いよいよ「テレビは終わり」なのか…業界関係者が明かす「今春のテレビ改編」で起きている異常事態

写真拡大 (全5枚)

フジテレビ伝統の放送枠が消滅

例年4月2週目に入ると各局の新番組がスタートしていくが、今春は報道・情報番組の改編が目立っている。

その最たるところはフジテレビの『めざましテレビ』(月〜金曜5時25分)と『ノンストップ!』(月〜金曜9時)の放送時間拡大。3月30日から、前者は終了時刻を45分、後者は開始時刻を50分拡大した。

これによって『小川宏ショー』『おはよう!ナイスデイ』『とくダネ!』『めざまし8』『サン!シャイン』と61年間続いてきた情報・報道番組の放送枠そのものが消滅。特に「『めざましテレビ』という看板番組を最大限に生かそう」という狙いがうかがえる。

報道・情報番組はそれ以外でも、フジテレビの『SUNDAYブレイク』(日曜7時、3月29日スタート)、TBSの『上田晋也のサンデーQ』(日曜11時35分、5日スタート)、テレビ東京の『モーサテサタデー』(土曜10時、4日スタート)が今春から放送されている。また、フジテレビは春の改編に先駆けて2月からカンテレ制作『旬感LIVE とれたてっ!』(月〜金曜13時50分)の全国ネット放送枠を拡大していた。

これらだけでも十分大きな変化なのだが、今春はもう1つ特筆すべき新番組がある。それが日本テレビの土曜22時台で放送される報道番組。日本テレビが新たな報道番組を手がけるのは『真相報道バンキシャ!』(日曜18時)以来24年ぶりであり、局をあげた挑戦であることは間違いないだろう。

ところが3月4日の改編説明会で新番組が明かされたにもかかわらず、1か月以上もの時が過ぎ、4月2週目の10日にようやく番組名と出演者が発表された。

「宣伝すらできない」という異常事態

ちなみに今春まで土曜22時台で放送された音楽番組『with MUSIC』は2024年、月をまたぐ前の3月30日に事実上の初回が放送された(2024年4月〜2025年3月は土曜20時台の放送)。同番組は日本テレビにとって34年ぶりの純粋な音楽番組であり、今春の新報道番組同様に力が入っていたことは確かだ。

だからこそ“3月末のフライングスタート”というなりふり構わぬ戦略を採り、「他の新番組に先駆けてスタートすることで最大限の注目を集めよう」という狙いがうかがえた。

一方、1か月以上にわたって番組名や出演者すら明かされなかった今春の新報道番組は、そんな戦略からは考えられないほど出遅れている。土曜22時台は安住紳一郎と三谷幸喜がコンビを組む『情報7daysニュースキャスター』(TBS系)が君臨するにもかかわらず「宣伝すらできない」という状況は異常事態と言っていいかもしれない。

いったい報道・情報番組を取り巻く状況に何が起きているのか。なかでも長年、視聴率や放送収入で独走状態だった日本テレビは、なぜ大事な新番組で後手にまわってしまったのか。

SNSが普及した2000年代後半以降、「テレビはオワコン」「テレビ離れが止まらない」などと言われ続けてきたが、それはネットメディアのあおりや一部のアンチによるところが大きく、実際は最大級の話題であり続け、広告評価の高さなど、影響力はまだまだトップだった。

ところが今春の改編によって「いよいよ取り返しのつかないところに足を踏み入れてしまった」という声が業界内外であがりはじめている。では今春の改編は何が問題視され、なぜ取り返しがつかないと言われるのか。

民放各局のテレビマンや制作会社、フリーの制作スタッフ、広告代理店マン、芸能事務所のマネージャーらからヒアリングした話を交えて、どこにも忖度せずにその本質を掘り下げていく。

2年前の日テレに追随した編成

まず『めざましテレビ』と『ノンストップ!』の放送時間拡大は「看板番組を有効活用する」と言えば聞こえがいいが、実際は台所事情の苦しさにほかならない。

放送時間を拡大して番組を1つ減らせば、出演者、スタッフ、セット、機材、その他の素材などで制作費が削減できる。最後の番組となった『サン!シャイン』で言えば、メインキャスターの谷原章介、スペシャルキャスターの武田鉄矢、カズレーザー、杉村太蔵、日替わりのコメンテーター、気象予報士、リポーター、ニュースごとの専門家らが不要になった。

