【日本株】AI相場で勝つカギは、「粗利」で探す本物の成長株 メニコンなど参考銘柄14選も

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足元の株式市場では、AI半導体関連を中心に「高付加価値製品」を持つ企業への注目が高まっています。単純に売上高が伸びている企業だけでなく、「高い利益率を維持しながら成長できる企業」が評価されやすい局面となっています。こうした場面で注目されるのが、売上高から原価を差し引いた売上総利益(通称:粗利)です。そこで今回は、売上総利益(通称:粗利)に着目した投資戦略を紹介します。

なぜ今、「粗利」に注目するのか

売上高や営業利益から見る企業成長とその「限界」

企業の成長を測る指標として、一般には売り上げや利益の伸びが注目されます。売り上げが伸びるということは、企業の商品やサービスに対する需要が拡大しており、業界の経営環境が良好であることを示します。また、利益については、本業の収益力を示す営業利益の伸びが注目されます。営業利益は、売上高から原価だけでなく、人件費や広告宣伝費なども差し引いた利益であり、企業が本業でどれだけ効率良く稼げているかを示すためです。

もちろん、これらの伸びは企業の成長を見る上でとても重要です。ただ、売上高は値引き販売や低採算案件の積み上げでも増加することがあります。そのため、「売上が伸びている=収益力が高まっている」とは限らないという見方もあります。

また営業利益についても、人件費や広告宣伝費など販管費を削減するリストラによって増やすことが可能です。こうしたコスト削減による収益改善は企業価値向上につながる重要な要因ですが、「需要拡大による成長」とはやや性質が異なります。つまり、営業利益の増加だけでは、企業の商品やサービスそのものの競争力が強まっているのかを判断しにくい面もあります。

企業の「本業の強さ」を測るカギとなる粗利の重要性

そこで注目されるのが、売上高から原価を差し引いた粗利です。粗利は企業の価格決定力や付加価値の高さを反映しやすく、企業の「本業の強さ」をより直接的に捉えやすい指標とされています。例えば、同じ売上高100億円でも、原価が80億円かかる企業と、原価が50億円で済む企業では、後者の方が高い利益を生み出せます。つまり、「どれだけ高い付加価値を付けて商品やサービスを販売できているか」が粗利には表れやすいのです。

特に近年のAI半導体関連では、この違いが顕著です。例えば、高性能GPUやAI向けメモリーなど、需要が強く供給が限られている製品では、企業側が価格を引き上げやすくなります。その結果、売上高が増えるだけでなく、1つ売った際に得られる利益も大きくなり、粗利率が改善しやすくなります。

一方で、単純な売上成長だけでは、値引き販売によって数量を増やしているケースも含まれます。例えば、家電量販店で大幅値引きをして売上高を伸ばしても、利益率が低下していれば企業の競争力が高まっているとは言えません。このように、「売上がどれだけ伸びたか」だけでなく、「どれだけ効率良く利益を生み出せているか」を確認するうえで、粗利は重要な指標となります。特に、高付加価値製品を持つ企業が評価されやすい足元の相場環境では、粗利の伸びや粗利率の改善が、企業の競争力を見極める重要なポイントとなっています。

粗利成長と粗利率改善で本業の強さを見抜く

実際の投資戦略は図表1のイメージです。いつでも、その時点で入手可能な情報を用いて設定可能な戦略ですが、ここでは例として2026年6月時点のケースを示しています。

【図表1】2026年6月時点で行う「粗利が伸びて、粗利率が改善、来期に向けて増収と増益のモメンタムが加速する銘柄」の判断のイメージ 出所:マネックス証券作成

図表1には①から④の4つの条件が設定されています。これらを順に確認していきましょう。

①では、直近で公表されている四半期決算の情報を使います。3月期決算企業のケースでは、6月時点で2026年1月―3月期の四半期売上総利益(粗利)が開示されています。この四半期粗利が前年同期比でプラスとなっているかを確認します。これは、足元で企業の商品やサービスに対する需要が拡大し、本業の収益力が改善している可能性を確認するためです。

なお、四半期業績を用いた分析では、企業活動の季節性を考慮する必要があります。例えば、小売業では年末商戦、空調関連では夏場など、特定の時期に売上や利益が偏る業種も少なくありません。そのため、前の四半期との比較ではなく、前年同期比で比較することが重要となります。前年の同じ時期と比較することで、季節要因の影響を抑えながら、企業の実質的な成長を確認しやすくなるためです。

②では、2026年3月期の売上高売上総利益率(粗利率)が、過去3年平均を上回っているかを確認します。つまり、過去と比べて粗利率が改善しているかを見るものです。粗利率の改善を確認するのは、単純に売上が伸びている企業ではなく、高い付加価値を維持しながら成長している企業を選別するためです。例えば、値引き販売によって売上高を伸ばしている企業では、売上は増えても粗利率が低下しやすくなります。一方、粗利率が過去平均より改善している場合は、価格決定力の向上や高付加価値製品の販売拡大など、製品競争力の強化が背景にある可能性があります。

