【インタビュー】百戦錬磨の男たちによるガールズバンドGUMMY、型破りで刺激的な初EP完成「この4人が楽しめてるってことが大事。まだまだ飽きそうにない」

過去のある男たちによる新人ガールズバンド、それがGUMMYである。その正体というか素性について型通りの説明をすることは興ざめなので避けておくが、重要なのは決してこれが彼らの“裏の顔”というわけではなく、ライヴバンドとして歩み始めたばかりの彼らが満を持して発表した初のEP『GIVE ME GUMMY』が呆れるほど刺激的で型破りな作品だということだろう。今回はその完成に際しての4人の肉声をたっぷりとお届けする。
文中、ギタリストの呼称がマッド・デンジャラスになったりaieになったり、各メンバーの主語にも“僕”と“俺”が混在していたりして読みにくい部分もあるかもしれないが、そうした表記のあり方についても彼らの音楽と同様、敢えて事務的な統一や調整はせず、できるだけ“生”に近い状態で、20,000字オーバーのロングインタビューをお届けしようと思う。

◆ ◆ ◆
■最初に僕がaie君を誘ったのが切っ掛け
■aie君の紹介でLotty、その後にGara君が合流して
──マッド・デンジャラスさん、顔色があまり良くないですが。
マッド:安定の二日酔いです(笑)。昨日(4月15日)はニコ生の生放送があって、そもそもはライヴ映像を流しながら副音声的にあれこれ喋るような形にしたかったんですけど、それとは関係なく話がただただ盛り上がっちゃって、90分間まったくライヴ映像を見ずにただただ喋り尽くして終わってしまって。結果的に、乾杯から始まって90分飲み続けるフリートークになっちゃいました(笑)。
Gara:最初はライヴ映像がメインで僕らが喋ってる様子はワイプ扱いだったんですけど、それが逆になりました、途中から(笑)。
──それじゃあ単なる呑み会の生中継じゃないですか!
マッド:そうなんです。しかもそこでスイッチが入ってしまって、生放送が終わった後も朝まで吞んでしまったというわけです(笑)。
──そのスイッチが朝まで切れないのがすごいです。
Lotty:GUMMYはヤバいと思いますよ、飲み過ぎです。
マッド:ブレーキが付いてないからね、この車の場合。止まる時は何かにぶつかるしかないというか(笑)。
──そのようなマッドでデンジャラスな状況から、康太さんはいち早く……
マッド:逃げた(笑)。
康太:昨日はすぐに脱出しました(笑)。みんな僕のことは全然気にせずに楽しんでくれ、というスタンスで。
──支配人という康太さんのポジションとしては、それも重要かもしれません。そして早速ですが、こうして完成に至った作品について皆さんどのように感じているんでしょうか?
Lotty:レコーディング自体は、古いものについてはもう2年ぐらい前、2024年のうちに完了してたんですよ、実は。
マッド:「暇だから録っちゃおうぜ」ということになって。その時点でもうGara君はいたよね? だから一緒にやろうってことになった瞬間にもうレコーディングが始まっていたという感じで。
Lotty:その時点ですでに12曲ぐらい録り終えていて。とりあえず弾(たま)だけ先に作っておいて、それからこの先のツアーに向けてのライヴ活動が始まったんで、ライヴでファンが楽しめる楽曲をメインに詰め込んだのが今回の作品ですね。
──全6曲収録。ミニアルバムというか、EPというか。
マッド:我々の世代からするとミニアルバムなんですけど、最近はどうやらEPと呼ぶらしいじゃないですか。そこについてはしっくりきてないけど、まあいいか、と(笑)。そもそもミニアルバムとEPの違いって何なんですか? 収録時間?
──厳密な違いはないと思いますよ。ただ、ミニアルバムという言葉は日本にしかないと思いますけど。
マッド:なるほど。でもまあ俺らの感覚からするとミニアルバムですよね。
Lotty:違いがよくわからないままリリースに至る、ということで(笑)。

──作品形態の呼び方はどうあれ、ライヴでの即戦力になりそうな曲たちがツアー開幕を前にリリースされる、ということですね? というか、今の話を聞いていて“2年前にはすでにいろいろと始まっていたのか!”と驚かされましたけど。
マッド:やっぱり各バンドにいろいろと都合もあるじゃないですか。それをクリアしていくのに2年かかったというか。
──いわゆる大人の事情というやつですね?
マッド:はい。だけどそれが片付くのを待ってたら時間だけが過ぎていってみんな年取っちゃうから、先にいろいろ決めちゃおうということになって。だから先日の新宿LOFTのライヴも1年以上前に決めてたし。そうやって先にやることを決めてから、そこに向かって動き始めるしかなかったというところもありましたね。とりあえず“レコーディンングし始めないとこのバンドは動かないぞ” “ライヴ決めないといつまで経っても始まらないぞ”というのがあったので、LOFTの店長に電話してあの日を押さえちゃって、それに向けて動き始めたんですよね。
──新宿LOFTの日程を押さえた時、“もしもその日までに状況を整えられなかったらどうしよう?”という不安はなかったんですか?
マッド:不思議とそれはなかったですね。それから各方面と話をしていって。
康太:人間、何かひとつ決めちゃうと、そこに向かってちゃんと行けるものなんだな、と思いましたね。まあ自分たちで決めたからにはどうにかするというか、駄目なら駄目で違うやり方を考えるというか。

