記事のポイント
2026年のメットガラはシャネルが存在感を示し、ブランド間の主導権争いが鮮明になった。
イーベイの活用やヴィンテージ素材の起用が広がり、リユース志向がハイファッションにも浸透している。
テック富豪の関与や抗議活動により、経済格差や労働問題といった政治的緊張がイベント全体に影を落とした。


メットガラ(Met Gala)は「ファッション業界最大の夜」と称されることが多いが、2026年は注目すべき欠席者も少なくなかった。常連だったゼンデイヤやベラ・ハディッド、そして過去に出席していたニューヨーク市長といった顔ぶれが、2026年はそろってこのイベントへの参加を見送った。

それでも多くの主要ブランドとセレブリティが顔をそろえた。ドラマ「ヒーテッド・ライバルリー(Heated Rivalry)」のスターであるハドソン・ウィリアムズ、シェール、アン・ハサウェイ、シアラ、ラッセル・ウィルソンなどがそうだ。

SNS分析企業のダッシュ・ソーシャル(Dash Social)がGlossyに提供したデータによれば、イベント開催前のソーシャルメディアでの話題性は大幅に高まり、過去4週間で53億回のインプレッションを記録したという。

その夜から見えた5つの大きなポイントを、以下にまとめる。

シャネルがレッドカーペットを支配



メットガラのレッドカーペットは、一流デザイナーの衣装であふれかえった。

クリス・ジェンナーがイタリアの高級ブランドのドルチェ&ガッバーナ(Dolce&Gabbana)を、アン・ハサウェイがマイケル・コース(Michael Kors)を、トロイ・シヴァンがプラダ(Prada)をまとった。

ダッシュ・ソーシャルによれば、この夜にもっともエンゲージメントを稼いだのはディオール(Dior)で、その数は1800万を超えた。次いで、ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)やヴァレンティノ(Valentino)などが続いた。

しかし、この夜にもっとも存在感を示したのはシャネル(Chanel)だった。ホストを務めたニコール・キッドマンやアナ・ウィンター、ゲストのマーゴット・ロビー、グレイシー・エイブラムス、リリー=ローズ・デップ、Blackpinkのジェニーなど、多くの著名人がそろってシャネルを着用した。

これは、シャネルのクリエイティブディレクションを担うマチュー・ブレイジーへの高い評価を示している。

ブレイジー氏は2025年4月にクリエイティブディレクターに就任し、シャネルはまたたく間にハイファッション業界でもっとも渇望されるブランドのひとつとなった。

素材調達のイーベイ起用が示すリユースの浸透



複数のデザイナーやゲストが、レッドカーペットでのインタビューでイーベイ(ebay)に言及した。

イーベイは2024年からメットガラの公式スポンサーであり、多くのデザイナーが自身のカスタムデザインの素材を調達するためにイーベイを活用した。

ファッションブランド、パブリック・スクール(Public School)のデザイナーであるマックスウェル・オズボーンとダオ=イー・チョウは、自分たちが手がけたコルセット風衣装や、パトリック・シュワルツェネッガーが着用したスーツの素材調達にイーベイを使った。

SZAも、エミリー・ボードがイーベイ調達の素材でデザインしたアップサイクルドレスを着用。モデルのパロマ・エルセサーは、デザイナーのフランチェスコ・リッソがイーベイで調達した100着のヴィンテージドレスの端切れを切り貼りして組み直した一着を身につけた。

イーベイ以外にも、ヴィンテージやアーカイブのアイテムを身にまとったゲストがいた。たとえばブレイク・ライブリーは、2006年のヴィンテージドレスをベースに追加の生地で装飾したイタリアの高級ブランドのヴェルサーチェ(Versace)の衣装を披露した。

イーベイのようなスポンサーの継続的な存在、そしてヴィンテージやアーカイブ作品の起用は、ハイファッションが中古市場との距離を縮めていることを示すサインだといえるだろう。

