和久田麻由子を起用する日テレ、上垣晄太朗をゴールデンMCに抜擢したフジ…今春の改編で見えた「アナウンサー戦略」の違い
今春は小澤陽子、勝野健、竹内友佳の退職が報じられたフジテレビだけでなく、日本テレビの岩田絵理奈、ABCテレビの増田紗織、NHKの和久田麻由子らの退社が相次いで報じられた。
なかでも異例なのが、退社直後にもかかわらず日本テレビの看板番組『踊る!さんま御殿!!』『ぐるナイ』に続けて出演した岩田絵理奈だ。かつてなら「他局出演は自粛」が暗黙のルールだったが、日テレは円満退社をアピールするかのように、岩田をタレント枠で積極起用している。さらに同局はNHK退社直後の和久田麻由子を新報道番組に起用。アナウンサー業界に大きな変化が生まれつつある。
後編では、フジテレビを退社したアナウンサーや宮司愛海、上垣晄太朗、さらにTBSやテレビ朝日の動きも含め、民放各局の戦略と個人の決断をさらに掘り下げる。
前編記事『「わだかまりはないのか」と驚きの声…退社直後の岩田絵理奈を『さんま御殿』『ぐるナイ』に起用する日本テレビの本音』より続く。
退社直後のアナ起用が続く日テレ
次に和久田麻由子の報道番組起用について。
これはもう「今までの方針と同じ」「いかにも日テレらしい」と言っていいのではないか。
日本テレビは2018年3月でNHKを辞めたばかりの有働由美子を、同年10月から『news zero』のメインキャスターに起用した過去がある。さらに有働が退く2024年4月には同年3月で日本テレビを退社したばかりの藤井貴彦をメインキャスターに起用。ちなみに日本テレビは2025年1月スタートのバラエティ『X秒後の新世界』にも藤井を起用している。
2023年4月に新情報番組『DayDay.』の司会にNHKを退社したばかりの武田真一を起用したことも含め、退社直後の他局アナウンサーや、自局を辞めたばかりのアナウンサーを起用することへの抵抗は少ないのだろう。ここでも良い意味での視聴率ファーストというスタンスが徹底されている。
しかしこれは裏を返せば、「自局アナウンサーの評価が低い」ということだろう。アナウンス技術うんぬんではなく、「知名度や信頼感が足りず視聴率獲得が難しいから外部人材を起用しよう」という選択が見て取れる。
この戦略はテレビ朝日も同じで、むしろ先行していた。2011年3月、日本テレビを辞めたばかりの羽鳥慎一を同年4月から『モーニングバード!』に起用し、現在まで『羽鳥慎一モーニングショー』が放送されている。
また、『報道ステーション』のメインキャスターにも2021年6月にNHKを退社したばかりの大越健介を同年10月から起用。さらに『サタデーステーション』のメインキャスターにフジテレビ出身の高島彩、『有働Times』にNHK出身の有働由美子を起用し続けているほか、『サンデーステーション』にもフジテレビ出身の長野智子を起用していた。
奇しくも日本テレビとテレビ朝日は民放各局の視聴率トップを競い合う2局であり、数字優先で外部人材を起用していく方針にブレはない。もっと言えば、今春はバラエティ重視の日本テレビが土曜プライムタイムに報道番組をスタートさせるというテレビ朝日寄りの戦略を採ったことで、アナウンサーをめぐる全体の動きにも影響を及ぼしている。
上垣晄太朗アナをゴールデンに起用した背景
では昨年から激動の時を過ごすフジテレビはどうなのか。
今春、退社が報じられた小澤陽子、勝野健、竹内友佳に関しては、結婚や子育てなどのプライベートな事情によるところが大きく、近年はこの3人に限らずアナウンサーたちのワークライフバランスに対する意識が増している。
また、小澤は「何かを創造したい」とコメントしたように新たな挑戦への思いもあるという。昨年6月にフジテレビを退社した岸本理沙が「国内外の企業経営に関心を持った」などと語ったように、前向きなキャリアチェンジを図るアナウンサーが増えているのは間違いない。
さらに報道番組のエース格だった宮司愛海も今秋から海外留学することを発表している。ネットメディアは退社ばかり報じたがるが、フジテレビは局に残って結婚や子育てとの両立や、キャリア構築を目指すアナウンサーも多い。
そして今春のフジテレビにおける動きで忘れてはいけないのが上垣晄太朗の抜擢。上垣は入社3年目に入ったばかりの若手だが、今春は単独MCを務める音楽番組『STAR』がスタートしたほか、『みんなのKEIBA』で念願の競馬実況デビューを果たした。
とりわけ『STAR』はゴールデンタイムの放送であるにもかかわらず局アナが1人でMCを担うことに驚かされる。知名度や好感度の高いタレントとコンビを組むのではなく、まだ25歳の若手男性アナによる単独MCは異例中の異例と言っていいだろう。
もちろん制作費削減を求められる懐事情もあるが、フジテレビにとって上垣は「他のタレント以上に魅力的なMC」でもあり、局全体で推していこうという意図がうかがえる。事実フジテレビ関係者に話を聞くと、どの部署からも「上垣晄太朗を生かそう」というムードがあり、アナウンス室のメンバーからも大切な存在として扱われているのは確かだ。
「外部起用VS自局推し」の構図
さらにこのようなムードと扱いは、帯番組のメインを担う井上清華と堤礼実、若手の小室瑛莉子と原田葵ら女性アナウンサーからも感じられる。フジテレビは以前からアナウンサーのワークライフバランスやキャリア構築を支援する動きがあったが、昨年の騒動によってどこよりもアナウンサーに優しいテレビ局になりつつあるのかもしれない。
それはTBSも同様であり、かつて「メインキャスターは外部の人材ばかり」「若手アナは嫌気が差して辞める」などと揶揄されていたが、現在ではその多くを自局アナが担うように変わった。さらに『ラヴィット!』出演の効果もあって「好きなアナウンサーランキング」の男女上位を席巻するなど、民放随一の好感度を手に入れたことで“自局路線”に拍車がかかっている。
外部人材を積極的に起用する日本テレビとテレビ朝日、自局アナウンサーを前面に推すフジテレビとTBS。対照的なアナウンサー戦略はどちらが支持を集めていくのか。
いずれにしてもアナウンサー本人たちにとっては、自局に留まってキャリアを構築するもよし、退社して新たな挑戦をするもよし。看板番組で“局の顔”となる、海外留学する、フリーで収入増を狙う、一般企業に就職する、タレントや俳優を目指す……。
「『自分の頑張り次第でさまざまな道を選べる』というアナウンサーにとっていい時代になった」と言えるのではないか。
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