──すべてが整ってから決めるのではなく、決めてから整えていくほうが話が早いというのはあるかもしれませんね。バンド始動にあたっての言い出しっぺは誰だったんですか?
康太:それは僕ですね。僕が最初にaie君を誘ったのが切っ掛け。昔、一度だけ音を一緒に出す機会があって、その時から本当に大好きなギタリストだったんで。そこで自分のほうの活動(Angelo)が止まった時、一緒にやりたいなと思って声をかけて。まあ、彼はいろいろやってるから忙しいんですけどね。
マッド:いやいや、暇ですよ(笑)。
康太:で、まあ「何か面白いことをやりましょう」というところから始まり、aie君からの紹介でLottyが合流して、最初はその3人で定期的にスタジオに入ってたんですよ。それから1年半ぐらい経ってからGara君が合流して。
マッド:ドラムについては康太さんから「好きにしていいよ」って言われたんですけど、やっぱり当初、3ピースで音を出すことを考えた時に、“知り合いの中じゃLottyかな”というのがあったんで。「こういうことをやるけど、やってみる?」と声をかけてみたところ「試しにやってみましょうか」ということになって。それ以降は月に一回、3人で集まって音を出しながら曲を作ったり。そんなことを1年半ぐらいやってたのかな。
Lotty:結構長かったですね、その期間が。定期的にスタジオに入りながら10曲ぐらい作ってきて……。
──その段階で音楽的な決め事というか、方向性の絞り込みみたいなものはあったんですか?
マッド:いや、そういうのはまったく何もなく、出たとこ勝負という感じでした。そこから楽曲のアレンジも含めていろいろと固まってきたのは、Gara君が入ってきてからですね。そうやってパズルのピースが全部はまったところで、アレンジも特定の方向にブーストさせていったというか。それが新宿LOFTのライヴを決めたぐらいの頃のことで。ただ、その時点ではまだこのバンドが“女性になる”とは思ってなかったんです(笑)。
Gara:それこそGUMMYっていう名前もまだなかったもんね。
マッド:うん。全然そういう発想も当初はなくて。“なんか男くさいロックンロールのバンドだから新宿LOFTがいいんじゃないか”ぐらいの考えでしかなかったんですよ。「ちょっと規模デカいけど、頑張って1年かけてLOFTを売り切るバンドになろうぜ」みたいなことを当時は言ってたんです、下北沢の焼き鳥屋で。で、月に一回そこで呑んだりしてたんですけど、こういう形になったのは、そこでの会話からのフラッシュアイデアでしたね。「おとぼけビ〜バ〜、いいよね」「ああいうふうにならない?」みたいな話になって。最初は「すっぴんで、グラサンかけて、だけど何故か下着姿っていう感じでいこう」と言ってたんですけど、酒呑みながらどんどんテンションが上がっていって、みんなでネット通販のサイトを見ながら「これ、可愛くない?」「こっちのほうが似合うかも」みたいな話になっていって。
Gara:その時点でほぼガールズトークでした(笑)。基本、このGUMMYに関してはすべてが呑みの場で決まってる感じですね。
康太:そう。呑みの場でのアイデアを結構みんな真面目に受け止めて、「それ面白いね」っていうところから広げていく感じで。
──いずれにせよ、Garaさんの加入後、酒の席でガールズバンドになることが決まったわけですね?
マッド:うん。しかもすでにツアー日程も切った後でしたね。

──そこで康太さんだけガールズバンドの枠から外れているのは何故なんです?
Gara:何回か議題には上がってたんですよ。一緒に呑んでる時に「康太さんはどうしますか?」っていう話をしていて……。
康太:だけど俺は、自分でもまったく絵が浮かばなかったんで「俺は無理、雄の一択だね」ということになって(笑)。まあ4人のうち1人ぐらいこういうキャラがいてもいいだろうってことで、支配人というか黒服のような設定になったんですけど、これはみんながちゃんと女装してくれてるからこそ成り立つことでもあって。
マッド:ウチら3人は品のない女子をやって、康太さんにはそれをまとめる支配人としてスーツ着用でいってもらおう、と。
康太:ちょっとコワモテの支配人というかね(笑)。それが決まったところで全員の方向が固まってきた感じでしたね。
──キャリアのある4人の男性によるガールズバンド、なんていう情報を先に知ってしまうとコンセプトありきで始まったかのように受け取られがちだと思うんですけど、実は逆なんですね。
康太:そう、すべてが本当に後付けなんです。
Gara:こういう音楽をやろうとか、そういう話さえ全然なかったんですよ。aie君から「今、康太さんとLottyと一緒にスタジオに入ってるんだけど、一回歌ってみない?」みたいに誘われた時も、どんな音を出してるとかそういう説明はまったくなくて。ただ、それ以上に“この人たちとやったらどんなことができるんだろう?”という楽しみのほうが大きくて。だからすぐに「やる!」って話になって一緒にスタジオに入り始めたんですけど、その時点ではガールズバンドになるなんて1ミリも思ってなかったし(笑)。でも、この人たちと何か楽しいことをやれるんだったら、僕はホントに何でもいいな、と思ったんです。
──そこはある意味、“大人の遊び”という感覚でもあるわけですよね?
康太:まさにそういう感じですね。
──同時にこれは、ガールズバンドがめずらしい存在ではなくなっている昨今においては、“こういう選択肢もあるんだよ”という提示にもなっているように思います。
マッド:そう、意外と誰もやってなかったんで。楽しいのにね。
康太:基本的に「これ、面白いじゃん」ってところからすべて広がっていくんですよ、このバンドの場合。そこで深く考えたりせず(笑)、とりあえず突き詰めてみるというか。
マッド:結構前のことなんですけど、対バン相手のなかに弾き語りでやってるすごくカッコいい女子がいたんですよ。その時に自分としては“これ、バンドにしてグランジやったらカッコいいのに”と思ったんですけど、それをまさに今の自分たちがやってる感じでもあるっていうか。

──グランジというキーワードが出ましたが、新宿LOFTでのライヴを観た時も“コートニー・ラヴとL7が一緒にやっている”みたいな印象を受けました。ある意味とても’90年代的だなとも思いましたし。
マッド:そう、まさにそういう感じなんです。
──ある意味、’90年代のヴィジュアル系と同時代的なものでもあるわけですよね。しかしGaraさんの合流が決まった途端に“男性によるガールズバンド”というアイデアが出てきたというのも面白いです。
Gara:確かに(笑)。まあ僕の場合、ずっとメリーしかやってこなかったんで、音楽的にもイメージ的にも価値観が凝り固まってたところもありますし。それをaie君がいい意味でぶち壊してくれるんじゃないかという期待感もありましたし、だからこそわりとすんなり受け入れられたんですよね。面白いことやれるんだったらそれでいいじゃないか、と。
マッド:決め手になってのはやっぱりGara君の“声”だったんですよ。当初は単純に“ソリッドなロック”とだけ考えてたんで、ヴィジュアル系の畑以外のところでヴォーカルを探そうと思ってたんですね。だけど3人でやってた時に自然にあの“声”が聞こえてきたというか。それで「一緒にやってみない?」ということになってからは軌道修正の連続でした。女子になるまではずっと。
──「女子になるまで」って、まるでどこかのタイミングで手術でも受けたかのような発言になってますけど(笑)。
マッド:そこについても“どっちで攻めるのか”というのはあったんですよ。身体も女子になったという設定なのか、心が女子なだけなのか、それぞれが持ってる女子像というのがあるから。俺の場合は“格好は女子で中身はオジサン”のままでいいんだけど……そこでの答え合わせも昨日やっとできたようなところがあって。「みんなそれぞれ自分のことどう思ってるの?」みたいな話をしたんですよ。
Gara:僕はたぶん、心が女子なポジションなんだろうなって。ただ、そのわりにはイカツイから「もうちょっと女子っぽく振る舞ってもいいんじゃない?」みたいな話も昨日しました。
Lotty:僕もaieさんと近い感覚。女性っていう設定じゃなく、あくまで“女装してる男”なんです。だから実際、髪も長いんですけど、変装してる感がほしいので、敢えてウィッグを被っていて。地毛でもやれるんですけど、それだとむしろ綺麗な女性路線になってしまうし、“女性になりたい”というわけじゃなく、あくまで女装してる……
マッド:女装してる変態の男性でしかないという(笑)。
Gara:それに対して僕のキャラは“女性になりたい人”なんです。

