たばこのポイ捨てがダメな理由が科学的に完璧に判明
道端や公園で見かけるたばこの吸い殻。「まあ小さいし、そのうち自然に分解されるでしょ」と思っていませんか。それ、やっぱり大きな誤解ですよ、と科学的に突きつけられました。
ナポリ・フェデリコ2世大学の農業学部教授であるGiuliano Bonanomi氏を中心とする研究チームが、吸い殻を10年にわたって追跡した研究を学術誌『Environmental Pollution』に発表しました。
その結果、吸い殻のフィルターは完全に消えることなく、10年後も土の中にマイクロプラスチック状の残留物として残り続けると明らかになりました。
さらにたばこが持つ毒性に関しては、想像以上に「しぶとい」実態も浮かび上がってきたのです…。
土に埋まったたばこはどうなるのか?
そもそもたばこのフィルターって、何でできているか知っていますか?
これは「酢酸セルロース」というプラスチックの一種です。ざっくりいうと、天然の植物繊維(セルロース)を化学的に改造し耐久性を高めたもので、顕微鏡で見ると超密集した極細繊維の塊であることがわかります。
この構造が厄介で、土の中の微生物にとっても「分解しにくい素材」なのです。バクテリアや菌類がフィルターを分解しようとすると、酢酸セルロースには微生物が必要とする窒素がほとんど含まれていないため、周囲の土壌から窒素を「借りてくる」必要があります。
結果として、周りの植物や生物が使えるはずだった栄養素が奪われ、まず土壌の生態系が乱れます。
さらに吸い殻まみれの土では、フィルターを何とか分解できる「特殊部隊」みたいな微生物だけが生き残り、普通のバクテリアや菌類が消えてしまう。つまり、土壌の生物多様性まで損なわれるといいます。
毒は「2段階」で出る
今回の研究で注目すべき発見が、たばこが持つ毒性の「2段階ピーク」です。
まず吸い消した直後は毒性が最も高く、ニコチンや重金属などが雨水に溶け出します。海洋汚染指標として広く使われる細菌「アリイビブリオ・フィッシェリ」への実験では、吸い殻の浸出液をわずか7%以下の濃度に薄めただけで、この細菌に50%の生育阻害が確認されています。
ところが、その後しばらくすると毒性は落ち着きます。「時間が経てば安全になる」と思いたいところですが…そうはなりません。分解が進む5年前後のタイミングで、一部の毒性指標が再び上昇するという「中間ピーク」が観測されました。
これはそれまでフィルターの繊維に閉じ込められていた有害物質が、繊維の崩壊とともに新たに放出されるためと考えられています。
その後また落ち着くものの、10年後でも毒性はゼロではなく、残留物は長期的に影響を与え続ける状態が続きます。
これはちょうど、古いゴミ袋が破れて中のゴミが溢れるようなイメージです。フィルターが最初は有害物質をキャッチする「袋」として機能しているのに、それが破れ始めることで新たな汚染が起きるということです。
最後はマイクロプラスチックに
10年間の追跡では、フィルターの繊維が完全に消えることはなく、小さな断片となって土に残り続けました。いわゆるマイクロプラスチックです。
マイクロプラスチックの厄介さは、いろんなところで叫ばれている通り。食物連鎖に入り込み、植物や昆虫、鳥、そして最終的には人間の食卓にたどり着く可能性があります。
別の研究でも、2年間で吸い殻の質量の75%が失われたとされますが、これは「分解された」のではなく「細かくなった」というのが正確なところです。
「たばこをポイ捨てしないで」というマナーの呼びかけは昔からありますが、今回の研究はそれを科学的かつ決定期に裏付けた形です。
吸い殻は「消えない、毒を2回出す、マイクロプラスチックになる」。このトリプルパンチを知ったうえで、愛煙家のみなさまにおかれましては、より長くたばこを楽しめるようにご協力いただきたいものです。
Source: Environmental Pollution, HDblog.it, Phys.org, Il Sole 24 Ore

