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何かうまくいかないことが起こったとき、「私がこんな性格だから…」と悩んでいませんか。「うまくいかない原因は、その人の性格に起因しないことも多く、性格について理解すれば不要に悩まなくなります」そう語るのはパーソナリティ心理学、発達心理学を専門とする心理学者・小塩真司さんです。今回は小塩さんの著書『人生が生きやすくなる「性格」の話 ─自分を知って幸福になる方法』より一部を抜粋し、「生きやすくなるための性格との付き合い方」をご紹介します。

【書影】パーソナリティ心理学の第一人者による、生きやすくなるための性格との付き合い方!小塩真司『人生が生きやすくなる「性格」の話 ─自分を知って幸福になる方法』

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本当に性格は変えられるのか?

起こっている問題の大半に自分の性格が関係していそうだ、だから自分の性格を変えたい――このように考えたとします。

そこで問題になるのが、人の性格は本当に変えることができるのだろうか、という点です。

性格は遺伝からの影響が4〜5割、環境による影響が5〜6割であり、持って生まれた遺伝要因は変えることができないと考えれば、4〜5割は初期値のようなものになります。

環境によるものが5〜6割ということは、成長過程でそれくらい性格が変わる可能性があることを示しています。「人間の性格は変わる余地がある」といえることになります。
その次の話として、意図的に変えることができるのかどうか、という問題があります。つまり、「努力次第で変えることができるのか」です。

これについては「可能性はある」のですが「思う通りになる」とは断言できません。

自分の能力は生まれつき変わらないのだと思うか、努力次第で変えることができるのだと思うかで、生き方は変わってきます。

人と付き合うのが苦手だという性格を自認していて、そういう性格は変わらないものだと思っていると「これが自分」と納得するほかありませんが、変わる可能性があると思えれば、少しずつでもそれに向けて行動しようという気概が生まれてきます。

時間をかければ性格は変えられる

性格は、体重と同じように時間をかければ変わることがあります。性格の要因を「統制可能」なものだと考えることもできるということです。

年齢を経るにしたがって性格が変化していくという研究結果も報告されています。これもイメージとしては、体重と似たようなものと考えればいいでしょう。ただし、これも個人としてどうかという話と、全体として見るとどうかというのでは話が違ってきます。

一般的に年をとると徐々に基礎代謝が落ちてきて、体重が増えていく傾向があります。全体としてはそうでありながら、個人それぞれを見ていくと年をとっても体重がまったく変わらない人も、減少する人もいます。

太るのが嫌な人はダイエットしたり、運動したりするのですが、生活を少しぐらい変化させても体重はそれほど変わりません。生活全体を大きく変えて、食事の量も減らすし、継続的な運動も毎日するとすれば、体質を変えて体重を大きく落とすことも可能です。実は性格も同じように考えることができます。

性格と体重

では性格と体重、どちらが変動しやすいかということを考えてみましょう。なかなか難しいところなのですが、性格のほうが変動しやすいともいえるのではないでしょうか。

ただし、何をもって「変動しやすい」と考えるのかも簡単な問題ではありません。一つには、標準偏差について考えることができます。

標準偏差というのは、データが平均からどれくらい散らばっているのかを表す、統計的な指標です。学力偏差値をイメージするとわかりやすいでしょうか。偏差値50は平均を表し、偏差値60は平均から10ポイント高い値ですが、これは標準偏差で一つ分、平均から高いことを意味します。

そして、体重と性格とを比較すると、標準偏差において一つ分くらいの変化は、性格のほうが起きやすいのではないかと思います。

体重で標準偏差一つ分は男性で約11キログラム、女性で約7キログラムです。体重がこれだけ上下するのはけっこう大きな変化だと思いますが、それに比べれば、性格の得点が標準偏差一つ分変化するというのは簡単そうではないかという印象があります。体重を引き合いに出して考えてみると、性格はけっこう変えられるものなのだなというイメージになると思います。

例えば、外向性について100点満点で評価するときに、平均点が50点で、標準偏差が10点で一つ分とすると、10点ぐらいはまあ変動する可能性があるのではないか、ということです。

性格はアンケートに答えて調べるものなので、少しの期間で変動する人はいます。もちろん、誰もが変わることができるというわけではありませんし、何もしていないのに変わるというわけでもありません。しかし、変化する可能性があるということはいえるでしょう。

レベル感を見定める

ただし、いきなり明日から性格を変えることができるのかというと、そう簡単ではありません。

これはスポーツと同じです。「明日からこうしよう」と考えても、次の日からいきなりホームランが打てるようにはなりません。ホームランを打つためには、技術や筋力アップなどさまざまな要因が必要だからです。