そして、③と④の条件では、一般に企業成長を捉える際に用いられる代表的な尺度である、売上高の伸び率(通称:増収率)と営業利益の伸び率(通称:営業増益率)を使います。これらの指標は、アナリスト予想ベースで将来のデータを取得できる点が特徴であり、足元の業績だけでなく、今後の成長期待も確認できるという長所があります。

③では、アナリストコンセンサス予想ベースで、2028年3月期(来期)の売上高伸び率が、2027年3月期(今期)の伸び率を上回っているかを比較します。これは、売上成長のモメンタムが来期に向けて加速すると市場で期待されているかを確認するためです。

最後に④では、営業利益についても同様に、2028年3月期(来期)の増益率が、2027年3月期(今期)の増益率を上回っているかを確認します。利益成長の勢いが今後さらに強まると期待される企業を選別する狙いがあります。

つまり、足元の本業の強さや収益性改善については、①と②の粗利関連指標を使って確認します。一方、将来の成長期待については、③と④の増収率と増益率を使って確認します。ただし、①と②の条件によって既に足元の業績環境が良好な企業に絞り込んでいるため、③と④では単純に高い増収率や増益率を求めるのではなく、「来期に向けてさらに伸び率が拡大していくか」という成長モメンタムの加速に着目している点がポイントです。

投資パフォーマンス結果は?

実際に、これらの4条件を満たす銘柄を抽出し、その投資パフォーマンスを検証しました。

分析対象となる母集団は、TOPIX(東証株価指数)構成銘柄としています。なお、粗利や粗利率、営業利益の算出が業態特性上なじみにくい金融業は除外しました。検証方法としては、毎月末時点で取得可能な情報を用いて4つの条件を共に満たす銘柄を選定し、それらに均等投資を行い、翌月以降のリターンを積み上げました。

【図表2】粗利が伸びて、粗利率が改善、来期に向けて増収と増益のモメンタムが加速する銘柄群の累積株価パフォーマンス 注1:データ期間は2018年1月から2026年5月(但し、2026年5月は5月25日まで)、データサイクルは月次
注2:母数はTOPIX構成銘柄(但し、金融業として「銀行業」「証券、商品先物取引業」「保険業」「その他金融業」に該当する銘柄は除く)
注3: 四半期実績決算で売上総利益が前年同期比プラスとなり、実績本決算の売上高売上総利益率(粗利率)が過去3期平均を上回る銘柄のうち、来期の予想営業利益伸び率が今期を上回り、かつ来期の予想売上高伸び率も今期を上回る銘柄を選別した。いずれも各月末時点で入手可能な情報を用
注4: 毎月末時点で注3の条件を満たす銘柄群を対象とした。絶対リターンは、各銘柄の配当込み収益率(月次)を単純平均し、累積したものである。超過リターンは、母数に該当する全銘柄の平均リターンを控除した月次リターンを累積したものである
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成

結果を示したのが図表2の青線グラフです。青線は累積リターンを表しており、グラフが長期的に右肩上がりで推移していることから、時間の経過とともに収益が積み上がってきたことが分かります。

さらに、図表2の赤線グラフでは、選定銘柄群のリターンから、母集団全体(金融業を除くTOPIX構成銘柄)の平均リターンを差し引いた「超過リターン」の累積を示しています。こちらも中長期的に右肩上がりで推移しており、本戦略が市場全体を継続的に上回る成果を上げてきたことが確認できます。

このように、足元の粗利成長率や粗利率改善は、企業の本業の強さや価格決定力の改善を捉える指標といえます。また、来期に向けた増収率・増益率の加速は、市場が期待する将来の成長モメンタムを反映している可能性があります。これらを組み合わせることで、「足元の収益力改善」と「将来の成長期待」の両面から、有望銘柄を選別できる可能性が示されたと考えられます。

スクリーニングによる参考銘柄14選、ダイキン工業(6367)やメニコン(7780)など

そこで、マネックス証券のウェブサイトで提供している「銘柄スカウター」の10年スクリーニング機能を利用して、4つの条件を満たす銘柄を抽出しました。

さらに、単純に足元の粗利改善銘柄を選ぶだけではなく、今期時点で一定以上の成長率を持つ企業に限定したうえで、来期に向けて増収率・増益率のモメンタムが加速すると期待される銘柄に絞り込みました。具体的には、今期の増収率が3%以上、営業増益率が5%以上そして来期増益率が10%以上という条件を設け、一定の成長力を持つ企業群の中から、さらに来期に向けて成長期待が高まる銘柄群に絞りました。

対象は、金融業(「銀行業」「証券・商品先物取引業」「保険業」「その他金融業」)を除く企業とし、流動性を考慮して東証プライム市場に上場する時価総額1,000億円以上の企業に限定しています。

