Mrs. GREEN APPLE

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音楽シーンの頂点

「ミセス」ことMrs. GREEN APPLEの冠番組「テレビ×ミセス」が、4月からTBSでレギュラー化されることが発表され、話題を呼んでいる。日本レコード大賞三連覇、「NHK紅白歌合戦」の大トリ、カラオケランキング席巻――日本の音楽シーンの頂点に君臨する超人気バンドが、なぜいまバラエティの舞台に本格参入することになったのか。最近では「オールドメディア」と揶揄されることもあるテレビと、時代の最先端を行くMrs. GREEN APPLEが手を組んだ理由は何なのか。【ラリー遠田/お笑い評論家】

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【写真19枚】「3人ビジュ良し!」「ビジュ爆ミセス」……楽曲だけでなく“顔ファン”も多いミセス

 ミセスは今の音楽シーンの中でも特別な存在である。多くのタイアップ曲やヒット曲のおかげで子供から年配層まで幅広い世代に支持されているからだ。若者に人気のアーティストはほかにもたくさんいるが、思わず口ずさみたくなるような馴染みやすい楽曲を数多くリリースしていて、子供にも大人にも根強い人気があるのは彼らだけだ。

Mrs. GREEN APPLE

 音楽界ではサブスクが浸透して、CDを買う文化が衰退したこともあり、幅広い層に刺さるようなヒット曲は生まれにくくなった。そんな時代の中で、ミセスだけは「国民的人気バンド」と呼んでも差し支えないほどの圧倒的な人気を誇っている。

 テレビ局が彼らを起用した理由の1つは、この支持層の広さにあると考えられる。ミセスが一部の熱心なファンにだけ強く刺さる存在だったとすれば、地上波のレギュラー番組を任されることはない。もともとテレビは不特定多数を対象とするメディアである。ミセスや彼らの音楽の特徴である「大衆性」は、地上波テレビに向いている。

 一方、音楽が本業であるはずの彼らは、なぜバラエティに進出することを決めたのか。ミセスの大森元貴は番組サイドに対して「テレビが大好き」と語り、「自分たちがテレビからもらってきたワクワクやドキドキを今度は届ける側になりたい」という主旨のことを話していたという。

 ここには大森の表現者としての資質がよく表れている。彼は内向きに閉じた表現を追求する孤高の芸術家タイプではなく、なるべく多くの人に作品を届けようとするポピュラー音楽家タイプである。

純粋なテレビ愛

 楽曲制作においても、作品をどのように社会に流通させて、どのように受け取ってもらえるかということを突き詰めて考えている。純粋なテレビ愛を持っている彼は、テレビを宣伝の場としてではなく、自分たちの表現をより多くの人に広めるための場所として捉えているのだ。

 Mrs. GREEN APPLEの強みは、スター性と親しみやすさが両立していることである。際立った才能や優れた音楽性を持ちながら、ロックバンドらしい不良性や威圧感はなく、見た目も振る舞いも柔らかく洗練されている。そんな彼らの「感じの良さ」は、テレビタレントとしては大きな武器になる。

 今回、ミセスが出演するからといって音楽番組が作られるわけではない。近年は音楽番組では視聴率が取れなくなっている。むしろ「テレビ×ミセス」は潔くバラエティ路線に振り切っている。

 すでに明かされている情報によると、アーティストを招いてコラボ歌唱を披露したり、芸人と一緒にコントを演じたりする予定だという。このような歌あり、コントありの「王道バラエティ」は、「8時だョ!全員集合」「SMAP×SMAP」をはじめとして、昭和から平成の時代には数多く制作され、人気を博していたが、最近ではほとんど見られなくなっていた。「テレビ×ミセス」は、Mrs. GREEN APPLEという国民的アーティストの力を借りて、王道バラエティを新たに立ち上げるという挑戦的な試みなのだ。

「8時だョ!全員集合」の中心にはザ・ドリフターズがいた。「SMAP×SMAP」の中心にはSMAPがいた。いずれも一時代を築いた国民的な人気タレントだった。音楽界の頂点に立つミセスには彼らのあとを継ぐ資格は十分ある。音楽界の覇者となった彼らがバラエティの覇者となる日も近いのかもしれない。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部