“おつり”を知らなかった小3息子、毎回自販機に置いてきていた…キャッシュレス時代の子どもに増える“お金のつまずき”事例集【FPが助言】
「最近の子は“お金の扱い”が危うい」──そう聞くと、ゲーム課金や“推し”への投げ銭によるトラブルを思い浮かべる人が多いかもしれない。ただ、子どものお金問題に詳しいFPの八木陽子さんが指摘するのは、それよりももっと手前の“超基本”的な部分だ。キャッシュレス決済が普及し、その比率は約6割に。とくに若い世代の保護者の間で当たり前となった結果、幼児〜小学生の世界で「おつりの概念がわからない」「残高(=限界)があることを知らない」といった、令和ならではの“お金のつまずき”が増えているのだ。問題の現状と、家庭では何をすべきなのかを聞いた。
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親もショック! お金をめぐる令和の子どもたちの実情
【case1】おつりの存在を知らない
恵美さん(仮名、以下同)は、小3になった息子が一人でスイミングに行くようになったのを機に、毎回「ジュースを買っていいよ」と200円を渡していた。ところが息子は、毎回きっちり使い切っているのか、釣り銭を返してこない。「いつも200円のジュースを買ってるの?」と尋ねたところ、意外な真相が発覚した。なんと「おつり」の存在を知らず、自販機の釣り銭を取らずにいたという――。

――このケースのように、八木さんがお金教室を実施する中で増えてきたのが、「おつり」という言葉自体を知らない子どもの存在だ。
「ほかにも、おつかいに行ってもらったおつりを、その辺に捨ててきてしまった子どもの話も聞きました。キャッシュレス決済の普及とともに、現金のやりとりを知らない子が増えているのです。子ども向けのお金教室でも、“おつりとは何か”の説明が必要になっています」
【case2】「カードさえ出せば買える」と思い込んでいる
小1になったばかりの女の子が、“はじめてのおつかい”に行くことに。ふだん母親が使っているプリペイドカ―ドを持たされ、コンビニに朝食用のパンを買いに行った。レジでカードをかざすと、いつも母親がしているようにうまくいかない。店員は「ざんだかぶそくみたいですね」と言っているが、意味がわからない。「だってママがこれでパンを買いなさいって…」と主張しても、店員も困ってしまっている。とうとう泣き出したところに、心配した母親が迎えに来た――。
――「親がスマホやカードで“ピッ”と買い物をしているところしか見たことがない子どもにとって、スマホやカードはなんでも好きなだけ買える“打ち出の小づち”のような存在なのです」
とくに子どもにとって、キャッシュレス決済は、支払いの“しくみ”が目に見えない。現金のように“限りある資産が、支払いによって減っていく感覚”もつかみにくい。これらをどう子どもたちに教えるか、各家庭にとって課題となっている。
【CASE3】「お買い物ごっこ」までキャッシュレス
昔はおもちゃの硬貨や紙幣で遊んでいた「お買い物ごっこ」さえ、キャッシュレス化が進んでいる。4歳の誕生日にお店屋さんになれるレジのおもちゃを買い与えられた女の子は、硬貨や紙幣のおもちゃには目もくれず、カードを“ピッ”とする遊びを楽しんでいる。
――「カードを“ピッ”とするのは、子どもたちにとってあこがれの動作のようです。おままごとの世界でも、圧倒的にキャッシュレス決済が人気ですね。硬貨や紙幣のおもちゃが不人気になってしまったことで、遊びの中で身につけていたはずの、“硬貨の種類”“手持ちの範囲で買う”といった感覚が、育ちにくくなっている可能性があります」
FPがアドバイス:お金の「超基本」をカラダで覚えさせる
「子どもに対する投資教育が盛んになっていますが、いきなり投資を教える前に、基本的な生活スキルとして、お金のやりくりを身に付けさせる必要があります。キャッシュレス時代だからこそ、各家庭で意識して教えてあげましょう」
【対策1】あえて「現金を使う」練習をする
お金教育用のドリルなどもあるが、八木さんのおすすめは、少額でいいので現金を持たせて買い物をさせることだ。「使ったら減る」「足りなければ買えない」といったお金のやりくりを、身をもって理解できるし、想定外の事態などが起きて、トラブルへの対応力も身に付く。
例えば「300円までで好きなおやつを買っていいよ」などと、上限を決めて買い物をさせる。決済方法の多様化でレジの仕組みも複雑になっているので、しばらくは保護者が付き添い、おつりを受け取って財布に入れるところまでをセットで練習したい。あわせて消費税の存在についても教えておく。
「単発の買い物やおつかいに慣れたら、毎月のおこづかいを現金で渡し、決められた金額でやりくりすることを覚えさせましょう」
【対策2】キャッシュレスの仕組みを説明する
カードやスマホ決済は便利だが、子どもには「無限に買える魔法の道具」に見えてしまう。プリペイドカードなら「ここに入っている残高分しか使えない」、クレジットカードなら「使っていいのは、カードに書かれた名前の人だけ。使った分は、後日銀行に預けたお金から引き落とされ、預金が減る」といったことを、家庭内で何度も言葉にして確認する。
【対策3】家庭内ルールを決める
「お金は親が働いて稼いだもの。勝手に持ち出して使ってはいけない」「1000円以上のものを買うときは親に相談する」といったルールを決め、早めに“当たり前”にしておく。知識だけでなく、生活習慣として身に付けていきたい。
「家庭でのお金教育にあたって親御さんに意識してほしいのは、小さな失敗を学びに変えていくことです。理屈であれこれ教えるのではなく、“お金は使ったら減る”“足りなければ買えない”を体験を通じて覚えさせるのです」
時には「そんなつまらないものにお金を使って」と眉をひそめたくなることもあるが、おこづかいの使いみちについては基本的には見守りの姿勢で。トラブルがあっても叱りつけず、相談にのる。大きな金銭トラブルを防ぐには、親子間でお金について話しやすい雰囲気を作っておくことも大切だ。
※紹介する事例は、プライバシー保護等のため、アレンジを加えている。
八木陽子(やぎ・ようこ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®。キャリアカウンセラー。株式会社イー・カンパニー代表。2001年に独立。全国の小・中・高等学校での金銭教育や、教育費に悩む保護者へのコンサルティングを数多く手がける。著書に『10歳から知っておきたいお金の心得〜大切なのは、稼ぎ方・使い方・考え方』など多数。
取材・文/鷺島鈴香
デイリー新潮編集部
