昇進だけでは描けない 企業のキャリア開発に残る古い前提
企業が従業員のキャリアに向き合い始めている。だが、その中身はまだ過渡期にあるようだ。株式会社月刊総務の調査によると、キャリア開発に取り組む企業は約6割に達した。一方で、その多くが従来型の仕組みに依存している実態も浮かび上がっている。
具体的な施策では、上司や人事によるキャリア面談が65.8%で最多となり、OJT(On-the-Job Training=職場内訓練)やメンター制度が53.9%で続いた。いずれも職場内で完結する手法であり、6割の企業が取り組みを社内中心で進めている。目的も適正配置や人材活用の最適化が65.8%と最も多く、企業側の都合が色濃く表れている。
対象となる層にも偏りがある。中堅社員が80.3%、新入社員や若手層が71.1%と重視される一方で、シニア層への対応は進んでいない。さらに、管理職以外のキャリアパスについては、特別な支援を行っていない企業が34.2%にのぼる。専門職としての道を提示している企業は27.6%にとどまり、昇進を前提とした設計から抜け出せていない状況が見える。
制度面の活用も進んでいない。職務経歴やスキルを整理するジョブカードを知らない総務担当者は44.1%に達し、体系的な支援施策であるセルフ・キャリアドックも半数が認知していない。実施率は1.6%にとどまり、制度の存在が現場に届いていないことがうかがえる。
国の支援策についても同様で、よく知っていると答えたのは7.9%に過ぎない。助成金は手続きの負担が重く、活用しきれないという声もある。企業単独での取り組みには限界があり、外部資源の活用が進まない構造が課題として残る。
調査は2026年2月12日から19日にかけて、総務担当者127人を対象に実施された。数字が示すのは、制度の有無ではなく設計思想の問題だ。多様な働き方が広がるなかで、昇進以外の道をどう描くか。企業のキャリア開発は、次の段階を問われている。