具体的な条件は以下の通りです。

①[四半期] 売上総利益(粗利)の前年同期比がプラス
②[通期] 売上高売上総利益率(粗利率)が過去3年平均を上回る
③[来期コンセンサス] 増収率が[今期コンセンサス]増収率を上回る(但し、今期増収率が3%以上)
④[来期コンセンサス] 営業利益増益率が[今期コンセンサス]営業利益増益率を上回る(但し、今期営業増益率が5%以上、来期営業増益率が10%以上)

結果を図表3に示しました。②~④2つの条件については図表2の右から3列に示されるようにExcel上で判定処理をしています。さらに、①[四半期] 売上総利益(粗利)の前年同期比が高い順に並べ替えています。投資の参考にしてみてください。

【図表3】スクリーニング結果 (Excel出力での表示変換、①[四半期] 売上総利益(粗利)の前年同期比が高い順に並べ替えている) [基礎条件]
市場:東証プライム、業種:水産・農林・鉱業・建設・食料品など、時価総額:1,000億円~
[詳細条件]
[四半期]売上総利益前年同期比(その他):0.0%~、[通期]粗利率(3/5/10年)(その他):指定なし、[通期]粗利率(その他):0.0%~、[今期コンセンサス]増収率(売上高):3.0%~・3人以上、[来期コンセンサス]増収率(売上高):3.0%~・3人以上、[今期コンセンサス]増益率(営業利益):5.0%~・3人以上、[来期コンセンサス]増益率(営業利益):10.0%~・3人以上
さらに② [通期] 売上高売上総利益率(粗利率)が過去3年平均を上回る
③[来期コンセンサス] 増収率が[今期コンセンサス]増収率を上回る
④[来期コンセンサス] 営業利益増益率が[今期コンセンサス]営業利益増益率を上回る、の3つの判定をExcelで算出して、①[四半期] 売上総利益(粗利)の前年同期比が高い順に並べ替えている
出所:マネックス証券ウェブサイト マネックス銘柄スカウター(2026年5月26日時点)を用いてマネックス証券作成

具体的な銘柄スクリーニング方法を解説

ここからは補足的な説明です。読者の皆さんが、ご自身のタイミングや最新データで図表3のスクリーニングを行いたい場合の具体的なスクリーニング入力項目を示しました(図表4)。

【図表4】スクリーニングの条件設定画面(銘柄スカウター) 出所:マネックス証券ウェブサイト 銘柄スカウター(ログイン後 ― 投資情報 ―ツール― マネックス銘柄スカウター ― 10年スクリーニング、2026年5月26日時点)

上記の条件でスクリーニングボタンを押下すると、図表5のような銘柄一覧が画面に出力されます。

さらに② [通期] 売上高売上総利益率(粗利率)が過去3年平均を上回る、③[来期コンセンサス] 増収率が[今期コンセンサス]増収率を上回る、④[来期コンセンサス] 営業利益増益率が[今期コンセンサス]営業利益増益率を上回る、の3つの条件を満たすかの絞り込む必要があります。そこで右上の「CSVダウンロード(図表5の〇印)」から銘柄リストを取得して、Excelで処理します。

ここで注意点があります。後に、Excel処理のために行う「csvダウンロード」は200銘柄までの制限があります。そこで対象銘柄数が200銘柄以内であることを確認します。仮に、200銘柄を超えていたら、1,000億円で設定している時価総額の最低基準を少し増やして、対象銘柄を200銘柄までに抑えるようにしてください。

【図表5】スクリーニング表示結果(銘柄スカウター) 出所:マネックス証券ウェブサイト 銘柄スカウター(ログイン後 ― 投資情報 ―ツール― マネックス銘柄スカウター ― 10年スクリーニング、2026年5月26時点)

図表6は図表5でダウンロードして取得したcsvファイルをExcelで開いた画面です。まず、「② [通期] 売上高売上総利益率(粗利率)が過去3年平均を上回る」の条件を判別するため、N列に「I列>H列」という数式を入力します。” >”は「より大きい」という意味です。条件をクリア行のN列のセルは“TRUE”と表示されます。

次に、「③[来期コンセンサス] 増収率が[今期コンセンサス]増収率を上回る」の条件を判別するため、O列に「K列>J列」という数式を入力します。

次に、「④[来期コンセンサス] 営業利益増益率が[今期コンセンサス]営業利益増益率を上回る」の条件を判別するため、P列に「M列>L列」という数式を入力します。

そして、「①[四半期] 売上総利益(粗利)の前年同期比」が高い順に並べ替えますと、図表3の銘柄リストになります。

【図表6】Excel画面サンプル 出所:マネックス証券ウェブサイト 銘柄スカウターの結果を使ってマネックス証券作成

吉野 貴晶 マネックス証券 チーフ・マーケット・アナリスト 兼 マネックス・ユニバーシティ 投資工学研究学長