──“ガールズバンドがやるから面白いこと”というのもきっとあるはずだと思うんです。そういうところでの“これって実は誰もやってなくない?”という発想でもあったわけですよね?
マッド:こういうことをやるのが許される絶妙なキャリアと年齢というか。そこがうまく噛み合ったんですよ。俺らが20代でこれをやってたらちっとも面白くなかっただろうと思う。もうすぐ50歳に手が届く年齢でありながらこれをやるっていうのが面白いわけで。
Gara:ここにきて新バンドを組むこと自体もそうだしね。
康太:しかも変に狙ってないんですよ。若いバンドがこういうことをやると狙ってる感がすごく強くなると思うんですけど、それなりに各々キャリアがあったうえで今これをやるっていうのが単純に面白いよな、と。
マッド:しかもこのコンセプトによって客を増やそうとか、そういう考えでは全然ないわけですよ。切っ掛けは“面白そうだからやってみよう”でしかなかったし、これでライヴハウスがスカスカだったとしてもコケたとは思わないし。

■もはや若手ではなくなってるメンバーで
■元気な曲を一生懸命やるってこと自体も面白い
──たとえばガールズバンドというコンセプトというかキーワードが出てきたことで、曲のアレンジが変わったりとか、そういったところはあったんでしょうか?
マッド:ないです、ないです。ただ、これは俺の癖なんだけど、曲を作る時にメンバーに“グランジ”とか“BOØWY”とか、そういうキーワードを提示することがあるんですね。その時に「これはBOØWYというよりREBECCAで」とか「この曲はGO-BANG’Sでいこう」「SHOW-YAっぽくしよう」とか、そういうことを言ってた部分はあるかな。これで<NAONのYAON>に出られたりしたら最高なんだけど(笑)。
Gara:それ、目標にしてもいいんじゃない(笑)? 前例のないことだろうし。ただ、こんなこと言ってはいますけど、音楽についてはめちゃくちゃ真面目にやってるんです。
──ええ、だからこそ面白いんだと思います。歌詞についてもGaraさんは、メリーではいわゆる女言葉での歌詞もたくさん書いてきたわけですけど、それを敢えてここでは前面に押し出してないというのがまた面白いです。
Gara:それぞれのコンセプトが固まってきたのも、GUMMYっていうバンド名が決まったのも、あとからのことでしたからね。逆にこうしていろいろ固まってきたことで、そのあたりもちょっと意識して書いてみようかな、と思うようになったりはしてるんですけど、当初は本当に何も意識せずに、“この4人で一緒にやってる”というイメージだけで歌詞も書いてたんで。今にして思えば、もっとメリーの歌詞との差をつけても良かったのかもしれないんですけど、逆にそこを意識しなかったからこそ面白くなったんじゃないかな、とも思うし。バンドと曲が違っても、僕が歌詞を書くとこうなるんだっていうことに、自分でも改めて気付けたところがあるし。

──メンバー間の距離という意味でいうと、僕は勝手にマッドさんとGaraさんの関係が近いものと思い込んでいるんですが、実際はどうなんでしょうか?
マッド:まあGara君とは同級生みたいなものでもあるし、付き合いもかれこれ30年ぐらいになるんで。それこそ30年前、19歳ぐらいの時から「いつか一緒に何かやろう」と言ってたんですよ。「どっちか先にメジャーに行ったほうが、もう一方を引っ張り上げて一緒にやろう」って。ところがGara君はメリーでメジャーデビューしたのに声かけてくれなかったんで(笑)。
Gara:それ、昔からずっと言ってるよね(笑)?
マッド:でもまあ、それがこうして30年経ってやっと実現したというか。
康太:そんな約束があったんだ? 俺、まったく知らなかった(笑)。
Gara:お互いこれまでいろいろやってきましたけど、やっと今になって一緒にやれる喜びっていうのも大きいですよ。だからやっぱり今がいいタイミングだったのかな、とも思うし。
──すべては偶然の重なりなんでしょうが、必然もちゃんとあったというか。
Gara:そういう巡り合わせみたいなことについて俺、考えちゃうんですよ。だから最初にMVを出した「氷の結末」については、歌詞を書いてる段階ではGUMMYってバンド名もガールズバンドっていうキーワードもなかったんですけど、何をテーマに書こうかって考えた時に、やっぱり僕とaie君が出会った切っ掛けというのを思い出したし、2人の間にはいつも大佑君(蜉蝣〜the studs)がいたというのもあったんで、彼のために歌詞を書こうって思ったんですよ。そこでタイトルをどうしようか悩んでたら、aie君が「それだったら“氷の結末”じゃない?」と言ってきて。
マッド:要するに“氷結”なんです。彼の好きだった酒の名前(笑)。
──大佑さんは発泡酒をよく飲んでましたよね、ビールではなく。
マッド:うん。だから“淡麗”でも良かった(笑)。
Gara:それもあったか(笑)。でもまあ、この2人を合わせてくれた彼に、今だからこそ“僕たちまだやってるよ”と伝える曲でもあるというか。
──もしもマッドさんが“淡麗”を提案していたら「淡く麗しきナントカカントカ」みたいなタイトルになっていたかもしれないわけですね。せっかくこうして曲のタイトルも出てきたことでもありますし、今作に収録されている各曲について訊かせてください。まず1曲目に収められているのが「死神は赤いハイヒールを履いて、首輪を残す」です。なんだかとても文学的な匂いがしますが。
Gara:そのタイトルの原案はaie君から出てきたんです。
マッド:歌詞をもらって、いくつかタイトルのアイデアを出して。そのなかで俺のイチ推しだったのは「ハイヒール死神」だったんです。なんか、プロレスラーの名前みたいですけど(笑)。そこからもっと長いタイトルにしようって話になって……。
康太:この曲、3人が集まった段階で一発目にできた曲なんですよ。もちろん原型はちょっと違ってたし、Gara君が入ってきたことで形が変わりましたけどね。
マッド:だからこのタイトルが決まるまではずっと“M1”って呼んでたんです。単純に1曲目、ということで。
Gara:僕が加わって、GUMMYという名前やガールズバンドでいこうって話が出てきた時に、自分たちが何を着るべきかみたいな話にもなって、そこで「ハイヒールとか履いてみよう」というのも出てきてたんで、それも歌詞に入れようってことになったんです。
──“赤いハイヒール”というと太田裕美さんのヒット曲を思い出すんですが……。
Gara:あ、そうなんですか? 「木綿のハンカチーフ」の方ですよね?
──ええ。そういった昭和の歌謡曲へのオマージュが感じられる部分にはメリーとも重なるものを感じますが……どうやらその曲については知らなかったようですね。それはともかく、歌詞についてGUMMYとしての明確な差別化が図られているわけではないのがわかります。
Gara:そうなんですよね。もうちょっと色分けをしたほうがいいのかどうか、まだ悩んでた時期でもあったと思います。なにしろ長年メリーしかやってこなかったんで、差別化をしたほうがいいのか、むしろしないほうがいいのかがわからなくて。やってる人間の顔ぶれが違うので自ずと別物にはなってくるはずだとは思いつつも、まだちょっと手探りな感じで書いたところはあったと思いますね。だから太田裕美さんの曲とはまったく無関係で、ただ単に衣装で赤いハイヒールを履くという話が出ていたので、それをイメージして書いたものなんです。ただ、そのハイヒールについても今ではもはや小道具みたいになってるんですけどね。aie君からは「これを電話みたいに使ってみて」と言われて。
マッド:実際にあれを履いちゃうとコケるしね。やっぱ我々、ハイヒールを履いて過ごす人生ではなかったから、本当に履いちゃうと危ないし、怪我をする。この年齢で怪我すると長引くから(笑)、それは絶対やめといたほうがいい。
──では、ハイヒールを履いて歩く女性たちを今ではリスペクトしてます?
マッド:尊敬しますよ。あれを履いたままだと新宿LOFTのステージにも上がれない。撮影の時に履いただけで筋肉痛になってたくらいだから。
Lotty:脚がパンパンになって歩けなくなっちゃうんで。すごいですね、女子は。