さらに、ストレートニュースを繰り返し、広告関係のPRイベントや自局番宣などのエンタメコーナーを増やせば、あまり制作費はかからない。

また、それぞれの放送時間は『めざましテレビ』が4時間5分(『めざましテレビ全部見せ』を含む)、『ノンストップ!』は2時間30分と長く、ファンですらすべて見ることは至難の業。しかも拡大された『めざましテレビ』8時台と『ノンストップ!』9時台は見分けがつかないほど扱う内容が似ている。確信犯的な水増しであり、「もうこれ以上は再放送か、放送空白時間を作るしかない」というレベルまで追い込まれたように見えてしまう。

ただ、これは今春のフジテレビだけではなく、業界トップの日本テレビが3年前の2023年春に実施していた編成。『ZIP!』の終了時刻を1時間拡大し、『スッキリ』と『バゲット』の放送枠を合体させて番組を1つ減らしていた。

さらに唯一、突き抜けたお笑い路線で支持を集めていた『ラヴィット!』(TBS系、月〜金曜8時)も今春から主婦向けの内容を増やして不興を買っている。

番組表全体を見ると、報道・情報番組以外は、その『ラヴィット!』、『ヒルナンデス!』(日本テレビ系、月〜金曜11時55分)、『ぽかぽか』(フジテレビ系、月〜金曜11時47分)、テレビ朝日の『徹子の部屋』(月〜金曜13時)、『相棒』などのドラマ再放送がある程度。早朝5時から夜の19時までテレビそのものがニュースメディア化している。

改編期ごとに進むニュースメディア化

その“テレビのニュースメディア化”こそ取り返しがつかない問題と言っていいだろう。「テレビはニュースしかない」というイメージを与えかねないこと、「時計代わりに付けっぱなしの人や、働いていない高齢者がメインターゲット」という現実を受け入れたところに事の深刻さがうかがえる。

しかもそれは休日の土日にも及び、今春にトーク番組『ボクらの時代』が報道・情報番組『SUNDAYブレイク』に、『アッコにおまかせ』がより情報番組の要素が濃い『上田晋也のサンデーQ』(TBS系、日曜11時35分)に変わった。

近年の流れを振り返っても、1年前に『サタデーLIVE ニュース ジグザグ』(読売テレビ・日本テレビ系、土曜11時55分)がスタート。『シューイチ』(日本テレビ系、土曜5時55分、日曜7時30分)が日曜だけでなく土曜の放送もスタート。『ワイド!スクランブル サタデー』(テレビ朝日系、土曜11時30分)がスタート。また、平日朝の報道・情報番組『グッド!モーニング』(テレビ朝日系)が2年前の春に土曜、1年半前の秋に日曜に拡大したことを見ても、ニュースメディア化の進行がわかるだろう。

特に深刻なのは、休日で最も視聴者が多い土日のゴールデン・プライムタイムにも、それが及んでいること。

1年前にトーク番組『だれかtoなかい』の放送枠が情報番組『Mr.サンデー』(フジテレビ系、日曜21時)の拡大で埋められ、今春も日本テレビが22時台の報道番組をスタートさせる。既存の『池上彰のニュースそうだったのか!!』(テレビ朝日系、土曜20時)、『サタデーステーション』(テレビ朝日系、土曜20時54分)、『有働Times』(テレビ朝日系、日曜8時56分)も含め、朝昼だけでなく夜も春・秋の改編期を経るごとにニュースメディア化が進んでいることがわかるのではないか。

・・・・・・

【つづきを読む】バラエティを見限り報道番組へシフト…業界トップ「日テレ」の方針転換で見えたテレビ業界の「深刻な現状」

【つづきを読む】バラエティを見限り、報道番組へシフト…業界トップ「日テレ」の方針転換で見えたテレビ業界の「深刻な現状」