先進運転支援システム「ADAS」にメス 煩わしさ低減へ ユーロNCAP、欧州で安全試験を見直し
完全オフにするドライバーも
欧州の自動車安全評価機関であるユーロNCAPは、2020年代末までにひとりひとりのドライバーに合わせて調整できる新しい安全機能の導入を目指している。これにより先進運転支援システム(ADAS)に対する理解を高めるという。
2019年、欧州連合は一般安全規則2(GSR2)を導入した。これにより、2022年以降に発売されるすべての新型車および2024年以降に登録されるすべての車両へのADAS搭載が義務付けられた。インテリジェント・スピード・アシスタンス(ISA)、緊急車線維持支援(ELK)、自動緊急ブレーキ(AEB)などの装着が必須となっている。

スマート#1を運転するAUTOCAR UK編集部記者(英国で撮影) AUTOCAR
しかし、ドライバーによるこれらのシステムへの評価はまちまちだ。自動車リスク分析会社サッチャム・リサーチが委託した調査によると、英国のドライバーの82%が、ADASが搭載されていると安心感が増すと回答。その一方で、4分の1近くがADASを、気が散る、煩わしい、あるいは過干渉だと感じており、その結果、一部のドライバーは機能を完全にオフにしている(車両の始動のたびにこの操作が必要であるにもかかわらず)という。
こうした懐疑的な見方に対応するため、ADASで次に求められるのは、各ドライバーに合わせて細かく調整できる能力だ。ユーロNCAPのADAS技術マネージャー、アドリアーノ・パラオ氏は、現在のシステムは過度に干渉していて不信感を招く恐れがあると説明した。
パラオ氏は、「ユーロNCAPはただADASをより良くしたいだけです。わたしはその実現を使命としています。これは根本的な転換点であり、メーカー各社にこのアプローチを取るよう促したい」と述べた。
さらなる知能化が必要
ユーロNSAPは新型車の衝突試験や安全評価を行うだけでなく、業界と連携して新しい安全技術の開発にも取り組んでいる。パラオ氏によると、ADAS変革の鍵となるのは「ドライバーの状態を理解する」能力だという。
「これが重要です。ドライバーの状態を理解できるようになれば、ADASをより良いものにできます」

フィアット600eのADAS設定画面 AUTOCAR
例として、パラオ氏は車線維持支援システムを挙げた。カメラで路面標示を確認し、必要に応じてステアリング操作を行うことで、車両の位置を車線中央に保とうとするものだ。
「人間が車両を適切にコントロールしている時、車線維持支援はまったく役に立たないと考えています。自分の進路を修正されたくないのです。優れたドライバーモニタリングシステムなら、ドライバーが注意を払っているかどうかを把握し、必要な時だけADASが介入するようになるでしょう」
パラオ氏はまた、ドライバーの注意散漫の度合いを区別しないドライバーモニタリングシステムについても批判した。「システムが自分を見下していると感じさせる」可能性があるという。
「ドライバーには、ラジオを消したり車内温度を調整したりといった、正当な理由で注意が散漫になる場合があります。こうした行為に対してシステムが警告を出すべきではないのです」
シートベルト最適化、カメラ増設
ユーロNCAPは、乗員拘束装置のスマート化も推進している。パラオ氏の説明によると、乗員の体格や形状を検知するセンサーにより、拘束装置のロードリミッターが最適な介入を行えるようになるという。また、乗員に応じてエアバッグの膨張範囲や展開を制御し、その衝撃がより害の少ない形で分散されるようにする。
車内には、シートベルトの誤使用を検知するためのカメラも設置される。
「例えば、シートベルトが不快だと感じる一部のドライバーは、偽のバックルを使って警報システムを回避していますが、カメラがこれを検知し、音声による警告を発します」
「カメラを使用すれば、乗員がダッシュボードに足を乗せているかどうかも検知できますし、エアバッグとの距離も把握できます」
ハンズフリー運転の安全性
半自動運転技術は今後10年でより広く普及すると予想されているが、すでに展開を進めている企業もある。
先月、オランダ車両局(RDW)はテスラに対し、オプションの「監視型フル・セルフ・ドライビング(FSD)」をオランダの公道で運用することを認可した。FSDは数年前に米国で導入された半自動運転システムで、ドライバーは道路から目を離さない限り、運転を車両に任せることができる。

フォードの「ブルークルーズ」で走行するAUTOCAR UK編集部記者(英国で撮影) AUTOCAR
他の自動車メーカーも同様のシステムを展開しているが、その機能はより限定的だ。例えばフォードの「ブルークルーズ(BlueCruise)」は、テスラのFSDと同様の半自動運転機能を備えるが、指定された「ブルーゾーン」(主に高速道路)内でのみ使用可能だ。
メルセデス・ベンツのレベル3「ドライブ・パイロット」システム(SクラスおよびEQSセダンのオプション)は、ドイツ、米国カリフォルニア州、同ネバダ州の特定の道路でのみ使用可能であり、交通量の多い状況下で、時速40マイル(約64km/h)以下、かつ天候が良好で路面標示が確認できる場合に限られる。
パラオ氏はFSDを批判しなかったが、特にテスラが欧州の安全プログラムに参加していない点を踏まえ、その実装方法について疑問を呈した。
「FSD(のドライバーモニタリングシステム)において、ドライバーが『道路に目を向けている』とはどういう状態なのでしょうか? ハンドルに取り付けたスマートフォンで映画を見ていても、道路を見ているとシステムを欺くことができます。それが良いことか悪いことか判断するには、まだ情報が不十分です」
「テスラのFSDシステムを使用中に事故を起こした場合、責任を負うのはドライバー自身であることを忘れてはいけません」
ADASの公道テストを開始
ドライバーの間で安全技術に対する懐疑的な見方が広がる中、ユーロNCAPは現在のADAS機能の信頼性と精度を検証するため、初めて公道での車両テスト「公道走行評価プログラム」を実施する。
今年から、同機関がテストするすべての車両には、速度制限を正確に監視し、車両がそれにどう反応するかを記録するためのセンサー一式が装備される。少なくとも3つの欧州諸国で合計約1900km走行し、すべての反応が記録される。

メルセデス・ベンツGLB with EQテクノロジー
パラオ氏は、「ユーロNCAPは長年にわたりADASに取り組んできましたが、今後はテストコースだけでなく、実際の道路環境でも確実に機能することを確認したい」と述べた。
「例えば、(車線維持支援機能は)煩わしく、過度に干渉的ではないか。速度制限情報の精度はどうか。誤ったブレーキ作動はなかったか、などです。これは、エンドユーザーの体験がどのようなものかを明らかにしようとする初めての取り組みです」