──曲自体についてはどうですか? 最初に作ったのがこの曲「死神は赤いハイヒールを履いて、首輪を残す」だったということでしたが、その時の印象は?
Lotty:とにかく“元気だな!”と思いました(笑)。正直、やっててすごく疲れるんですよ。エネルギーを消費する音楽というか、まさにフルスロットルというか。僕はまだ30代ですけど、それでもこれまでやってきたバンドの中で一番元気だと思えるし。BPM自体も速いうえにソリッドさも必要だし、とても気合いが必要。でも、もはや若手ではなくなってるキャリアを積んできたメンバーで、こんな元気な曲を一生懸命やるってこと自体も面白いと思うんで。
マッド:ボケ防止じゃないけども、こういう曲をやることで元気になるというか。
──とはいえ、そういう曲にしようという意図があったというよりも、“カッコいいと思えるものを作ろうとすると、自然にそういうものになってしまう”ということなんでしょうか?
マッド:その時の自分のモードでしかないというか。だからこの曲をもう1年前に作ってたら違うものになってた可能性もあるし、その時のテンション、まだ手探りな状態の中で3人で音を出しながらの“こんな感じでありたい”というのがそのまま出てるんです。しかも僕は、例によってデモを作らないので。その場で口頭で伝えたり、せいぜいホワイトボードに書き出すだけなんで。
Gara:そういう意味でも’80年代、’90年代っぽいのかもしれない。同期も一切使ってないですし。スタジオに入って、aie君が持ってきたアイデアを口頭でみんなに伝えて、ドラムが入ってきて、ベースが入ってきて、そこで歌も適当に乗せてみて……。そうやって録ってみたものを持ち帰ってちゃんとまとめる、みたいな。本当に昔ながらのすごくアナログなやり方なんで。
マッド:そのやり方だと、30分もあれば余裕で1曲できるからね。
──今の時代、“さて、曲を作ろうか”ということになるとPCを立ち上げるところから始めるのが当たり前になっているわけですが、それとは……
康太:真逆のやり方ですね。
Gara:ある意味、初めてバンドを始めた頃みたいなやり方というか。まず友達同士で放課後に集まって喋ってる中で、「バンドやろうぜ!」「あの曲やってみようぜ!」というところから始まって。そんなノリのままな感じがします。
マッド:だから貧乏高校生にも真似しやすいスタイルだと思う。これなら誰にでも始められる。コピーもしやすい。

──ただしGUMMYの場合は、経験と技術があるからこそそれが成立しているわけで。
Gara:それはありますね。キャリアもノウハウもいろいろと重ねてきた僕らみたいな大人が遊んでるというのが面白いんだと思う。
マッド:そう、大人が真剣に遊んでる感じ。
Gara:この1曲目に関しては……昔は“勢いだけで一発録り”みたいなこともあったじゃないですか。歌もハンドマイクで録るみたいな。まさにそういう感じだったんです。実はちょっと歌がシャープ気味のところもあるんですけど、aie君も「全然それでいい」って言うんで、まったく直すこともせずワンテイクのままで。そういうこともやれちゃうのがGUMMYなんですよね。
──なるほど。そして2曲目に収められているのが氷結こと「氷の結末」です。これもかなり早い段階のうちからできていた曲ということになるんでしょうか?
マッド:これはGara君が合流して4人になってから……それこそリハーサルでスタジオに入った時に1時間くらい時間が余ったから「じゃあ1曲作っちゃおうか」となって、その場でパパッと作った曲です。
Lotty:Garaさんが入った状態で初めて4人で作った曲じゃなかったかな? Garaさんが歌う体(てい)で作り始めたものというか。
康太:これは歌も込みで最速だったよね。すぐにできた。
──歌メロはGaraさんが作ってるんですよね?
Gara:はい。まずその場でみんなが演奏してるところでなんとなく何回か歌ってみて、それを携帯に録音したものと、楽器隊だけで演奏した音源を家に持ち帰って、もう一回ちゃんと付け直してみる、みたいな感じでやってるんです。

