宇宙船から撮影した美しい地球の画像を公開 NASA「アルテミスII」月周辺へ向け順調に飛行中
アメリカが主導する有人月探査計画「Artemis(アルテミス)」で初めての有人ミッションとなる「Artemis II(アルテミスII)」。NASA(アメリカ航空宇宙局)は、月へ向かう軌道に乗った有人宇宙船「Orion(オリオン、オライオン)」で撮影された、美しい地球の画像を公開しました。
宇宙船の窓越しに撮影された美しい地球の姿

こちらはそのうちの1つです。太陽を背に輝く地球、つまり地球の夜側を撮影したもので、縁に沿って広がるオーロラが地球の右上と左下に写っているのがわかりますでしょうか。
また、宇宙空間の塵に反射したかすかな光である黄道光(※)も地球の右下に見えており、深宇宙ならではの息を呑むような美しさを感じます。ちなみに、黄道光の付近で輝いている明るい星は金星です。
※…黄道に沿って分布する惑星間空間の塵(惑星間塵)によって散乱した太陽光。条件が良ければ地球上からも観察・撮影できます。

次の画像は、Orion宇宙船の窓から少し離れて撮影された地球です。船内が一緒に写っていることで、クルーには地球がどのようなスケール感で見えているのかを私たちも実感することができます。
これらの画像は、前日の月遷移軌道投入(TLI)を終えた後に、コマンダーを務めるNASAのReid Wiseman宇宙飛行士が撮影しました。NASAによると、クルーの精神状態は非常に良好であり、有人の深宇宙飛行という歴史的なミッションのなかで、日々宇宙船から新しいことを学習しているということです。

1回目の軌道修正が不要なほど高い飛行精度
NASAはアメリカの現地時間2026年4月3日にミッション中の定例となる記者会見を開催しました。NASAによると、Orion宇宙船はすでに地球から10万マイル(約16万キロメートル)以上離れていて、月までの残り約15万マイル(約24万キロメートル)の往路を順調に飛行しています。
特筆すべきは、Orion宇宙船の非常に高い飛行精度です。
本来、ミッション3日目には月への往路で軌道を微調整するための最初のエンジン噴射であるOTC-1(Outbound Trajectory Correction-1)が予定されていました。ところが、前日のミッション2日目に行われたTLIにおける推進剤の消費量が予測値の5パーセント以内に収まるなど、Orion宇宙船の推進システムやナビゲーションシステムが極めて良好に機能したため、軌道のズレはほとんど発生していません。そのため、OTC-1は不要となり、スキップされることになりました。これは、Orion宇宙船の高い性能を示す証と言えるでしょう。
ささいな不具合はあれどシステムは良好
深宇宙での初の有人飛行ということで、いくつかの小さなトラブルも報告されていますが、NASAによればミッションの進行に影響を与えるものはありません。
たとえば、推進剤タンクを加圧するヘリウム供給系統の一部を隔離する措置が取られましたが、システムには十分な冗長性が確保されており、残りのミッション期間でのエンジン噴射はヘリウムによる加圧を必要としないモード(ブローダウンモード、推進剤タンク内の自己圧力で推進剤を押し出す方式)で実行できるため、影響はないと報告されています。
また、軌道投入直後の船内の温度はクルーにとって少し肌寒い約18℃だったため、ヒーターやファンを使ってより快適な約22℃に調整されました。加えて、二酸化炭素の除去装置が効率的に働くためには適度な湿度が求められるため、船内の湿度は25パーセント前後に保たれています。
さらに、船内で運動器具(フライホイール)を使用すると宇宙船の姿勢制御に影響を与えるのではないかと懸念されていましたが、問題はないことが確認されました。この他にも、飲料水ディスペンサーのバルブを閉めた後にわずかに水が滴る仕様への対応や、宇宙飛行士のタブレット端末の1つでのトラブルなどが起きていますが、これらはテスト飛行の想定内としてトラブルシューティングが進められています。
ミッション4日目の予定と月への接近
続くミッション4日目には、スキップされたOTC-1を統合した2回目の往路での軌道修正噴射となるOTC-2が予定されています。また、月面に最接近するミッション6日目に向けて、観測予定の地理的ターゲットの事前確認や、窓から天体を撮影するための時間が特別に設けられる予定です。
なお、Orion宇宙船はミッション6日目に月の裏側へと回り込み、月面に最接近します。会見時点でNASAは、ミッション中の地球からの最大到達距離は約25万2757マイル(約40万6773キロメートル)になると予測しています。月への往路は順調に推移しており、人類が半世紀ぶりに直接目にする月の裏側の景色に期待が高まります。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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