日本人の「たっちゃん」とイタリア人の「ニコぷ」さんの国際同性カップルのお二人。二人の食卓には、日本の伝統食も使った料理が並びます。たっちゃんさんの料理を心からおいしそうに食べるニコぷさんの動画が人気を呼び、Instagramのフォロワーは9.5万人に。交際をはじめて今年で11年目。文化の違いを「おもしろい」と捉えながら、食や日々の暮らしを楽しむふたりには、「羨ましい」という声もたくさん届くそうです。

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「イタリア人が素麺を食べたら」の動画がバズった

── おふたりは「たっチューバーチャンネル」として「イタリア人に納豆パスタを出したら」など、リアルな食卓を撮影したショート動画が人気です。動画配信を始めたきっかけはなんだったのですか。

たっちゃん:2020年から東京で同棲生活をするなかで、ニコがイタリア人ということもあって、食習慣の違いがあったんです。特に彼が麺をすすれなかったのが私の中では新鮮でした。日本では麺はすするのが当たり前ですが、イタリアではマナー違反にあたるそうなんです。それで、「こういう違いを動画にしたら面白いんじゃないか」と思ったのがきっかけです。

最初の動画は「イタリア人が素麺を食べたら」という内容だったんですけど、それがバズって今に至ります。

初めてのSNS投稿

この動画には想像以上に多くの反響をいただきました。特にコメント欄では、「郷に入っては郷に従え」「器を持って食べるのがマナー」といった日本の食文化に関する声や、「迎え舌はよくない」といった食事マナーについての指摘も多く寄せられました。一方で、「日本人でもすすれない人もいる」「好きなように食べたらいい」といった寛容な意見や、「箸の持ち方がきれい」といったポジティブな声もありましたね。

この動画を通して、食べ方やマナーひとつにも文化や価値観の違いが表れること、そしてそれを知ること自体が楽しさにつながるということを実感しました。

── おふたりの食卓には納豆、いぶりがっこ、梅干しなど日本独特の食材も頻繁に登場します。特に納豆は外国の方は苦手というイメージがあったのですが、ニコぷさんはお好きだそうですね。

ニコぷさん:大好物です!実は私、以前は食べ物に関心がなくて。ひとり暮らしをしていたときはコンビニご飯で満足していました。「うどんとサラダチキンさえあれば大丈夫」みたいな食生活で。でも、たっちゃんと同棲し始めてから、食の大切さが身についてきましたね。

それもあって、もともとかなり痩せている方だったんですが、健康的に体重が増えました。体調を崩すこともなくなりましたね。たっちゃんが腸活を意識して発酵食品を取り入れてくれているのも大きいと思います。

納豆のニオイは最初から気にならなかったのですが、たっちゃんが私の口に合うように工夫して出してくれていたおかげかもしれません。梅干しも、最初ははちみつ漬けしたものから試してくれて。いぶりがっこも私の口に合うようにクリームチーズと合わせてくれたり。

たっちゃん:納豆のニオイや食感が苦手という外国人の方が多いので、最初は食べやすいように卵焼きの中に入れて出したんです。そしたら、めちゃくちゃ大好評で。そこからパスタと和えたりするうちに、ニコがどハマりしました(笑)。

── たっちゃんはすごく料理上手ですよね。動画を見ていると、品数も豊富で驚きます。

たっちゃん:父が板前だったんです。だから食卓には必ずメインだけでなく、小鉢や副菜が並んでいるのが当たり前という家庭で育ちました。小さい頃から食に興味があって、保育園の頃から自分でうどんを作っていたくらい。

ニコぷさん:たっちゃんが作ってくれるものはどれもおいしいけれど、納豆と大葉のパスタと、定番ですが肉入りのトマトパスタが大好物。私にとってはコンフォートフードで、元気がないときにいつも「作ってくれる?」と頼むんです。あとは納豆卵焼きも好き。ふわふわですごくおいしい。たっちゃんは「今日は何を食べたい?」と聞いてくれるんですけど、実際どんな料理が出てくるかはいつもサプライズです。

── 素敵ですね。料理以外の家事分担はどうしているのですか?

ニコぷさん:洗い物は基本的に私の担当です。たっちゃんが料理を担当してくれているので、洗いものまで任せるのは申し訳ないですし。ゴミ出し、床掃除やトイレ掃除も私がやります。洗濯は在宅勤務のたっちゃんがやってくれています。

たっちゃんには本当に大切にしてもらっているなって感謝しています。土日以外はお弁当も作ってくれて。あと、私は仕事で帰りが21時をすぎることが多いんですが、夕飯を温かい状態で食べてほしいからと、帰りを待っててくれるんですよ。

文化の違い「体を洗ってから湯船に入ることに驚き」

── 愛を感じますね!とはいえ、最初のころは文化の違いで気になることは多かったのでは。

ニコぷさん:そうですね…お風呂の入り方とかはかなり違います。イタリアでは、浴槽に立ってシャワーを浴びるのが一般的。日本に来てからもひとり暮らしのときはイタリア式でしたが、ふたりで住み始めてから浴槽にお湯を張る日本式の入り方を知って。体を洗ってから湯船に入るのが常識ということも知らなくて、驚きました。