──歌詞もまずは適当にノリまかせで乗せてみるわけですよね? だからこそ好きなワードも出てきやすい。この曲の歌詞にも出てきますけど、Garaさんは“午前2時”が好きですよね?
Gara:好きですね。時間や季節も、聞いた人はイメージしやすいですし。あとはさっきも話に出たように、この曲は大佑君を想って作ったところがあるわけですけど、彼から電話が来るのがたいがいその時間帯だったんですよね(笑)。
──僕にもそんな記憶があります。“夢芝居”なんて言葉が出てくるのもGaraさんらしいです。「梅沢富美雄か!」と突っ込みたくなりますが。
マッド:確かに。そのあたりもGara節だな、と思います。
Lotty:ただ、メロディも歌詞も何回か変わった記憶があります。この曲を最初に録った時点ではまだGUMMYっていうワードも出てなかったし、バンド名が決まった後に録り直そうという話も出てきたり……。
マッド:ただ、「そこは敢えてプロトタイプの段階での空気感を残したほうがいいんじゃないか」みたいな話になって。しかもそれが結果的に評判良くて。MVを撮ったことも含め、我々のレパートリーの中で、我々のキャリアを知ってる人たちが最初に聴く曲になるだろうと思ったし、入口としてちょっと優しい曲、比較的わかりやすい曲にしてあげようと思って。そこはちょっと狙いましたけどね。
康太:確かにわかりやすい。フォロワーたちが入りやすいというか、知らない人たちも入りやすい曲だと思いますね。
マッド:こういう曲もないと、ロックンロールばかりになっちゃうんで。
──この曲のギターソロがまた破滅的でカッコいいです。
マッド:同じことは二度と再現不可能ですけどね(笑)。適当に弾いていい感じのやつを選んだだけで、自分でもどうやったのかわからないです。

■音楽にサビは必ずしも不可欠ではないし
■イントロギターこそサビな曲もある
──ライヴでも毎回違うソロが聴けるということですね。ここで改めて訊いておきたいんですけど、GUMMYというバンド名はどんな経緯で決まったんでしょうか?
マッド:女子になることが決まった段階で「じゃあ可愛い名前にしよう」ということになって、いろいろと探し始めて。ただ、POCKYはすでに登録されてる商品名だったし……
Lotty:まずお菓子しばりで考えてたんですよね。
マッド:さすがに商品名をそのまま使うわけにはいかないし、キャンディとかクッキーとかいろいろ考えてた時に「そういえばグミって何なの?」という話になって。そもそもあれはあの形状のもののことなのか、特定の商品名なのかとか、いろいろと調べてもらって。その結果「これ、イケるんじゃない?」ということになったんです。
康太:響きが可愛いし、覚えやすいし。
マッド:「これでいいじゃん!」ということになってからカタカナにするか英語表記にするかを考えて、あのロゴを考えて……。名前自体は可愛いけどちょっと大人っぽいほうがいいよね、ということであのロゴができたんです。シザー・シスターズのハサミのロゴがちょっとヒントになりましたね。そうしたら今度は、マドンナの新譜が俺たちの影響を受けたものになっていて(註:『コンフェッションズ II』のアートワークなどに、GUMMYのシンボルマークに印象の通ずる画像が含まれている)。
──いわゆる“M字”ですよね?
マッド:そうです。でもあれは、俺らのほうが先なんで。逆にマドンナのほうが先に出ていたら、あのロゴを使うことはなかったと思う。

──逆にマドンナの側がGUMMYのロゴを見つけて「あら、いいじゃない。一緒に何かやらない?」とか言ってきたら面白いんですけど。
Gara:最高ですね、それ。
マッド:XのDMとかで連絡が来たりしたらすごいよね。まさにジャスティン・ビーバーがピコ太郎を取り上げて売れた時みたいに(笑)。
──今の世の中、それはあり得ない話じゃないですからね。話を戻しますけど、いずれにせよGUMMYという名前は“可愛くて憶えやすいもの”という意図から見つけたものだったんですね? 読み方は“グミー”じゃなくて“グミ”でいいんですよね?
マッド:はい、グミです。我々が小汚くて品のない女子だからこそ名前ぐらいは可愛くしたいっていうところです。もしもこれで本当に可愛かったりしたら違う名前にしたでしょうけど、“名前だけが可愛い”っていうギャップを狙いましたね。
──しかもグミってどこか人工的なところがあるし、食べ過ぎるのは身体に良くなさそうなイメージもありますよね。
マッド:そこも含めてイメージ通りですね。
Lotty:食べ過ぎると良くないんだけど、なんか癖になるみたいな。
──食べ過ぎると身体に良くないもののひとつに、賞味期限切れのプリンがあると思います。
マッド:おっ、話が繋がった!

──というわけで3曲目に入っているのが「プリンとスプーン」です。康太さんのベースから始まる曲ですが、最初からそういう曲として作られていたんですか?
康太:いや、あれは最後に付けたのかな。
マッド:最初はベース始まりじゃなかったですね。結構ギターで始まる曲ばかりになりそうだったから、「これはベース始まりがいいんじゃないか」ということになって。
康太:うん。その流れで決まったことだったと思います。
Gara:歌メロについては、みんなが想定してるような“イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ”みたいなのを無視して付けていくことが多いんですけど、それでも同じような終わり方になっちゃうことが多くなってしまいがちで。そういう意味でも康太さんのベースで始まり、ベースで終わるっていう流れになったことで、他の曲とは違う感じになりましたね。
──ちょっとポップで意味不明なタイトルではありますが、歌詞にはちょっとした終末感があります。テーマとしてはめずらしいものじゃないですけど、Garaさんにとっては新鮮な題材だったのでは?
Gara:そうですね。aie君と呑んでた時に「もしも世界が終わる日が来たら」みたいな話になって、「もしそうなったら僕、何してるんだろう?」みたいなことを言った時に、「歌詞、それで行ってみよう!」と言われて。確かにこれまであんまり書いたことなかったですね、こういうのは。

