進学。しかし、芸能界への思いを捨てきれず、途中で退学した。
「高校卒業の時点で進路が決まっていなかったのが私だけだったんですよ。芸能界に入りたいという夢はあったんですけど、とりあえず手に職をつけた方がいいって、家族にも言われていて。一旦、美容学校に行かせてもらったんですけど、やっぱり本当にやりたいことが違うとキツいなと思ってしまって…」
家業を継ぐ道は選ばなかった。しかし今は、その選択を後悔していないという。
「もちろん今思えば、美容学校は卒業しておいた方が良かったかなと思うこともあります。でも今こうして『ザ・ノンフィクション』のナレーションをやらせていただいていることが、私の中では本当にすごいことなんです」
実家では家族そろって毎週欠かさず番組を見ていた。
「まさか自分がナレーションを担当できるなんて思っていませんでした。だから結果的に、家業を継がなくても良かったのかなって思えているんです。もちろん、家業を継がなかった私も、何かしらの形で家族に恩返ししたいという気持ちはずっとあります」
そんな野呂だからこそ、家族の支えを描いた今回の物語に強く感情移入したという。
「一番心に残ったのは、やっぱり支える側の家族ですね」
そう語る野呂自身も、現在は夫と支え合いながら多忙な日々を送っている。
「うちも共働きですし、夫に支えてもらっている部分も大きいんです。実家も商売をしていましたし、お父さんが困難なことに直面した時に、お母さんが一生懸命支えている姿も見てきました。だから商売人の家族の話というのは、すごく共感できるところがあるんです」

○常連客が集う「大人の社交場」に感じた懐かしさ
野呂は、母方の祖父母も喫茶店を営んでいた。
「その喫茶店が本当に大好きだったんです。レンガ造りの素敵なお店だったんですけど、私が高校生の頃に立ち退きで閉店してしまって…」
店内は決して広くなかった。2人掛けのテーブルが2つとカウンターだけ。しかし、そこには野呂にとって忘れられない景色があった。
「おじいちゃんが作るメロンソーダが大好きでした。今思えばシロップをソーダで割っていただけなんですけど(笑)、なぜかすごくおいしく感じて。トーストも本当においしかったんです」
祖父が厨房に立ち、祖母が接客を担当する。母や伯母も交代で店を手伝っていた。
「おじいちゃんが病気になった時も、家族みんなでローテーションを組んで毎日お見舞いに行っていました。だから今回のご家族を見ていても、『いい家族だな』と思いながら見ていたんです」
そんな幼少期の記憶は、今回の屋台ラーメンの物語と重なった。屋台には常連客が集い、ラーメンを食べながら他愛のない話を交わす。ある客は、屋台を「大人の社交場」と表現していた。ドラマでスナックのママを演じている野呂だが、その空気感はどこか懐かしいものだったという。
「私も小さい頃からお店を手伝っていたので、大人たちのくだらない話を聞いて育ったんです。競馬で負けた話とか、お店のテレビでお相撲を見ながら、みんなで盛り上がったり…。そういう人が集まる場所の空気感みたいなものは、なんとなく体に染み付いていますね」
だからこそ、店主である貴雄さんの人柄にも魅力を感じた。
「人が好きじゃないと接客業って楽しくできないと思うんです。貴雄さんは本当に表情も豊かで、お話も面白いし、人懐っこい。でも、軽口を叩いているようで、余計なことは一切言っていない。だからみんなが集まってくるんだろうなと思いました」
そして、その姿からは、屋台の先代の面影も…。
「生前、お孫さんと一緒に屋台に立っていた時の先代の笑顔が本当に素敵で…。きっと、先代もそこにいるだけでみんなが安心できるような方だったんだろうなって。そう思うと、この家族の今につながっているものが全部見えてくる気がするんです」
思わず笑顔を見せながら、こう付け加えた。
「あと、ラーメンが本当においしそうで(笑)。ナレーションしながら食べたくて仕方なかったです」
●毎日1袋は欠かせない…“心の拠り所”の食べ物

