RKK

写真拡大

「世界初」の装置の全貌

サンマやアジなどに潜む寄生虫「アニサキス」を電気の力で殺す装置が、いよいよ熊本大学で完成しました。

<写真を見る>世界初の「小型アニサキス殺虫装置」ってどんな仕組み?

日本の食卓で親しまれている魚。

これからの時季に楽しめる脂の乗ったサバや、秋の味覚サンマ。「焼き」もさながら、「生」で食すのも一興ですが、そこで懸念されるのが、その身などに潜む寄生虫「アニサキス」です。

人の体に入り込むと、激しい腹痛や吐き気などに襲われ、最悪の場合はアナフィラキシーショックで死亡する恐れもあります。

そんなアニサキスを殺す装置が熊本大学で完成しました。

その名も「小型アニサキス殺虫装置」です。

熊本大学工学部 浪平隆男 准教授(51)「3万ボルトの電圧を魚に印加することで魚の中のアニサキスが不活化される」

「3万ボルト」は街なかの電線にかかる電圧の約4倍です。

そして処理方法は簡単で「魚を置くだけ」です。

置くだけで寄生虫を殺す

浪平隆男 准教授「この電極がゆっくり動くことで、魚を部分ごとに殺虫していく。電極が1往復すると、この空間に置いた魚の中にいるアニサキスは全部"不活化"される」

これほどの電気を流しても、魚は丸焦げにはなりません。

浪平隆男 准教授「100万分の1秒しか3万ボルトを発生させないので、魚の身にダメージはない。しかし魚の中で生きているアニサキスには非常に大きなダメージを与える」

一瞬のうちに大きな力を持つこの電気エネルギーは「パルスパワー」と呼ばれ、9年前から開発を始めた浪平准教授は、2年前に試作品を作りましたが・・・鳴り響くすさまじい電撃音。

100デシベル以上、街なかの杭打ち工事レベルの音が出ていたのです。

それが今回の完成品では、音はほとんど聞こえなくなりました。

魚に電気を流す回数を効率化したことなどで、効果は変わらないまま音は小さくなり、装置のサイズも5分の1ほどになりました。

鮮魚店にとってもアニサキス対策は悩みの種です。

鮮魚店から期待の声

古閑鮮魚 井上輪一さん(50)「大丈夫かな。切り身にしていたらアニサキスが出てくる。その時はきれいに取る。もし客にそれがいくと大変なので気を付けている」

特に脂が乗る秋口のサバは、生食を求める客の要望も少なくありません。

しかし、去年1年間でアニサキスによる食中毒は家庭での調理も含めて全国で283件。生のサバを提供しない店もあり、新たな技術に期待が高まります。

古閑鮮魚 井上輪一さん「除去する機械ができれば鮮魚店などは喜ぶ。おいしいサバが生で提供できる」

開発した技術は、食の安全性はもちろん、味などへの影響もなく、2024年には特許も取得しました。電気を使ってアニサキスを殺す技術は世界で初めてだといいます。

3年後をめどに改良 小型化・安価に

技術自体は完成しましたが、今後は使用を検討する業者から意見を聞くなど最終的な改良をして、3年後をめどにスーパーマーケットや寿司店、市場などに装置を販売する方針です。

熊本大学工学部 浪平隆男 准教授「まだ専門家が使うことを想定した段階。そのため今後、さらに小型化や安価化をしていくことで、誰でも使える装置を開発したい」

実は浪平准教授、この技術を使って豚肉から寄生虫の一種「トキソプラズマ」を殺す実験にも成功しています。

さらに熊本の名産品、馬肉についても、別の寄生虫を殺す実験をし、今はその結果を待っているところです。

馬肉への応用が可能になれば、今は冷凍処理をしないと食べられない馬刺しも再び生で食べられる日がやってくるかもしれません。

熊本大学工学部 浪平隆男 准教授「熊本からのこの技術が日本中に広まるような、熊本からの流れを作るために、熊本市や県と話を進めていて、「チーム熊本」を作ることができれば」

関連グッズ販売で研究費用を

「小型アニサキス殺虫装置」の制作費は現状で1500万円ほどのため、浪平准教授は3年後に600万円程度にすることを目指しています。

その研究費用の一部に充てるため、シールやクリアファイルなどの"アニサキス"グッズを販売しています。

そのキャラクターは熊本大学の教育学部・美術科の学生や教授がデザインしたもので、熊本大学生協のホームページで購入できます。