──「死神は赤いハイヒールを履いて、首輪を残す」の歌詞にも“愛は戦争”という言葉がありますけど、昨今の世界情勢なども歌詞を書くうえでのモードには影響が少なからずあったのかな、などと思わされました。
Gara:意識のどこかにはあったかもしれない。今回の作品に入ってない曲にも、そういった今の世界情勢みたいなことについてちょっと歌ってるものがあったりするし。ただ、僕がそういうことを歌うことで何かが変わるとかじゃなく、この状況下、こんな見た目の僕が一生懸命“自分にできるのはこれだ!”って歌ってる姿が頭に浮かんできたので……。あと、この歌詞についてはLottyもアイデアをくれて。
Lotty:元々は“賞味期限の切れたプリンにスプーン刺した”だったのかな。それを“ぶっ刺した”にしたほうがアクセントがいい感じになるんじゃないかって提案したんです。濁音を入れたほうがいいフックになるんじゃないかって。
Gara:そうやってレコーディング中にも細かくいろいろと変化していって。この曲には“Woo!(ウー!)”っていうコーラスが入ってますけど、あれもレコーディング当日の思い付きでやったことなんです。なかなかいないですよね、いまどき“Woo!”なんてコーラスをやるバンド(笑)。
──確かにそうですね。“Woo!”ではなく“Spoon!”にしても面白かったかもしれませんが。
Gara:なるほど(笑)!
──あと、可愛くてわかりやすいという意味ではプリンもバンド名候補になり得たのかも。
マッド:確かにそれもアリだったかも(笑)。

──それはともかく、次は「無色サーカス」について。いきなり“Fuckin’”と“Darlin’”で韻を踏もうとする歌詞の強引さがすごいです。
Gara:確かに強引ですよね。なんかこの曲でもコーラスみたいなのをやろうということになって、そこでぶち込んでみたのがこの言葉でした。
Lotty:そうそう、それもレコーディング当日に出てきたアイデアでした。「プリンにスプーン」で“Woo!”というのを録った流れで、この曲にもパワーコーラスみたいなのを入れようかということになって。なんかパーティ感みたいなものを出していったほうがいいのかな、と。
Gara:そこで出てきた言葉が“Fuckin’”だったというのが、いかにも幼稚というか。
マッド:俺ら、IQ低そうだよね(笑)。
──サーカスというのも歌詞のモチーフとしてはよくあるものです。ただ、ありがちなサーカスの世界観とは少し違っているようにも感じられます。
Gara:もうちょっと場末感とうか、寂しげな空気感というか。この曲自体にもそういう印象がすごくあったので。しかもそこにメロディをつけたらより一層退廃感が出てきたというか、廃れてしまったサーカスというイメージが膨らんできて……そうやってまとめていった歌詞ですね。
Lotty:ちなみに3人でやってた段階での仮タイトルは「ミッシェル」でした。
マッド:そうだね。確かこれは、3人で作り始めてた段階での3曲目くらいだったと思う。THEE MICHELLE GUN ELEPHANTみたいなやつをやろうと思って(笑)。この曲に限らず、そういう理由で仮タイトルを付けていくことが多いんですよ。「ミッシェル」とか「ニルヴァーナ」とか「レッチリ」とか。結局、バンドを始めた段階でいろんなアプローチを試そうとしてた中で、とりあえずいろんなスタイルの曲を作ってみて自分たちに合うのを選んでいけばいいという考えだったんだけど、意外とどの曲もそのまま生き残っていて、なくなった曲というのはひとつもないんです。
──要するに最初の頃は、自分たちの振れ幅みたいなものを見極めようとしていたわけですよね。速い曲をひとつ作ってみたら次は違うものを、というふうに。
マッド:しかも曲が揃ってきてライヴが決まってくると、足りないものを埋めようとし始めるものだし。ただ、面白いことに、そうやってきた中で“使わなくなった曲”というのはないんですよ。作り替えたり再利用したりすることはあっても。
Gara:そう、ボツ曲というのはないよね。

康太:確かにそうだね。そんな中、これはわりと最初の頃に作ったある意味シンプルな曲なんだけど、コード進行が面白いんですよ。
マッド:この曲を作った時点からすでに2年以上経っちゃってるから、当時の感覚を正確に思い出すことはできないですけど、僕のアレンジの癖……半音の使い方とか小節の削り方とか、そういうのがみんなにも伝わっていって、共通言語が増えつつあった頃にできた曲ってことになると思うんです。
康太:半音ずつ上がったり、半音ずつ下がったり。クリシェ進行は、そんなに特殊というわけじゃないんだけど、あんまり普通はやらないようなアイデアを、わりとサラッと投げてくるんですよ、aie君は。それを実際に形にしてみると面白くなるし、Gara君についても“よくそこに歌を乗せられるな”って感心させられるんです。
Gara:aie君ならではのコード進行っていうのがあるんです。“なんでここからそう行くの?”みたいなのが。正直、僕としては苦手とする展開が多いですね、半音で上下させるとかも結構不得意だし(笑)。だけどaie君と一緒にやるってことはこういうことだよな、と自分を納得させてます(笑)。
康太:“あ、そこに行くんだ?”というコード進行は確かにあるよね。しかもaie君の場合、それを狙うんじゃなくてごく自然にそこに行こうとするので。
──自然体でありながら普通じゃないということですね?
マッド:要するに、静かに狂ってるんです(笑)。
Gara:曲に歌メロを付ける時でも、コードと僕の歌が合ってないように聴こえちゃいそうなことがたまにあって。そういう時は「これはどうなの?」って訊くんですけど、「音楽理論的には間違ってるかもしれないけど僕的にはアリ」と言ってくれるんで、僕もそこは気にせず進めていくようにしてます。僕の場合、aie君よりもJ-POPや歌謡曲寄りなので、aie君が好むような、大概の人が普段使わないようなダークな感じのコードに僕の歌が合わさると、意外なくらいポップでキャッチ―に聴こえたりする場合もある。そういうのも発見でしたね。
──面白いですよね。かつては音源制作の現場で大人たちから「音がぶつかってる」とか「そのメロディはコード感に合ってない」とか散々言われてきたわけじゃないですか。今は逆にその真逆のところで独自のものを作ろうとしているわけで。
マッド:でも僕は前から“音がぶつかってて何がいけないの?”と思ってたんで。“それで誰かに迷惑がかかるの”って話ですよね。
康太:僕も昔からそれはずっと思っていて。やっぱり若い頃はいろいろ言われてきたんですよ、音楽理論的な間違いを指摘されたり。でも実のところ、メンバー側としてはそんなことどうでもよくて。音が外れてようが何かが間違っていようが、カッコ良く聴こえてればそれでいい。理論に沿って当てはめていくと正解がひとつになってしまうから、結局みんな同じになっちゃう。その考え方って僕は今も昔も好きじゃないし、どうでもいいことなんですよ。
──プロデューサー不在の環境を楽しめているわけですよね、今は。
康太:そういう立場の人がいると、どうしても理論という物差しどおりに“ちゃんとしよう”ってことになってきますからね。
マッド:うん。でも、たとえば我々がこの先、何枚目かの作品で誰かプロデューサーを立てようってことになれば、それはそれで楽しめる気がします。それこそさっきの“半音遣い”の癖とかを直されちゃったりしたら、逆に新しいものが生まれるかもしれない。若い時はどうしても反発しちゃいますけど、“白鍵しか叩きません”とかそういうルールに則ってやることも、今の自分だったら嫌じゃないかもしれない。

