亀田興毅”ボクシング興行”中止と”内部分裂”の裏に「謎の投資ビジネス」…「興行に参加したら配当が増える」と言われた”被害者が告発”

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興行が2ヵ月連続で「中止」という異常事態

亀田興毅氏がファウンダー(創業者・統括)を務めるボクシングイベント「SAIKOULUSH」をめぐり、異例の事態が続いている。ちなみに「SAIKOULUSH」とは、2024年8月に亀田氏がプロデュースする「3150FIGHT」と、株式会社LUSHが運営するプロボクシングイベント「LUSHBOMU(ラッシュボム)」が合体・名称変更して誕生したイベントだ。

中央アジア・キルギスで予定されていたこの興行が、4月・5月と2ヵ月連続で延期・中止に追い込まれたのだ。これは単なる地方興行の話ではない。中止となったカードの中には、世界的なボクシング認定団体であるWBAのタイトルマッチまで含まれていた。通常であれば、関係各所との調整を経て慎重に組まれるはずのタイトル戦が、開催直前になって消える。ボクシング界でも、そう頻繁に起きることではない。

5月のキルギス興行中止を受け、亀田氏は選手や関係者に謝罪したうえで、6月6日の愛知大会について、次のように語っている。

「今この場で『間違いなく開催します』と言い切れない現状が、ファウンダーとして非常に心苦しいです。現状は決して楽観視できる状況ではございませんが、残された時間の中で迅速に協議を進め、愛知大会の開催可否を含めた今後の方針につきまして、改めて皆様に発表させていただきます」

そして5月22日の夜、亀田側と提携関係を結んでいた株式会社LUSHは声明文を出す。「弊社はボクシング興行の運営事業から退く」と発表したのだ。そして、6月6日に開催予定の「SAIKOULUSH」愛知大会が、ABEMAで配信される見込みだとも一部メディアで報じられた。

亀田興毅は藤田晋会長のもとを離れていた

ファウンダー自らが「間違いなく開催する」と言い切れないーー興行を控えたプロモーションとしては、かなり深刻な発言である。

関係者によれば、「亀田氏は現在、資金繰りに追われる日々を送っている」という。そのなかで、頼みの綱として名前が挙がっていたのが、インターネットテレビ局「ABEMA」を運営するサイバーエージェントの藤田晋会長(53歳)だった。

亀田氏にとって藤田氏は、2022年にプロモーターとして本格的に事業を始めた頃から、自らが手がける興行の多くをABEMAで放送してもらった「恩人」ともいえる存在である。開催日まで時間がなく、資金難が表面化するなかで、亀田氏にとって頼れる数少ない支援者だったとみられている。

しかし、今回ばかりは簡単ではない事情があるという。ボクシング界の事情に詳しい人物が、こう明かす。

「サイバーエージェントの藤田氏は、亀田興毅氏の興行をこれまで支援し続けてきました。ところが今年に入って、亀田氏側から関係を断ち切られたのではないかと聞いています。藤田氏に頼らず、YouTubeなどを使った独自配信に方針転換したようです。このときには亀田氏とLUSHは手を組んでいました。藤田氏からすれば、“飼い犬に手を噛まれた”ような形でしょう。22日の夜までは、そんな状態で藤田氏が資金を出すとは思えませんでした」

いったい何が起きているのか。

ここで、これまでの経緯を振り返っておく必要がある。

亀田氏は「ボクサーファースト」を掲げ、選手の待遇改善を訴えてきた。自らのプロモーションを通じて、旧態依然としたボクシング界を「SAIKOU」、すなわち「再興」し、「最高」の舞台に変えていくと宣言したのである。

LUSH社と亀田興毅の「蜜月関係」

その姿勢に共感する声は、決して少なくなかった。日本のボクシング界には、一部の有力ジムが大きな影響力を持つ構造に不満を抱く選手やファンもいる。現役時代からヒールのイメージをまとってきた亀田氏だからこそ、既存の秩序に風穴を開ける存在として期待する向きもあった。

サイバーエージェントの藤田会長も、そうした亀田氏のベンチャー精神を評価し、応援していた一人だったとされる。

だが、2024年に、亀田氏に大きな転機が訪れる。

芸能事務所、飲食店、ライブハウス、ダンス教室などを多角的に展開するLUSH社のA会長との出会いである。

A会長は「投資のプロ」といった肩書きで紹介されることもあり、多額の資産を持つ人物であるかのように周囲へアピールしていたという。そのA会長が、亀田氏のプロモートする興行にメインスポンサーとして入り込んでいった。亀田氏はA会長に連れられてプライベートジェットでキルギス共和国を訪問することもあった。A会長を心から富豪と信じていたのかもしれない。

関係者によれば、役割分担はこうだったという。

亀田氏側は、選手のマッチメークや交渉、興行の表舞台を担当する。一方でLUSH社側は、選手のファイトマネー、渡航費、会場費など、資金面をカバーする。つまり、今回の一連の資金不足については、亀田氏個人の落ち度というよりも、資金を担うはずだったLUSH社側の問題が大きい、ともとれる。

ただし、だからといって亀田氏に責任がないわけではない。A氏とビジネスパートナーであり、イベント創設者として矢面に立っていた亀田氏は、支払い遅延や資金繰りをめぐる不安の声を、聞いていても不思議ではないからだ。それにもかかわらず、4月・5月と2ヵ月連続で興行が中止となり、さらに6月の愛知大会までも開催が危ぶまれる事態となっている。プロモーターとして、亀田氏が負うべき説明責任は重いだろう。