あとは、ゴミ出し!どこの地域でも出す時間が厳密に決まっていますよね。イタリアはもっとラフで、いつでも捨てられるシステムなんです

たっちゃん:私は、イタリア人が家族をめちゃくちゃ大事にすることに驚きました。毎週のようにテレビ電話で話すんです。それも平気で1、2時間ぐらい(笑)。

ニコぷさん:私からすると、たっちゃんが両親と1か月に1回やりとりするくらいなのが不思議でした。「仲が悪いの?」と心配になるくらい。イタリアでは1週間に1回でも少ないほうなんです。

たっちゃんがニコぷさんの両親と初対面したときの1枚

── お話を伺っているだけでおふたりの仲のよさが伝わってきますが、ケンカになることはないのでしょうか?

たっちゃん:ありますよ。「ゴミ出ししてないよ!」とか(笑)。でも、翌日に持ち越すことはなく、いつも数時間で解決します。そのためにも、「なぜ嫌なのか」を掘り下げる会話を心がけています。私もニコも相手の意見を否定したくないので、「そう思うんだ。じゃあこういうやり方はどう?」とお互いに提案しています。付き合い始めからずっとそう。私もニコも我が強いですけど、「相手の意見もちゃんと聞こう」という前提があるから成立しているんだと思います。

ニコぷさん:2~3時間くらい話し合うときもあるけどね。「なぜそれが嫌だったのか」「なぜそれを正しいと思うのか」を、とことん話し合います。

「外国人がいるから犯罪が増える」偏見を持つ人には

── 大事なことですね。おふたりは今、ゲイであることをオープンにして動画配信をしていますが、チャンネルに誹謗中傷のコメントがつくことはありますか?

たっちゃん:ありますよ。よくあるのが「イタリアおねえ」「キモい」「国へ帰れ」といった内容。でも、「こんな人もいるんだな」という感じで、特に気にしていません。差別というか、区別ができていない人たちが言っているんだろうなと。外国人の犯罪などのニュースだけを見て「外国人がいるから犯罪が増えるんだ」と偏見を持っている人もいます。そういう人にはルールを守って真面目に住んでいる外国人もいるんだよ、というところに目を向けてほしいです。

── 動画配信を始めて以降、家族や親戚などからの反応はいかがですか?

ニコぷさん:ひとつ印象的だったことがあって。実は私、たっちゃんと付き合うまで、彼氏を家族に紹介したことがなかったんです。両親が来日したタイミングで初めてたっちゃんを紹介したのですが、そのとき、両親の友人も一緒に来ていて。両親はすでに私がゲイだと知っていたけれど、親の友人たちは知らなかったから、気まずい感じになるのではと心配していました。

ところが、両親が事前に友人たちに「ニコはゲイで、たっちゃんは彼氏なんだよ」と説明してくれたみたいで。両親の友人たちはすっかり私たちのチャンネルのファンになってくれて、動画を見ながら「たっちゃんに会いたい」「料理を食べたい」と言っているようです。ゲイかどうかは関係なく、たっちゃんの人柄や料理に対する熱意をきちんと受け取ってくれてたんだと思うと嬉しかったですね。

同性の何気ない日常から「おいしい、ありがとう」を広げたい

── 人柄が伝わったのですね。今やたくさんのファンがおふたりの発信を楽しみにしていますが、今後のビジョンや夢はありますか?

たっちゃん:SNSを通じて食を通したコミュニケーションや、楽しく食べることの大切さを伝えていきたいです。あとは、同性同士の何気ない日常を届けることで、「男同士がふたりでご飯食べるのなんて、別に普通のことじゃない?」って思ってもらえたらいいなと。将来は、イタリアの自然がすごく好きなので、日本とイタリアの二拠点生活を考えています。

ニコぷさん:発信を続けていくなかで、特に伝えたいのが、作り手に対する感謝の気持ちです。同性でも異性でも、作った人に感謝を示さない人って多い気がします。「おいしい、ありがとう」と、リアクションや言葉で感謝を伝えるのは、大事なことだと思うので。日本だと「奥さんが料理を作ってくれて当然」という人も多いと聞くので、ちゃんとありがとうを言おうよ、と伝えたいです。

たっちゃん:ニコは動画でいつも私が作った料理に対して「ウマボーノ(「ウマい」とイタリア語の「buono」を掛け合わせたニコぷさんの口癖)」ってわかりやすくリアクションしてくれるんです。そんなニコを見た視聴者の方から、「ニコちゃんみたいにおいしそうに表現してくれたら、作りがいがありますよね」という声をいただくことが本当に多くて。その反応に対して「普段みんなは黙って食べているのかな。コミュニケーション取らないの?」と逆に驚かされるし、残念だなと思うんです。

目の前の食事には、作った人だけじゃなく生産者などたくさんの人がかかわっています。当たり前と思わず、食材の背景や作ってくれる人に感謝を示すことの大切さを伝えていきたいです。

取材・文:市岡ひかり 写真:たっチューバーチャンネル

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