ザラやギャップが切り開くマスファッションの台頭



シャネルのようなハイファッションブランドに注目が集まる一方で、より手ごろな大衆向けブランドの存在感も目を引いた。

ザック・ポーゼンが手がけるギャップ・スタジオ(Gapstudio)は、ケンダル・ジェンナーに、ギャップ(Gap)の白いTシャツを切り刻んで縫い合わせたドレスを着せた。ポーゼン氏はこれまでにも、ダヴィーン・ジョイ・ランドルフなど、メットガラの出席者のためにカスタムのギャップ・スタジオを手がけてきた経歴がある。

スペインのファストファッションブランドのザラ(Zara)も、メットガラに初めて登場した。シンガーのスティーヴィー・ニックスが、ジョン・ガリアーノがデザインしたザラのカスタムブルードレスを着用したのだ。

ガリアーノ氏は2026年後半に、ザラとのコレクション全体も手がける予定だ。ただし、ニックスが着た一着はそのコレクションには含まれないという。

テック・ビリオネアによるファッションの侵食



2026年はジェフ・ベゾス氏がイベントのスポンサーとなり、名誉議長を務めた。これに対し、ベゾス氏のビリオネアとしての立場やトランプ政権との関係をめぐっては、抗議や批判が相次いだ。

とはいえ、その夜に来場したテック・ビリオネアはベゾス氏だけではなかった。マーク・ザッカーバーグ氏も本イベントに初登場した。

もっとも、インスタグラムのヘッドであるアダム・モセリ氏など、メタ(Meta)の従業員はこれまでにも出席してきている。さらに、Googleの共同創業者であるセルゲイ・ブリン氏も会場に姿を見せた。

ファッションへのテック業界の侵食は、最近公開された『プラダを着た悪魔2(The Devil Wears Prada 2)』のなかで皮肉たっぷりに描かれている。

同作では、世間知らずのテック・オリガルヒが悪役として登場し、彼女の機嫌を取るために由緒あるファッション機関を支配下に置こうとしてその根幹を脅かす、というストーリーが描かれた。

イベントに重くのしかかった政治的緊張



ベゾス氏の関与に対する批判、そして拡大する経済的不平等への一般的な怒りは、当夜のイベントのさまざまな場面で感じられた。

その表れには、繊細なものもあった。ニューヨーク市長のゾフラン・マムダニ氏は本イベントに出席せず、代わりに5月頭、ファッション業界を支えるガーメント・ワーカー(縫製労働者)たちにスポットを当てたフォト・シリーズを公開した。

注目すべきは、このシリーズで取り上げられた労働者のうち2人が元Amazon従業員であり、現在、Amazonに対し、配達ドライバーを業務委託ではなく直接雇用にすることを義務づける法の成立を求めて活動している点だ。

俳優のサラ・ポールソンが、目を覆う目隠しとして1ドル札を身につけたのも、富や金銭の魅惑によって視界が奪われていることを暗喩した、もうひとつのさりげない批評だったと思われる。

一方で、もっと直接的な反応を示すゲストもいた。シェールはレッドカーペットでベゾス氏の関与をどう思うかと問われ、「私は彼のファンではない」と率直に答えた。

出席者の外にも、はるかに大きな抵抗の動きがあった。アクティビスト集団「エブリワン・ヘイツ・イーロン(Everyone Hates Elon)」は5月2日、メトロポリタン美術館の館内のあちこちに偽の尿のボトルを仕掛けたと発表した。

これは、Amazonの生産性要求のために従業員がボトルに排尿せざるを得ない状況に追い込まれていることへの批評である。

ベゾス氏への反発は、イベントの内側にも入り込んできた。当日の夜のある時点で、抗議者が一般客の侵入を防ぐためのバリケードを突破した。

米紙ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)の報道によれば、抗議者は速やかに身柄を確保され排除されたものの、その後もレッドカーペットには明らかに張りつめた空気が残った。

[原文:Chanel domination and anti-Bezos backlash: 5 takeaways from the Met Gala red carpet]

Danny Parisi(翻訳、編集:藏西隆介)