愛犬・ゴールデンレトリバーのBEARくんと。いまはビデオ通話で顔を見る

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 UAEアラブ首長国連邦の中心都市・ドバイに2022年から移住していたMALIA.(43)親子を襲った、戦争の火の粉――。前編記事【ミサイル音や迎撃音が響く中、“戦時下”のドバイ住民は意外と平然…それでもMALIA.親子が日本帰国を急いだ決定打】では、突然の開戦と空港の爆破、ドバイを飛び立つまでの緊迫の日々について語ってもらった。

 続く後編では、3月8日にようやく帰国を果たしたMALIA.を待ち受けていた思わぬ事態について語る。

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 発端となったのは、自身の帰国と無事をSNSで知らせたことだった。MALIA.は三男、そして現地で出会った雄のゴールデンレトリバー“BEAR”と共にドバイで暮らしていたのだが、そのBEARについて、

《置き去りですか?》

《もちろん一緒ですよね》

 と、非難めいたコメントが相次いだのだ。

愛犬・ゴールデンレトリバーのBEARくんと。いまはビデオ通話で顔を見る

日々の「ビデオ通話」も

「BEARがいまもドバイにいるのは事実。でも、今もドバイが私たちの“本拠地”で、もちろん戻ることが前提です。ドバイの家を引き払って日本に帰ってきたわけではありませんし、そもそも、日本で2週間の春休みを過ごしたらドバイに帰るという予定でした(※前編参照)。それなのに、“置き去り”という言葉を使われて、まるでUAEの砂漠に置いてきたかのように言われたのは本当に心外でした」(MALIA.、以下同)

 ドバイの自宅には、現在もドライバーやメイドなどBEARの面倒も見てくれるスタッフが常駐していると説明する。

「私たちが不在であっても、BEARはきちんと世話してもらっています。ドッグパークで散歩をしてもらって、のびのびといい環境で暮らしています。その様子は毎日、朝昼晩と動画や写真が届きますし、ビデオ通話で顔も見ています」

「家族」の心の安定を

 もし仮に“日本に連れて帰る”という選択をした場合でも、厳しい日本の検疫をクリアする必要があった。マイクロチップを埋め込み、狂犬病ワクチンを30日以上の間隔で2回接種したうえ、狂犬病抗体値検査では「採血後180日間の待機」――つまり動物検疫所での係留検査が命じられるのだ。

「日本は安全だし、検疫がしっかりしているから狂犬病がないということは、本当に素晴らしいこと。それを非難するつもりはまったくありません。けれども、今、本当にドバイという場所の危険度が上がっていて、“BEARの命は危機にさらされる”という状況であれば話は別ですが、今回の帰国にBEARの同伴はありえませんでした。もし一緒の帰国を望んだならば、彼は狭いゲージに入れられて、飛ぶかわからない飛行機の貨物室に何時間も閉じ込められて神経をすり減らすことになる。たとえ順調に日本に着いたとしても、入国のためにそこから何か月も空港の施設に閉じ込められるわけです。それが、どれだけBEARのストレスになるか。私を非難する人たちが本当に彼の身を心配するなら、彼の心の安定まで考えて発言してほしい」

 今回、MALIA.は帰国予定がありスケジュールを早めたわけだが、実際のところ、ドバイに移住している日本人や外国人の6割ほどは現地に残っている。

「楽観視するつもりはありませんが、ドバイに対する危険度について、日本と現地とでは、やはり温度差を感じます。“ドバイが攻撃を受けた”という第一報の衝撃が大きすぎたせいかもしれないですね。BEARは大事な家族。私たちはいずれドバイに戻りますし、また一緒に暮らしますから、どうぞご心配なく」

帰国翌日から通学

 さて、三男とふたり無事帰国となったMALIA.だが、すっかり生まれ故郷での日常を取り戻している。

「息子は日本の都立小学校にも籍を置いており、日本滞在中にはそこに通っています。事前に担任の先生に“帰国が1週間早まったのですが、早めに通学してもいいですか?”と電話をしたら、“大丈夫なんですか?無理しないでくださいね”と言って下さいました。結果、3月8日の日曜日の19時に成田に到着して、翌日の月曜8時には“行ってらっしゃい”と息子を送り出しました(笑)。お勉強してきなさい、というか遊んでおいで、という感じですね。やっぱり同じ年の子と関わりを持つことが大切なので、“みんなと会っておいで”って」

 ドバイに移住しても、日本とのつながりは持ち続けているようだ。

「日本では日本の楽しみ方があります。今、私の長男も次男も長女も孫も、みんな日本にいますし、ときどき集まったりしています。先週は長男の試合をみんなで見に行ったんですよ」

 長男とは、は横浜FCに所属するJリーガーの新保海鈴。海鈴には子どもがいるので、MALIA.は43歳にして「2人の孫を持つおばあちゃん」でもあるのだ。「日本にいると色々と動いてしまって逆にものすごくハード」とMALIA.は笑う。

愛する家族に囲まれ

 いつもとは違う状況での帰国となった今、家族で日本いることについてどう思っているのか。

「今回のことは、平和について考えるきっかけになりました。当たり前だったことが、実は当たり前ではなかったんだって。世界のどこかで紛争が起こっているということは知識としてあるけれど、自分自身が生きているうちに“戦争”を実感することなんて、あると思っていないじゃないですか」

 ミサイルが飛ぶ音が聞こえてきたときは、「現実じゃなく夢なのでは」と感じたとMALIA.。

「ドバイで警報を聞いた時、“何かあったら、そうなっただけのこと。人生に悔いはない”と思った自分がいました。でも、それってすごく自分勝手な発想だった。私には父も母もいるし、子どもも4人いて、長男にはお嫁さんもいて、孫だって2人いる。そんな守るべき家族がいるのに、何を考えているんだ、と反省しました。あの時は空港にもいけない、外にも出られないという状況。そんな中にいる自分を納得させるために、自分に言い聞かせていたのかもしれませんね」

 未だ出口の見えない、アメリカ・イスラエルとイランの“戦争”。世界中を混乱させ、当時国以外の国も事態の収拾に躍起になっている。そんな渦中に巻き込まれたMALIA.には、改めて「家族という存在の大切さ」を実感する機会になったようだ。

取材・文/蒔田稔

デイリー新潮編集部