戸郷翔征が初めて直面した出口の見えないスランプ「あの時、菅野さんはこういう気持ちだったのかな」
[THE GIANTS 2026]
「すぐに良くなる楽な方法があればいいけど、プロ野球ってそんなに簡単じゃない。だからこそ楽しい」と、戸郷翔征(26)は言う。
初めて直面した出口の見えないスランプは試行錯誤の連続だったが、5月19日のヤクルト戦で今季初勝利。トンネルを抜けたエースは、もがき、思い悩む日々から目を背けず、前向きな思考を貫くと決めている。
昨季から続く不調を引きずり、今季は開幕二軍スタート。ジャイアンツ球場で懸命に取り組んだフォーム改善のチェックポイントは、右腕の角度、両脚の使い方、ロスの少ない体重移動など、多岐にわたった。一進一退のもどかしさもあったはずだが、そんなそぶりは一切見せず、「毎日、色々なことをやりながら正解を探っている」「いいものを追い求めていくのが僕らの使命」と強調してきた。
グラウンド外の「雑音」にも戸郷流で向き合った。8勝9敗、防御率4・14と低迷した昨季以来、期待の大きさゆえか、インターネットやSNSで自身の投球などに対する批判的な声を見聞きすることが増えた。
心温まる激励も多い一方、結果への批判や、中にはいわれのない誹謗(ひぼう)中傷もある。それでも、「その人たちが『今日は戸郷が投げるから勝ってくれるだろう』と思って試合を見てくれている裏返し。うれしいし、(批判的なコメントを見て)落ち込むことは全くない」。心ない声も、再起への発奮材料に変えていた。
活路を切り開く道しるべは、入団時から慕った菅野智之(36)(米ロッキーズ)の背中だった。2023年に不調で4勝に沈んだ先輩は当時、ネガティブな感情や苦悩を周囲には見せず、黙々とフォーム改良に取り組み、24年に15勝と復活。どん底でも向上心を失わず、さらに前進しようとする姿勢から多くを学んだ。
「あの時、菅野さんはこういう気持ちだったのかな」。雌伏の時を、不屈の精神で乗り越えた前エースのように。回り道でも、いばらの道でも、己が信じた道を突き進む。(緒方裕明)
