Image: Raymond Wong / Gizmodo US

撮影される人の「同意」がどこか行っちゃってない?

今年初めにスウェーデンの新聞社であるSvenska Dagbladet(スヴェンスカ・ダーグブラーデット)とGöteborgs-Posten(ヨーテボリ・ポステン)が発表した共同調査の結果によって、ケニアの外部委託業者が、Meta(メタ)のRay-Banスマートグラスで撮影されたトイレを使う様子や着替え、性行為などのプライバシーに関わる瞬間を捉えた映像を閲覧させられていたことが明らかになりました。

それは「解決」なの?

4月にMetaは、外部委託業者が不快な映像を見せられる機会を減らしました。でも、新たな保護措置や、不適切な映像が撮影されるのを減らすための安全機能を導入したわけではありません。なんと、外務委託業者との契約を打ち切るという必殺技を繰り出したんです。なんだそれ。

The Guardian(ガーディアン)の報道によると、この契約解消が引き金になって、ケニアのSamaという企業に雇用されていた1,000人以上の従業員が解雇されたそうです。

つまり、何も解決されなかったというわけです。それでも、少なくともMetaは今後この件を耳にしなくなることでしょう。

見たくもないものを見せられる過酷な業務

念のために振り返っておくと、Samaの従業員は、主にデータアノテーション(AIに学習させるための画像や映像へのラベル付け)を担当していました。

Metaのスマートグラスの利用者が撮影した映像をひたすら確認し、AIが物をより正確に識別できるようにラベルを付ける業務です。画面上の細部に神経を尖らせ続ける必要のある、とにかく地味で消耗の激しい作業です。

そんな業務をさらに過酷にしていたのが、彼らの目の前に流れてくる映像の中身。スウェーデンでの調査では、トイレを使用している人、着替え中の人、ポルノを見る人、性行為をしている人などを見せられていた事例が確認されています。

外務委託業者を非難するMeta

The Guardianによると、Metaは今回の事態について、外部委託業者であるSamaの責任だと主張しているそうです。Metaの言い分は以下の通り。

写真や動画は、ユーザーにとってプライベートなものです。製品のパフォーマンス向上のためにAI生成コンテンツを人間が確認していますが、その際にはユーザーから明確な同意を得ています。また、Samaは当社の基準を満たしていないため、業務提携の解消を決定しました。

えっと、この一件でSamaがどう責任を負うのか、外部委託業者が内部告発を行なったという事実以外は思い当たりません。しかし、機密性の高い映像を収集し、「自社基準を満たさない第三者と共有していた事実」の方がはるかに重大な違反であることは言うまでもありません。

それに、「ユーザーから明確な同意を得ている」と主張していますけど、それは「スマートグラスを装着して撮影している人の同意」であって、画像や動画に映っている人の同意じゃないですよね。性行為の相手は、スマートグラスの進化のために、自分のプライバシーを見知らぬ誰かに見られてもいいと同意しているのでしょうか。そこってものすごく大事な論点じゃないですか。Metaの主張は控えめに言っても筋が通っていません。

最大の代償を払わされたのは労働者

言うまでもなく、この騒動で最も大きな代償を払わされたのはSamaの従業員たちです。The Guardianは、アフリカのテック業界における労働者の権利擁護団体であるOversight Lab(オーバーサイト・ラボ)の情報として、解雇された従業員たちは、解雇の6日前に通知を受けたと報じています。

同団体は、従業員たちが法的手段を検討する支援を行なっているとのことですが、受け取るはずだった収入の代わりにはなりません。

Samaが切られたということは、さらに告発しにくくなった空気のなかで、今日もほかの誰かが世界のどこかで見たくもないものを見せられているわけですよね。しかもその画像や動画は、映っている人にとって見られたくないものかもしれないなんて、何重にもおかしな話だと思います。