「とにかく歩く力を維持する」「サークル活動で役割を見つける」老人ホームで幸せに暮らす人の最大特徴
【前編を読む】「老人ホームで幸せに暮らす人」「孤独の中で老いて死んでいく人」の決定的な差
老人ホームで引きこもりになるワケ
老人ホームに入れば安心と思っていたのに、気づけば部屋に閉じこもりがちになり、どんどん社会から孤立していく人がいる。その入り口になりやすいのが、「歩かなくなること」だ。日本最大級の老人ホーム・介護施設検索サイト「LIFULL 介護」の編集長、小菅秀樹氏が解説する。
「設備が充実している老人ホームは便利な反面、気づいたら自分で何もできなくなる。食事も日用品もフロントに頼めば届けてくれて、外に出なくても生活できてしまう。
だからこそ、大事なのは『歩く力』を維持することなんです。行動範囲は活力に直結するので、意識的に外出することをオススメします。老人ホームに来る前と同じように外に出る。外出が人との接点を生み、生活のリズムをつくっていきます。外出するのが億劫という人は入居の時点で、食堂や大浴場など共用部が近い1階の部屋を選ぶのも一つの手です」
老人ホームで始まる「第二の人生」
一方で、老人ホームに入ってから新しい趣味をはじめ、日に日に生き生きとしてきた人もいる。東京都杉並区の老人ホームに暮らす中川夏美さん(83歳、仮名)だ。入居して5年以上が経つが、言葉通り「第二の人生」を満喫しているという。
「入居するまで歌うことが趣味でしたが、コロナをきっかけにきっぱりやめました。いまは心機一転、ビリヤードや麻雀と、入居してから新しくはじめたことばかりです。
最初は知らない人ばかりで不安でしたが、ここに来てむしろ交友関係が広がった気がします」
中川さんは独身で、近年、残された肉親である2人の弟を相次いで亡くした。自身の体調にそれほど不安はなかったが、1人になったことで将来への漠然とした不安を感じ、住んでいた場所から少し離れた老人ホームへの入居を決めたという。
そんな中川さんが、入居して半年後からずっと力を入れているのが、ビリヤード同好会の運営だ。入居者や施設職員から代表を任され、会員名簿の作成から出欠管理まで一手に担っている。
「代表になってから、否が応でも人と関わるようになりました。メンバーが増えれば、顔と名前を覚えなきゃいけない。面倒といえば面倒ですが、それが毎日の張り合いになっています。他の入居者に参加を呼びかけるチラシをつくるのも、密かな楽しみの一つなんです」(中川さん)
ほかにも、中川さんが心身の健康のために入居後から続けている習慣がある。毎週土曜日は施設を出て近くのレストランで夕食をとり、体調が良い日は近所のスーパーで食材を買って自分で料理することだ。
サークル活動で「役割」を見つける
「老人ホームにいると、どうしても会話の相手が同じ入居者ばかりになってしまいます。話題もだんだん同じ話になってくる。だから意識して外に出るようにしているんです。お店の店員さんでも、道ですれ違う人でも構わない。普段は顔を合わせない人、年の違う人と少しでもいいから言葉を交わすことを心がけています。足腰が動くうちは、できるだけ自分の足で出かけるようにもしています」
現在、中川さんは百人一首にもハマっている。入居するまで一度も遊んだことがなかったが、ノートに書き写して現代語訳と読み方を一気に覚えたという。
「大変でしたけど、やってみたら奥が深くて。上の句を聞いただけで下の句がすっと出てくるようになると、本当に嬉しいんです。年をとっても、新しいことは覚えられる。まだまだ死にたくないですね」(中川さん)
「もう歳だから……」と諦めず、常に新しいことをはじめ、目標を持つことが大切だ。前出の小菅氏が解説する。
「自立型の老人ホームの大半は、サークル活動を推奨しています。一人ではできない運動やゲームも、施設なら仲間が見つかりやすい。入居を機に、思い切って新しいことに挑戦してみるのはとてもいいことだと思います。
それに充実した生活を送っている人は、必ずといっていいほど『役割』を持っています。ただ参加するだけでなく、運営する側にも回ってみてください。年をとると誰かに頼られるという経験が減ってくる。だからこそ、誰かに必要とされている、自分が動かないと何かが回らないという感覚が、毎日の活力を生んでくれるはずです」
老人ホームは、人生の終着点ではない。「もう自分には新しいことはできない」という諦めこそ、真っ先に手放すべきなのだ。
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「週刊現代」2026年5月11日号より
