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高齢者のひとり暮らしは、健康管理やお金のことなど数多くの不安があります。しかし、これまで70年近くにわたってひとり暮らしを続けてきた88歳のイラストレーター・田村セツコさんは、「ひとりで生きることは、寂しさや孤独や、認知症の不安を抱きしめながら、それでも楽しんで暮らす冒険です」と前向きに語っています。そこで今回は、田村さんの著書『最後までひとり暮らし』から抜粋し、再編集してお届けします。

【写真】セツコさん「わたしにとってのひとり暮らしの贅沢とは、自由で、マイペースでいられるということなんです」

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ひとり暮らしは、人生でいちばん自由な贅沢です

ある雑誌で、「ひとり暮らし特集」というのをやったことがあるそうです。

インタビュアーの女性が、作家さん、アーティストさん、漫画家さん、会社員の方まで、いろんなひとり暮らしの人の家を訪ねて回って、「ひとり暮らしってどうですか?」って、同じ質問をしていったんですって。

するとね、みなさん、口をそろえたみたいに同じことをいったみたいなの。

「ひとりは楽しいですよ」「気楽でいいですよ」「ひとりって最高」って。

「楽しい、楽しい」という答えばかりだったそうよ。

これだけを聞いていたら、「ああ、世の中のひとり暮らしはバラ色なのね」と思ってしまいそうよね。

それでね、たまたまわたしのところにも、そのインタビュアーさんがいらしたんですよ。

みなさんと同じように、「田村さんにとって、ひとり暮らしってどうですか?」と聞かれたの。

そのとき、わたしがなんて答えたかというと―――

わたしにとってひとり暮らしは……

わたしだけが、「ひとり暮らしは『贅沢』です」といったらしいのよ。

あとで、その方にいわれて、「あら、わたしそんなことをいったの?」と、自分でも、ちょっとびっくりしたくらいなんだけど(笑)。


『最後までひとり暮らし』(著:田村セツコ/明日香出版社)

でも、考えてみたら、やっぱりわたしにとってひとり暮らしは「贅沢」なんですね。

取材してくださったその女性も、実はご自分がひとり暮らし。

だからこそ、「楽しいです」「気楽です」という答えとともに、「贅沢です」といういい方が、とても新鮮で面白く聞こえたようなの。

「自由で、マイペースでいられる」ということ

その話のつづきなんだけど。

「贅沢って発想が面白いですね。ぜひ、その話を詳しく聞かせてください」と、改めてインタビューをしてくださったの。

わたしのいう贅沢というのはね、高級ホテルに泊まるとか、ブランド物をたくさん持つとか、そういうお金のかかる贅沢じゃないのね。

わたしにとってのひとり暮らしの贅沢とは、「自由で、マイペースでいられる」ということなんです。

誰にも合わせなくていい。

起きる時間も、寝る時間も、自分で勝手に決めていい。

ごはんも、「今日は簡単におにぎりでいいや」と思えばそれでいいし、「ちょっと手をかけてスープでも作ろうか」と思えば、夜中だって作っていいの。

「誰にも合わせなくていい」、この贅沢はお金では買えない

テレビをつけっぱなしで、ぼんやりする日があってもいいし、本を読み始めたら止まらなくなって、気がついたら午前様でも、誰にも文句をいわれない。

そういう、誰にも咎められない「自分勝手さ」。

それをわたしは、贅沢といっているのよ。

ちょっと変わったいい方かもしれないけれど、ひとり暮らしって、そういう自由でマイペースでいられる贅沢が、そのまま「楽しい」に直結していると思うんです。

脳にとってもとびきりのごちそう。栄養になっている気がします。

※本稿は、『最後までひとり暮らし』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。