LUSH社がボクシング興行を行うワケ

一部報道では、JBCが亀田氏のライセンス取り消しを検討しているとも報じられている。事態は単なる興行トラブルの域を超えつつある。では、なぜLUSH社は資金不足が指摘されながら、ボクシング興行を続けようとしていたのか。

筆者が複数の事情を知る人物に取材を重ねると、そこには別の“目的”が見え隠れしてきた。

前回の記事でも触れた通り、LUSH社はボクシングジムだけでなく、ラーメン店、たこ焼き店、ダンス教室、芸能事業、ライブハウス運営など、幅広い事業を手がけているとされる。しかしある事情通は、こう話す。

「A会長の本当の目的は、投資で金を集めることにあったのではないかと思います。ボクシング興行は、事業規模を大きく見せるための“看板”だったのではないでしょうか。実際、LUSHの関連会社が経営するラーメン店やたこ焼き店は、そこまで大きな利益を出しているようには見えません。芸能事業部も同じです」

さらに、その人物はこう続ける。

「今回、ボクシング興行の社長として名前が出た女性アーティストのMについて、『テレビ番組に出演し、有名お笑い芸人と共演するなど活躍している子だ』と説明する人もいます。しかし、その番組のスポンサーはLUSHの関連会社です。つまり、自社で番組の枠を買い、そこに出演しているだけとも見える。A会長がLUSHの関連会社を通して販売しているコインも、自社発行のもので、一般に広く流通している暗号資産とは性質が違うのではないかと思います」

多岐にわたるA会長の「資金集め」

A会長の資金集めは、実に多岐にわたっている。

たとえば、いわゆる「GACKTコイン」で知られる会社の株式への出資。金の価格に連動するとされる暗号通貨への出資。キルギスでのリゾート開発への出資。さらには、キルギス共和国で「重力発電」と呼ばれる新しい発電所を建設するという計画を掲げ、そこに資金を募ることもあったという。

一見すれば、荒唐無稽にも聞こえる話である。だが、A会長がキルギスの大統領と通じているのは事実だ。現地メディアでは、重力発電についてA氏が大統領に説明している様子も報じられていた。そうした映像や記事を見せられ、「国家レベルの事業なのだ」と信じた出資者も少なくなかったという。

取材を進めるなかで、筆者は出資者の一人から話を聞くことができた。

「出資者の多くは高齢者です。暗号通貨や重力発電の話を聞いても、仕組みを本当に理解できている人は少ないと思います。A会長は、最初に顔が広そうな人を選び、その人を儲けさせるのです。出資者は『儲かる』という部分さえ理解できれば、難しい暗号通貨の仕組みや発電所計画の中身には、あまり目が向かなくなるのです」

説明会は全国各地で行われ、出資者は数千人にのぼるともいわれる。1人あたりの出資額は、50万円から1000万円程度。総額がどれほどに達するのかは、現時点では不明である。

前回の記事でも触れたように、たとえ外国の取引所で扱われる暗号資産であっても、日本国内で投資を募る場合には、金融庁への登録が必要となるケースがある。しかし、A会長の関連会社については、金融庁への登録は確認できていない。そのため、資金の集め方によっては「金融商品取引法」などに抵触する可能性も否定できない。

さらに問題は、それだけではない。

前回報じた通り、キルギス側のライセンスはすでに撤回されているとされる。加えて、重力発電についても、電力インフラに関わる重要な国家的計画であるはずにもかかわらず、キルギス共和国で公式に進んでいることを示す情報は、筆者の調査では確認できなかった。

A氏に質問状を送ったところ……

仮に、こうした計画の実態が存在しないまま資金を集めていたとすれば、単なる無登録営業にとどまらず、より重い問題に発展する可能性すらある。

さらに前出の出資者は、こう憤る。

「『ボクシングの興行に参加すると配当が増える』と言われ、ボクシングに興味はないのに試合会場へ行く出資者がたくさんいました。ボクシングを知らない人たちが集まる会場は、かなり異様な光景でした。A会長が約束した配当は、もう2年ほど止まっています。返金を求めても受け付けてもらえません。次々と新しいコインや会社が生まれ、出資金の付け替えが行われる。高齢の出資者たちは、そのたびに変更手続きに追われていくのです。結局、『返金は待ってくれ』と言われ続けている状態です」

ボクシング興行は、スポーツイベントだったのか。それとも、投資ビジネスの信用を演出するための舞台装置だったのか。そう疑わざるを得ない証言だ。

その疑問は、取材を進めるほどに大きくなっていく。

筆者は、A会長が関わる一連の投資ビジネスについて、本人側に詳細な質問を送っている。しかし、現時点で回答はない。

そして、6月6日に予定されている「SAIKOULUSH」愛知大会である。冒頭で触れた通り、この興行はABEMAで配信される見込みだ。

「サイバー側が、LUSH社との関係断絶を興行配信の条件として提示した可能性も考えられます」(関係者)

もちろん、現時点でLUSH社やA会長になんらかの法的責任があると確定したわけではない。だが、資金難、興行中止、未払い疑惑、投資ビジネス、暗号資産、キルギスでの発電計画--いくつもの問題が複雑に絡み合っており、説明責任は生じるだろう。そして、まだ亀田側とLUSH社が完全に関係を断絶したとも言い切れない。

6月6日の試合は、単なる一興行の開催にとどまらない。亀田興毅氏のプロモーター生命、LUSH社の実態、そして出資者たちの資金の行方をめぐる問題が、一気に表面化する可能性をはらんでいる。

ボクシング界の「再興」を掲げたはずのプロジェクトは、いまや別の意味で、業界全体を揺るがす火種になりつつある。

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