──確かに。そして5曲目に収録されているのが「天国少女」です。これも初期に作られた曲なんでしょうか?
マッド:これは仮題が「ザ・クロマニヨンズ」、いや「ザ・ハイロウズ」だったのかな(笑)。当初、サビがなかなかしっくりこなくて、危うくボツになりかけてたんです。だけどそこで、“サビどうしようかな?”と考えた時に“サビなんか要らなくね?”と思って。それで「ザ・ハイロウズみたいな感じで」って相談したらこうなってきたんです。サビは無しで、そこはドラムだけで、繰り返しのワードだけ乗ってる感じにして。
──確かに、“サビってどうしても必要なものなのか?”という疑問はありますよね。
マッド:そうなんですよ。それが、ここ10年間ぐらいの俺のテーマのひとつだったりもするんです。ニルヴァーナもガンズ・アンド・ローゼズもメタリカの曲も、口ずさむのってサビじゃなくてイントロのギターメロだったりするじゃないですか。カッコいいのはそこだったりする。であれば、音楽にサビは必ずしも不可欠ではないし、挙げた例でいえばイントロギターこそサビなわけで。
Lotty:洋楽ってそうですよね。サビのための音楽じゃなくて、イントロとAメロがずっとループしてるみたいな気怠い展開の音楽が人気だったりする。そこで“サビを作らなきゃ”っていうのはJ-POPの発想だと思うんですよ。要するにサビのためのAメロやBメロになっちゃってる。そうではなくて、イントロとかリフがメインになってるという意味では、洋楽っぽい作り方なのかもしれないですね。
康太:本来ならサビがくるであろうあのドラムパートにしても、「言葉がなくてもいいんじゃないか」というのがあったし。ライヴでやった場合でも、そこで歌うんじゃなくて煽るとか、わりと自由な感じでいいんじゃないかって。結果、Gara君が歌詞を乗せてくれましたけど。
Gara:確かに自由でしたね。しかもAメロにあたる部分が何度か繰り返されるんですけど、そのメロが全部違うんですよ。同じメロが二度と出て来ない。
──サビ不在だからこそ、そうした自由度も高まってくるわけですかね。ルールを知っているからこそルールを壊せるというか。
Gara:かもしれないですね。で、「この曲にはみんなで騒ぐような感じがほしいね」って話をしてて、レコーディングを済ませた日にaie君が「よし、今日も呑みに行くぞ!」と言って、みんなで熟女キャバクラに行ったんですよ。
マッド:その熟女キャバクラに結構いい声の熟女が何人かいたんで、実際使えるかどうかはわからなかったけど、俺、2時間ぐらいずっと会話を録音してたんです。後からそれを“使えるところないかな”って聞きながら探して。だからあれは、俺らの声がないところだけを繋いだものなんです。「ごちそうさまでした」みたいな言葉が入ってるのは、俺らが奢ったからで(笑)。
Gara:べつにそれを録るために行ったわけじゃないんですよ。そもそもはガールズバンドとして、レコーディングの打ち上げも兼ねて、女性の所作を学びに行こうって名目で熟女キャバクラに行ったんです(笑)。
マッド:熟女とか言っておきながらどうせ年下の女の子が付くんじゃないかと思ってたら、ちゃんと目上のお姉さんたちがきて。ちゃんと熟女だった(笑)。「チェッカーズをデビュー当時から追っかけてた」とか言ってたし(笑)。
康太:間違いなく先輩方だったね(笑)。
Lotty:しかもその店、“微熟女”を謳ってるんですよ、“美熟女”じゃなくて(笑)。

■自画自賛の嵐です(笑)
■俺たち最高じゃん!みたいな
──そのエピソードも若いバンドならば表には出せなかったかもしれませんね。そして最後に収められているのが「シール」ですが、この曲は……シティポップですか?
マッド:そうそう。
Gara:その曲の歌メロを付けてる時、ガールズバンドでいこうってこと決まってたし、GUMMYという名前もあったんで、シティポップにしようと思ったんですよ。歌詞もそういうワードで作っていって。それでメンバーみんなに「小室ファミリー的ないいメロができました」って言葉とともに送ってみたら、誰も返信くれなくて(笑)。
マッド:沈黙はマルなんです(笑)。でも、面白いですよね。AメロもBメロも、歌メロはすっごく綺麗なんだけど……
康太:サビで大いに裏切る。
──ほとんどアジテーションですもんね。
Gara:女性心理の表と裏を描こうと思ったんです。aie君が作ってる段階で、この曲には「システム」っていう仮タイトルが付いていて。
マッド:システム・オブ・ア・ダウンみたいなサビの展開にしようと思ったんです。ある意味、“逆lynch.”っていうか(笑)。AメロとBメロはちゃんと歌ってるのに、サビはそうじゃないっていう。
康太:この曲も全員で“ワーッ”とコーラスやってるんですけど、録ってる時は“なんだこれ? だけど面白いな”と思ってましたね(笑)。思い出してみるといろんな光景が面白くて。そういう意味では遊んでますね。でも全力で楽しんでます。
Lotty:ライヴでも人気ですよね、この曲。
康太:裏切り方が面白いからね。

Gara:そういうことを面白がりながらスタジオでもやれちゃうのが、GUMMYの良さだと思います。当初、粘着系の歌詞ってことで、aie君から「ガムテープ」っていうタイトルが送られてきたんですけど、そこでちょっと「う〜ん」となって、結果「シール」になったんです。ただ、この曲のタイトルが何故「シール」になったのかを僕ら全員忘れてて、その答え合わせも昨日したところでした。
──歌詞の1行目に“シルエット”という言葉が出てくるじゃないですか。もしかしたら、そことつながりがあるんじゃないかと考えていました。
Gara:僕らがそんなに深く考えてるわけないじゃないですか。何も考えてないです(笑)。
──今、シールが流行ってるじゃないですか。しかもステッカーじゃなくてシール。言葉自体にもグミとかプリンと同じような感触があると思います。
マッド:グッズ化決定だよね。ぷくぷくシールを作らないと(笑)。
──こういった全6曲が詰まった作品について、どう形容すべきかは難しいところでもあるんですけど、皆さんが全力で楽しんでいるのはすごく伝わってきます。
Gara:そうですね。でも、新譜ができたっていう感覚ではあんまりないんです。
マッド:だいぶ前に録ってたからね。まあライヴを楽しんでもらうための補助剤みたいな。
Lotty:入門編って感じですかね。

