救急搬送の逼迫 安易な利用を抑制できるか
救急医療を守るためには、軽症者による安易な救急車の利用を抑制せねばならない。
乱用を防ぐには、「有料化」も視野に入るのではないか。
昨年の救急車の出動件数は全国で769万件、搬送された人は676万人だった。いずれも前年をわずかに下回ったが、10年前と比べると出動、搬送ともに100万件以上増えている。
救急体制の充実は、生活を守るうえで不可欠だが、現実には搬送者の半数は軽症者が占めている。小さな切り傷や、眠れないという理由で救急車を呼ぶ人もいる。
このままでは救える命も救えなくなる。国や自治体は、適正利用を呼びかけているが、十分な効果が上がっているとは言えない。
救急隊の負担を減らすため、搬送数が多い平日の日中だけ活動する「日勤救急隊」を配置する地域も増えている。
国は、救急車を呼ぶか迷った時、症状を伝えてアドバイスを受ける電話相談窓口「#7119」の利用を促している。2024年度の相談件数は245万件で、導入済みの自治体は今年度中に39都道府県にまで広がる予定だ。
それでも救急医療の逼迫(ひっぱく)が解消されなかった場合の対応も、今から考えておかねばならない。
昨年、茨城県は出動、搬送ともに24年比で5%以上減少した。増減が1%前後にとどまる自治体が多い中で、突出した数字だ。背景には県などが24年12月に徴収を始めた「選定療養費」がある。
緊急性が低い症状で救急車を呼び、大病院に運ばれた人からは、紹介状なしで受診した人と同様、原則7000円以上を病院に支払ってもらう仕組みだ。救急車の安易な利用を抑制するのに一定の効果があったことがうかがえる。
救急医療の現場でも有効な対策と受け止められているようだ。
長崎市内の3病院は7月から、同様の取り組みを始めるという。個々の病院が独自に選定療養費を徴収しているケースもある。
ただ、選定療養費の徴収は大病院への患者の集中を緩和することが本来の目的だ。軽症かどうかを見極める医師の負担が大きい上、地域や病院ごとに対応が異なるのは問題だという指摘もある。
国は、「#7119」のさらなる普及に努める一方、軽症者から選定療養費を徴収している病院が全国にどのくらいあるのか、きちんと調査することが重要だ。
本来は無料で使えるはずの救急車を、実質的に有料化していいのかは十分な議論が欠かせない。
