地方に住む高齢の親は、年金が少なく貯金もないそうです。唯一の財産として持ち家があるのですが、生活保護を受給できますか?
持ち家があると生活保護は受けられない?
生活保護制度は、生活に困窮する方に対し、人により異なる困窮の程度に応じるかたちで必要な保護を実施し、健康で文化的とされる「最低限度の生活」を保障し、その自立を助長することを目的としています(生活保護法1条)。
そして保護は、生活に困窮する者が、資産や能力などにおいて最低限度の生活を維持するために使うことを要件としていますので(生活保護法4条1項)、生活保護を受給するには、不動産については、売却することが原則です。
しかし、不動産は流動性に乏しく現金化が容易ではないし、住居は生活基盤の基本ですので、処分価値が利用価値に比して著しく大きくなければ、居住用不動産を売却する必要はありません。
一方、居住用不動産でない場合や居住用であっても処分価値が利用価値に比して著しく大きい場合は、売却する必要があります。
処分価値が利用価値に比して著しく大きいとは
処分価値が利用価値に比して著しく大きいか否かの判断が難しい場合、各実施機関が設置するケース診断会議等において、処分価値、処分の可能性、地域の低所得者における持ち家状況などのほか、住民意識や世帯の事情等を勘案し、総合的に検討されます。
ケース診断会議等の検討に付する目安としては、当該実施機関における最上位級地の標準3人世帯(33歳男、29歳女、4歳子)の生活扶助基準額に同住宅扶助特別基準額を加えた額のおおむね10年分とされています。
具体的な金額の目安は、市区町村により異なります。仮に処分価値が3100万円(東京都)とすると、持ち家の処分価値がこの金額を越えなければケース診断会議等に付すこともなく、保有が認められる可能性が高いといえます。
「要保護世帯向け不動産担保型生活資金」(リバースモーゲージ)
65歳以上の独居・夫婦のみの世帯は生活保護を利用する前に、「要保護世帯向け不動産担保型生活資金」(リバースモーゲージ)の利用を求められます。
都道府県社会福祉協議会が実施する「要保護世帯向け不動産担保型生活資金」は、要保護者に対して当該不動産を担保に生活資金の貸し付けを行うものです。利用を求められるのは資産価値が不動産鑑定士の時価評価額で、先順位に担保権等は設定されていない場合です。
この制度を利用すると、生活費として毎月一定額(生活扶助額の1.5倍以内から世帯の収入充当額を差し引いた金額)の融資を限度額(土地および建物の評価額の70%程度。集合住宅の場合は50%)まで受けることができます。連帯保証人は、不要です。貸付利率は年3%、または長期プライムレートのいずれか低い利率となっています。
貸付期間は、借受人の死亡時、または貸し付け元利金が貸付限度額に達するまでの期間です。貸付限度額に達した後は、生活保護の利用が可能です。
まとめ
持ち家の処分価値が利用価値に比べ著しく大きくなければ、持ち家を手放さなくとも生活保護を利用できます。ただし、65歳以上の独居・夫婦のみの世帯は生活保護を利用する前に、「要保護世帯向け不動産担保型生活資金」(リバースモーゲージ)の利用を求められます。
持ち家があるからといってすぐに生活保護をあきらめるのではなく、資産の評価や利用できる制度を確認したうえで、早めに自治体や福祉事務所へ相談しましょう。
出典
厚生労働省 生活保護制度
厚生労働省 生活保護法
厚生労働省 社会保障審議会-福祉部会 生活保護制度の在り方に関する専門委員会 第11回(平成16年5月18日) 資料2 II 参考資料2 不動産の保有の考え方
社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会 要保護世帯向け不動産担保型生活資金
執筆者 : 新美昌也
ファイナンシャル・プランナー