けれども、体力的、技術的な課題をクリアするための小さなステップを毎日超えていけば、いつかホームランを打つ自分に変えていくことは可能です。

そこで考えるべきなのは「自分が求めるレベルはどこなのか」という点です。

例えば、人とのコミュケーションが苦手な人が、いきなり大勢の人が所属する組織のリーダーになることを目指すでしょうか。そうではなく、何人かの人と楽しくおしゃべりができればいいというレベルなら、変わるのはそれほど難しくないはずです。

「性格がよくなくて悩む」といっても、「悩みはどんなもので、いったいどこを目指して悩んでいるのか」については考えてみる必要があるでしょう。

「外向性」もそうです。活発で社交的な性格に変わりたいとしたならば、起業家としてさまざまな人たちと協業して事業を大きく伸ばしていきたい、そのために人脈を広げていきたい人と、仕事の日々の業務をスムーズに進められるようになりたい人、飲み会の席で臆せず誰とでも楽しく会話できるようになりたい人とでは、まったく目指すべきレベルが違います。

社交的な性格になりたい人に「**(起業家)のような人になりたいのですか?」と訊くと、「いえいえ、そこまででなくていいんです」と、後者のレベル感をイメージする人は少なくありません。

低いハードルを設定するのであれば、毎日の行動を少しずつ変えていくことで達成できそうです。そうすれば、性格を変えることはそれほど難しくないといえるでしょう。

行動を変える

「明るくなりたい」とか「社交的になりたい」、そういう性格に変えたいと願う人は実に多いのですが、そのための方法はいくつかあります。

「明るくなりたい」「社交的になりたい」というのは行動で表現できる性格ですから、そのためには行動を変えればいいことになります。


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声を大きくするとか、笑顔を練習することで実現できます。それができるようになっていくと、他者から明るい人だとか、社交的な人だと思われることは十分可能です。

笑顔で挨拶しようとか、そのあと何か二言三言、言葉を交わそうと決めて習慣化していく。そのように習慣化していくと、「こういう自分もいるのだな」と自己認識もだんだん変わっていきます。

性格とは行動様式や価値観、態度などすべてをひっくるめた概念ですから、行動のパターンが変わってそれが習慣化すれば、性格も変わっていくといえます。

例えば、海外留学すると性格が変わるのは、習慣の変更を強いられるからです。アメリカに留学して、社交的であること、人前で自分の意見をいうことを強いられていると、そういう習慣ができて行動が変わります。結果、性格が変わることがありえます。

通常の行動の状態が、行動を変えることによって少しずつ変化しているのです。

これも体重の話と似ています。

体重をどうやったら減らせるかというと、何かを「強いられる環境」にいることで可能になります。

例えば、パーソナルジムに行くと、普段の食事とトレーニングについて指導されます。こんな筋トレをしなさい、こんなものを食べて、こんなものは食べないようにしなさいといわれてその通りやっていると、それが習慣になって数か月もすれば体重が減っていきます。

習慣が変わるきっかけとしては、進学するとか転校する、部活を始めるとか、一人暮らしをする、就職をするなどがあります。結婚したり、子どもが生まれたりしたときも変わるでしょう。つまり、環境が変わると生活が変わるので、習慣も変わり、性格も変わることがあるのです。

無理やり変えようと思うなら環境をガラッと変えることです。もしくは、変わるようなコーチングを受けることです。ただし、やはり生活全体が変わるような変化があったほうがよいでしょう。

普段の行動が変わるからその人が変わる

本を読んで、その人が変わることもあります。

例えば、昔でいえば、寺山修司の『書を捨てよ、町へ出よう』(芳賀書店、1967年)という本がありました。この本が出版された1960年代後半は、高度経済成長期であり学生運動も盛んな時期でした。既存の権威や価値観に対する批判的な意識が高まっていた時代です。そのなかで、知識や理論に閉じこもるのではなく、現実の社会や人々のなかに飛び込めというメッセージが込められていました。

この本は熱狂的な人気を集めます。そしてこの本を読んで自分の生活を広げていくような習慣の変化が起きるのであれば、性格も変わっていく可能性があります。

普段の行動が変わるからその人が変わるのです。映画でも小説でも、観賞したり読んだりして影響を受けて生活が変わっていくのであれば、性格も変わる可能性があるのです。

※本稿は、『人生が生きやすくなる「性格」の話 ─自分を知って幸福になる方法』(清流出版)の一部を再編集したものです。