──その意味ではこの先に控えている東名阪ツアー<GIVE ME GUMMY>が楽しみなところですけど、先日の新宿LOFTでのライヴについて何か反省点はあったんでしょうか?
マッド:いやいや、自画自賛の嵐です(笑)。「俺たち最高じゃん!」みたいな。
Gara:出来すぎじゃん、という感じでした。1本目なのにさっそく生配信も入れて、しかもあの出来で。あの夜は「俺たち最高!」っていう乾杯を何回もしました。
康太:曲順もばっちりはまってたし、映像も“自分の映像をこんなに観たこと過去にあったか?”というくらい何回も見たし。それぐらい良かったですよ。自分がどうのというよりはメンバーがみんな良かった。それをやっと観てもらえた、という嬉しさもあったし。
──隠し持っていた面白いものをようやく披露することができた、というか。
康太:“可愛い”とか“女装”という部分においては疎外感があったんですけど(笑)、みんなが褒められるとすっごく嬉しい。
──いや、そこで疎外感を味わう必要はないはずですし、康太さんもいつかそっちの路線に……。
康太:それは自分のキャラじゃないから。だから「可愛い」っていう反響があってもそこに自分が含まれてないのはわかってたけど、まあ、嬉しい疎外感でしたね(笑)。
マッド:康太さんの女装はこのバンドの切り札でしょうね。いつでも大歓迎です(笑)。それこそジャケットを脱いでみたら、実はこっそりブラ着用だったとか(笑)。
康太:ひとりだけ笑えない変態(笑)。カッコいいシャツからブラのラインが透けて見えるとか、なかなか深刻だよね(笑)。
──こういう話で盛り上がるのは楽しいんですが、ツアーがどんなものになるのかがまったく見えてきません(笑)。
マッド:ははは! まあでも新宿LOFTでやったことが軸になってくるだろうし、しっかり準備していくバンドでもないんでね。すべて生音だし。その場所に行って、ステージに上がった瞬間のフロアの雰囲気でライヴが変わってくる気もするし。曲のテンポ感もそうだし。
康太:空気感はその時々で変わってくるよね、仮に同じことをやったとしても。
マッド:うん。ただ、自分たちが想像してた以上に人気者になっちゃって、チケット買えない人たちには申し訳ないと思ってるんですけど。
Gara:そこは嬉しい誤算だよね。
康太:決してわざと小さなハコを選んだわけではなくて、これが適正サイズかなと思ってたんですよ。
マッド:そう、新宿LOFTが売り切れないバンドのツアーを想定してたから。この状況は嬉しくはあるんですけど。観たい人が観られないという状況が続くのは良くないし、それだと観に来てもらえなくなっちゃうから、年に一回ぐらいは観たい人が全員来られるぐらいのキャパでのライヴを用意したいですね。ただ、いまだに便所が汚くて楽屋でタバコ吸い放題みたいなライヴハウスは好きだから、そういう場所ではやり続けていきたいけど。

──そうしたスタンスは貫いていきたい、と。GUMMYは一応新人バンドでもあるわけなので、ここで改めて“何を目指しているのか?”を訊いておきたいんですが、どんなゴールを目指してるんでしょうか?
マッド:たぶん始まった瞬間にゴールに達してるんですよ。もちろんお客さんのことも考えるんだけど、やっぱりこの4人が楽しめてるってことが大事だから、楽しみ続けていきたいですね。まだまだ飽きそうにないから(笑)。
Gara:毎日のようにライヴができて、ハッピーに酒を吞めてたらそれでいいというか。
康太:僕らがこのバンドをやってるということは、メンバー自身が楽しめてるっていう証拠だから。
Gara:楽しいからこそやれてるし、康太さんの駄洒落も気持ち良く受け止められてるんで(笑)。
マッド:でもなんか最近、駄洒落を言う時の声が小さくなってきてるんですよ(一同笑)。
康太:aie君に「いやー、イマイチっすね」とか言われるんで(笑)。Gara君は苦笑い。Lottyが一番優しい、わりと乾きめの笑顔で(笑)。
──次回取材では駄洒落攻撃も楽しみにしています。もちろんそれ以上にライヴが楽しみです。このバンドの場合、同じライヴは二度となさそうですし。
マッド:今回の6曲についても、あくまでレコーディングした時点での記録でしかないし、今日やるのと明日やるのとでは違ってくるだろうから。当日の雰囲気で変わってくるところもあるし、約束通りのところで歌わないこともあるかもしれない。そうやって日に日に変わっていくのが当たり前だと思ってるので。そうやって臨機応変なことができるのは、それぞれにビビらないスキルがあるからこそだし。
Gara:それはみんな持ってるもんね。逆に何かハプニングがあったとしても、それを面白がれるというか、どうやって面白くしようかって考えるメンバーばかりだし。だからお客さんにもGUMMYを面白がりに来てほしいですね。「楽しかったね」と笑って帰ってもらえれば、僕らはそれで満足なんで。
取材・文◎増田勇一
撮影◎川島彩水 (ライヴ)

■1st EP 「GIVE ME GUMMY」
2026年4月29日(水/祝) リリース
【CD】\3,000(+tax)
▼収録曲
1.死神は赤いハイヒールを履いて、首輪を残す
2.氷の結末
3.プリンにスプーン
4.無色サーカス
5.天国少女
6.シール
■1st EP「GIVE ME GUMMY」インストアイベント
5月1日(金)17:00 埼玉・HMV大宮アルシェ
5月3日(日)18:00 東京・タワーレコード新宿店9F
5月4日(月祝)19:00 大阪・littleHEARTS.大阪店
5月7日(木)12:00 愛知・静かの海
内容:サイン会

■GUMMY TOUR 2026<GIVE ME GUMMY>
5月5日(火/祝) 大阪・心斎橋BEYOND
open16:30 / start17:00
5月6日(水/祝) 愛知・名古屋ハートランド
open16:30 / start17:00
5月8日(金) 東京・代官山Space Odd
open18:00 / start19:00
▼チケット
前売 6,500円(税込) 当日 7,000円(税込)
スタンディング ※入場時ドリンク代別途必要
一般発売:4月11日(土) ※スマチケ(分配可)
関連リンク
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