今回の番組では、屋台ラーメンが人々の心を支える存在として描かれている。では、野呂自身にとって、疲れた時にホッとできる“心の拠り所”のような食べ物はあるのだろうか。返ってきた答えは意外なものだった。
「最近、『よっちゃん いか』にハマりすぎちゃってるんです(笑)」
もともと子どもの頃から好きだったというが、再び夢中になるきっかけは、『銀河の一票』の撮影現場だった。
「撮影の序盤で、コンビニに駄菓子がいっぱい置いてあることに気付いて。その時に『よっちゃん いか』を見つけたんです」
なかでも心を奪われたのは、普段あまり見かけない白いパッケージの“大きいサイズ”だった。
「見つけた瞬間のときめきがすごかったんですよ(笑)。『これは!?』と思って食べたら、もう完全にハマっちゃって」
今では毎日1袋は欠かせない存在になった。
「ドラマの撮影が終わって帰る時に食べたり、舞台の稽古場で食べたり。『今日も無事に終わったんだな』ってホッとするんです」
屋台のラーメンを求めて人々が赤ちょうちんの下へ集うように、野呂にとっての「よっちゃん いか」もまた、慌ただしい日々の中で心を整えてくれる存在なのかもしれない。
○「物語に貢献したいという気持ちのほうが強いんです」
ドラマ、映画、バラエティ、そして舞台と活躍の場を広げ続けている野呂。この日も、新橋演舞場で現在上演中の舞台「熱海五郎一座 新橋演舞場シリーズ第12弾 東京喜劇『仁義なきストライク〜弾かれた栄光と約束のテンフレーム〜』」を終えたその足で、ナレーション収録に臨んでいた。
「舞台をやっているおかげで声の強弱は出やすかったと思います。舞台って時間が決まっているので、この時間に全力を出し切ろうって気持ちになれるんですよね」
近年は俳優としての評価も高まり、出演した是枝裕和監督作品『箱の中の羊』は、カンヌ国際映画祭にも出品された。
「海外の映画祭は、役者をやっている人ならみんな憧れる場所だと思います。私ももちろんそういう気持ちはあります。ただ、役の大きさに関係なく、物語に貢献したいという気持ちのほうが強いんです。そういう積み重ねの先に、もしチャンスがあったらうれしいですよね」
今回のナレーションも、スタッフから高い評価を受けていたが、その理由について自身なりの分析を語った。
「今回のご家族って、自分の育った環境と重なる部分がすごく多かったんです。だから自然と物語に入っていきやすかったのかもしれません。もちろん、自分と全然違う人を演じたいという気持ちもあります。でも偶然にも自分と重なる役やマッチするお仕事に出会えた時は、表現の幅がより広がることもあるんだと感じました」
最後に改めて、視聴者へメッセージを送った。
「最近、親子に関する悲しいニュースを目にすることも多いじゃないですか。でも今回の『ザ・ノンフィクション』は、本当に温かいんです。何も悲しいことがなくて、ただ愛情があって、支え合っていて。日曜日にこの物語を見た方は、きっとホッとして、また次の日から頑張ろうって思えるんじゃないかなって。愛情が詰まった、本当に素敵な物語でした」

●野呂佳代1983年10月28日生まれ、東京都出身。2006年に「第二期AKB48追加メンバーオーディション」に合格し、AKB48とSDN48のメンバーとして活躍した。12年にグループを卒業。バラエティ番組等への出演で人気を博すとともに、舞台、映画、ドラマへの出演を重ね、女優として高い評価を得ている。近年の主な出演作に映画『ハッピーメール』『怪物』『退屈なエンドロール』、ドラマ『ザ・トラベルナース』『ブラッシュアップライフ』『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』『アンメット ある脳外科医の日記』『ホットスポット』、大河ドラマ『光る君へ』など。現在放送中のドラマ『銀河の一票』にレギュラー出演中。

