防衛に成功し、笑顔で手を振る井上尚弥(2日、東京ドームで)=稲垣政則撮影

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 ボクシング・ダブル世界戦(2日・東京ドーム)――スーパーバンタム級4団体統一王者、井上尚弥(大橋)が挑戦者の元バンタム級2団体統一王者の中谷潤人(M・T)を3―0の判定で破った。

 世界ボクシング評議会(WBC)、世界ボクシング機構(WBO)は8度目、世界ボクシング協会(WBA)、国際ボクシング連盟(IBF)は7度目の防衛。4団体統一王座の7度目の防衛に成功し、男子歴代最多記録を更新。世界戦の連勝も28に伸ばし、自身の持つ男子歴代最多記録を塗り替えた。

 井上尚の弟でWBCバンタム級王者の井上拓真(大橋)は、同級4位の井岡一翔(志成)を3―0の判定で制した。WBO元バンタム級王者の武居由樹(大橋)は昨年9月に王座を失って以来となるノンタイトル8回戦に臨み、ワン・デカン(中国)を2―0の判定で破った。

「また燃えるようなファイトしたい」

 判定を聞いた井上尚に安堵(あんど)の表情が浮かんだ。リング上のインタビューで、「戦う前から言っていた『勝ちに徹する』という戦いを実行した」。いつもは涼しい顔で圧勝するモンスターが、勝利だけを追求して難敵・中谷を退けた。

 前半にポイントをリードしたことが大きかった。中谷は身長で8センチ、リーチで3センチ上回る。サウスポーで重心を後ろに置いて構えるため、距離はかなり遠く感じる。それでも井上尚は素早いステップインで左ジャブやワンツーを放ち、手数と攻勢でペースを握る。中盤、中谷が前に出て劣勢になるシーンもあったが、ガードも高く構えて追撃を許さない。11回にはアッパーを当ててダメージを与え、3―0の判定勝ちを収めた。「中谷選手がパウンド・フォー・パウンド(全階級を通じた格付け)にランク入りしている選手だからこそ、この勝ちに価値がある」。ハイレベルな技術戦に勝利し、満足感があふれた。

 米国から「仮想中谷」となる選手を呼び、攻略のイメージを高めてきた。大橋ジムの大橋秀行会長は「悲壮感がない。楽しそうにやっている」と語っていた。大一番を前にしても重圧に屈しない、鋼のようなメンタルを持つところがこのボクサーの強みでもある。

 今後は強豪ジェシー・ロドリゲス(米)とのビッグマッチも期待される。「また皆さんが燃えるようなファイトをしていきたい」。さらなる高みを目指し、井上尚は戦い続ける。(荒井秀一)

 井上尚弥(いのうえ・なおや) 神奈川県出身。33歳。2012年デビュー。14年にWBCライトフライ級王者。同年に就いたWBOスーパーフライ級王座は7度防衛。18年にWBAバンタム級王座を獲得し、3階級制覇。19年にIBF、22年にWBCとWBOの同級王座を獲得し、日本人初の4団体統一王者に。23年7月、WBC、WBOスーパーバンタム級王座を獲得し、4階級制覇。同年12月に史上2人目となる2階級での4団体統一を果たした。33戦全勝(27KO)。

敗者「さすがチャンピオン」

 中谷は前半、防御を重視し井上尚の強打を封じていた。ただ、それではポイントを得られない。8回から攻勢に出た。左右のフックを連打し、王者を追い込んだ。

 しかし10回、不運なバッティングで左目の上を切った。11回には、強打を左目下に受け、棒立ちになった。後半は互角に近い戦いができたが、前半に失ったポイントの挽回は果たせなかった。

 左目下は骨折の疑いもあり、試合後は痛々しい姿だったが、「さすがチャンピオン、ボクシングを作っていくうまさがあった」と、潔く敗戦を受け入れた。

 中学卒業後、単身で渡米して以来、常に向上心を持ち続けて3階級制覇を果たした28歳にとって、初めての挫折。しかし敗北を糧に成長したボクサーは数多い。階級を上げても体の強さが通用することは証明した。さらに強くなってリングに戻ってくるはずだ。(塩見要次郎)