記事のポイント
フィラデルフィア・クリームチーズはGoogle検索広告を廃止し、リテールメディアに予算を振り向けた。
同ブランドは2025年に7つのリテールメディアネットワークに約49万5000ドルを投じた。
ケリーゴールドは従来型検索を維持しつつ、エージェント型検索およびAI検索を追加している。


クリームチーズブランドのフィラデルフィア・クリームチーズ(Philadelphia Cream Cheese)は、少なくともGoogle上の見込み客に対する検索広告への出稿を停止した。

食品大手のクラフト・ハインツ(Kraft Heinz)傘下のこのCPG(Consumer Packaged Goods:消費者が頻繁に購入する商品群)ブランドは、過去1年のあいだに従来の検索広告費を段階的に削減し、予算をリテールメディアやより広範なチャネルに振り向けたと、クラフト・ハインツでフィラデルフィア・クリームチーズのマーケティング担当バイスプレジデントを務めるマディ・ジングル氏は述べた。

「人々はGoogleに『クリームチーズ』と入力していない」とジングル氏はDigidayに語った。

「我々がめざしているのは、単にブランド名の検索キーワードを購入するのではなく、実際のレシピや使用シーンにもっと深く組み込むことだ」。ジングル氏は、同CPGブランドがリテールメディアにどれだけ支出しているかについては明言を避けた。

断片化された検索環境



これは計算された賭けである。オンラインで検索できる場所はかつてないほど増えている。

クリームチーズのような商品の場合、買い物客はGoogleで検索する可能性は低く、食料品店のWebサイトから検索をはじめる可能性のほうが高い。それゆえのリテールメディア戦略なのだ。

「検索している人でさえ、自分が何を探しているかすでにわかっているのだから、そこから新たな活動を生み出すことは実際には難しい」と、メディアエージェンシーのノーブル・ピープル(Noble People)でメディアプランニング責任者を務めるニティン・シンハ氏は語った。

代わりに、フィラデルフィア・クリームチーズはECとリテール検索に投資している。

「なぜなら、それは我々にとって極めて購買ファネルが低く、直接購入につながるからだ」とジングル氏は述べた。たとえば、誰かがWalmart+アプリで「チーズケーキ」と検索した場合、自社製品が検索結果の一番上に表示されるようにキーワードを購入する。

リテールメディアへの支出実態



広告インテリジェンスプラットフォームのメディアレーダー(MediaRadar)によると、フィラデルフィア・クリームチーズは2025年、7つのリテールメディアネットワークに約49万5000ドル(約7425万円)を支出した。支出の約29%は、中西部の食料品チェーンであるマイヤー(Meijer)の広告に充てられた。

また、メディアレーダーは、2025年のフィラデルフィア・クリームチーズのGoogle有料検索広告が確認できなかった。

デジタルファーストの広告インテリジェンスプラットフォームであるアドクラリティ(AdClarity)のインサイトによると、フィラデルフィア・クリームチーズは2025年に米国のデジタル広告に合計3180万ドル(約47億7000万円)を費やす予定だ。予算のほぼ半分がCTVに、残りのほぼ半分がソーシャルプラットフォームに充てられる。

Google検索離れは業界全体の傾向



リテールメディアネットワークは、業界、特に店頭での存在感に依存するCPGブランドにとって人気者となっている。

パフォーマンスマーケティングエージェンシーのマーカシー(Markacy)によると、断片化するデジタル環境においてよりよい成果を得るため、ブランドはGoogle検索の広告費の少なくとも一部を、ブランド認知チャネルやリテールメディアネットワークに振り向ける傾向が強まっている。

しかし、そうは言っても、同社がGoogleの終息を決定づけようとしているわけではない。マーカシーはクライアントに対し、従来型検索のための広告費を確保するよう推奨している。

「従来型の検索はまだ成長していると考えている。それが興味深いところだ」と、マーカシーの共同創業者兼共同CEOであるクリストファー・ジョーンズ氏は語った。

乳製品売り場をさらに進むと、バターブランドのケリーゴールド(Kerrygold)も同様の考え方を持っている。ケリーゴールドのグローバルブランドディレクターであるブライアン・クリアー氏によると、同ブランドは既存の従来型検索とリテールメディアの上に、エージェント型検索およびAI検索を重ねている。

「エージェント型検索に多くの注意を払っているのは間違いないが、従来の検索に関して行ってきたことの一部を廃止するつもりはない」とクリアー氏は語った。

断片化する検索とAI対応の模索



検索業界の状況に亀裂が生じていることは疑いない。人々はレディット(Reddit)からリテーラーのWebサイト、そしてもちろん大規模言語モデル(LLM)まで、あらゆる場所で製品を調べるようになり、Googleはもはや唯一の選択肢ではなくなっている。

とはいえ、ChatGPTがGoogleに取って代わるわけではない。LLMがインターネット上の多数のソースから情報を引き出すなか、マーケターはあらゆる場所に同時に存在できるよう、可能な限りメディア戦略を分散させている。

アドウィーク(Adweek)によると、オーディオブランドのボーズ(Bose)は2025年夏、支出先を決定するためのAIモデル構築テストの一環として、米国市場の半分で有料検索を一時停止した。

AI検索の攻略法に関しては、フィラデルフィア・クリームチーズもまだ解を見いだせていない。

当面は、ECとリテーラー重視の検索が確実な選択肢だとジングル氏は述べ、「デジタルエコシステム全体で直接つながり、購買に直結させ、消費者についてより深く理解し、背後にあるデータを取得できるようになっている」と付け加えた。

[原文:Philadelphia Cream Cheese pulls dollars from search - people aren't Googling 'cream cheese']

Kimeko McCoy(翻訳、編集:藏西隆介)
Image via Philadelphia Cream Cheese /YouTube