1969年(昭和44年)9月10日、東京・渋谷区恵比寿の質店の長男、横溝正寿ちゃん(当時7歳)が登校途中に連れ去られた。

 犯人が要求したのは500万円(現在の貨幣価値で約3400万円)。そして電話口でこう告げた。

警察に知らせたら“かたわ”になるか、生きては戻らない」

所持金わずか304円

 犯人はすでに正寿ちゃんを殺害していた。誘拐当日の朝、通学路で待ち構えた犯人は因縁をつけて正寿ちゃんを殴打し、近くの公衆便所に連れ込んで刺殺。

 遺体をスーツケースに詰め、東横線渋谷駅構内の携帯品一時預かり所に預けたうえで、身代金の要求電話をかけるという冷徹な手口だった。


写真はイメージ ©getty

 逮捕は翌9月11日の深夜0時過ぎ、渋谷署前の路上でうろつく男を捜査員が職務質問したことで呆気なく実現した。所持金は100円玉3枚、50円玉2枚、1円玉4枚--合計304円だった。

 取り調べで犯人は「犯行のヒントはテレビや映画、特に『ザ・ガードマン』を参考にした」と供述。

 また、正寿ちゃんの靴を所持していた理由については「吉展ちゃん誘拐殺人事件の犯人が身代金取引の際に被害者の靴を使ったことを知っていたので、持ち歩いていた」と述べた。先行する事件を“教材”にしていたのだ。

 犯人が誘拐を夢想し始めたのは、長崎での鬱屈した日常が発端だった。

 昔の知人にバカにされ続ける日々の中で、恐ろしい願望が膨らんでいく。標的として女優や女性歌手の名前を100人以上ノートに書き連ねるなど、妄想はやがて具体的な計画へと変貌した。

 正寿ちゃんが狙われたのは、父親が質屋を営んでいたからだ。犯人は事件の9日前から恵比寿東公園で野宿し、機会をうかがっていた。

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「有名芸能人のように豪華な家で暮らしたい」

 男児を殺害した「犯人の正体」とはーー事件の詳細は「以下のリンク」からお読みいただけます。

(「文春オンライン」編集部/Webオリジナル(外部転載))