記事のポイント Metaが広告主の素材をもとにAIで広告を自動改変し、ブランドと顧客の反発を招いている。 AIがモデルの体形や人種を改変する広告が出現し、ブランドの世界観を損なう懸念が広がる。 AI広告への業界の期待とユーザー意識にギャップがあり、広告の信頼性が問われている。
約1カ月前、英国のタイツブランド、スナッグ(Snag)の創業者兼CEOであるブリー・リード氏は、自社ブランドのソーシャル上での存在感について奇妙なことに気づいた。自らを「スナグラーズ(Snaglers)」と呼ぶ忠実な顧客たちが、スナッグから配信されている奇妙で不気味な広告について不満を漏らしはじめたのだ。そこに登場するモデルは、さまざまな体形を起用するスナッグの典型的なキャスティングとは異なり、より伝統的な細身のモデルを起用し、人工的な光沢を放っていた。その広告はAIのように見えた。しかしリード氏は、スナッグは、クリエイティブ制作のいかなる工程においても生成AIを使用しないことを誇りとしていると語った。スナッグの名の下に公開されるすべてのメディアは、実在するアーティストやフォトグラファー、クリエイターに対価を支払って制作している。調べてみると、それらの広告はMeta自体が、スナッグの既存の広告を素材として使用し生成したものだった。「我々のマーケティング予算の大半を投じているMetaの広告で、こうした問題が次々発生していると気づきはじめた」とリード氏はGlossyに語った。「たとえば、あなたのテキストがAIのトレーニングに使われていたり、アップロードした画像のイメージを大きく変えてしまうAI画像やAI動画などがあったりする。オプトアウトが必要なAI関連のコンテンツが増えていて、投稿するたびに、毎回それぞれオプトアウトしなければならない」。

オプトアウトしても止められないMetaのAI広告機能

リード氏は、Metaが提供するあらゆるAI機能をオプトアウトしたにもかかわらず、同社は広告主がプラットフォーム上で配信する広告の5%をAIで改変しはじめていると述べた。リード氏はGlossyに対し、こうした改変広告がブランド側と顧客の双方に不安をいただかせている引き起こしていると語った。彼女はGlossyにいくつかの広告のスクリーンショットを共有しており、そのなかには脚が3本ある女性の画像も含まれていた。

Meta広告の「Advantage+クリエイティブ」機能によって自動生成された広告のスクリーンショット

さらに問題なのは、AIによって改変された広告がモデルの体形をより大きい体形からより細い体形へ変えたり、黒人モデルを白人女性に置き換えたりしていた点である。「顧客は本当に嫌がっている」とリード氏は語った。「AIについて顧客からもっとも多く聞くのは、人々の仕事を奪っている点だ。ビジネスにとってよくないし、実在する人の身体的特徴を編集してしまう。もしそれが私の写真で、AIが私の体形を変えたら、とてもショックを受けるだろう」。

MetaやTikTokの広告プラットフォームで進むAI自動生成

アイスド・メディア(Iced Media)のチーフ・クライアント・オフィサーであるアシュリー・バンクス氏は、広告主の同意なしにAI生成広告が配信された例はほかに見たことがないと述べた。アイスド・メディアはMetaとTikTokの公式広告パートナーであり、ポーラチョイス(Paula’s Choice)、キールズ(Kiehl’s)、メイベリン(Maybelline)など幅広いブランドを担当している。「これらのプラットフォームでは、自動化されたコンテンツ制作へと確実にシフトしている」とバンクス氏は語った。「MetaとTikTokはいずれも、大量のクリエイティブ素材を自動構築するAIツールに多額の投資をしている。多くのAI機能は最初から自動的にオンになっており、それをオフにするには小さなメニューをいくつも手動で外さなければならない」。リード氏は、MetaのAIツールにおける自動オプトインも特に厄介な点だと指摘した。レディット(Reddit)のサブレディット「r/FacebookAds」では、知らないうちにAIコンテンツが広告へ混ぜ込まれていると不満を訴える広告主が増えている。リード氏はFacebookにこの件を投稿し、その後Metaから連絡があり、この機能はすべての広告主に対してオフにされたと説明された。しかし、MetaはGlossyのコメント要請には応じなかった。

TikTokでもAI広告が人種差別的表現に

広告主の同意なしにAI生成コンテンツを作成しているのはMetaだけではない。IGNは先週、ゲームパブリッシャーのフィンジ(Finji)がTikTokの自動AI広告コンテンツで同様の問題を経験したと報じた。フィンジによれば、TikTokが承認なしに生成したAI広告が、同社の新作ゲームに登場する黒人キャラクターを、人種差別的かつ性的に描写していた。

AI広告に対するプラットフォームとユーザーの意識ギャップ

さらに広い視点で見ると、生成AIに対する大手ソーシャルプラットフォームの熱狂と、一般ユーザーがそうしたコンテンツを消費したい欲求のあいだに、ギャップが広がっている。国際広告協会(International Advertising Bureau)の最近のレポートによれば、広告担当者の82%が「Z世代はAI広告に好意的だ」と考えていた。しかし同じレポートでは、実際にそう感じているZ世代は45%にとどまっていた。また2月の全米経済研究所(National Bureau of Economic Research)の別のレポートでは、米国、英国、ドイツ、オーストラリアの企業の約70%がAIを積極的に利用している一方で、80%の企業が雇用や生産性に対する影響はないと報告している。

AI広告の拡大で高まる「広告の信頼危機」

専門家やブランドは、AI生成コンテンツの拡大がソーシャルプラットフォームや広告市場にどのような影響を与えるかについて懸念を表明している。「要するに、広告は信頼の危機に入りつつある」と、クリエイターエコノミープラットフォームのビリオ(Billio)のCEOであるドナタス・スマイリス氏は語った。彼はその例として、先月、グッチ(Gucci)のAIキャンペーン画像に対してユーザーから強い否定的反応が出たことを挙げた。 「反発やソーシャルメディア上の反応など、初期の兆候はすでに現れている。たしかにAIビジュアルを投入すれば、短期的にはエンゲージメントや売上を押し上げる可能性がある。しかし我々はオーガニックで創造的なコンテンツを求めている。長期的には、本物ではない、あるいは本物らしくないように見えるブランドは消えていくだろう」。リード氏は、すべてのコンテンツが人工的になった場合、実在するブランドと怪しい企業や詐欺業者を顧客が見分けられるのかについて、特に懸念を示した。「Metaがこの件で私の話を聞いてくれたことには正直驚いた」とリード氏は語った。「しかし顧客の反応、そして彼らがどれほどそれを嫌ったかが、とっても大きな変化の要因になったのだと思う」。一方バンクス氏はGlossyに対し、MetaやTikTokのプラットフォームが広告に対して行えるAIを活用した小さな調整の例を示した。たとえば、背景色の変更するなどの調整である。テクノロジー全般についてはより肯定的な見方をしている。しかしそれでも、これらのツールが生成される多くは、最悪、意味不明で使い物にならず、よくても元の広告に対して意味のある改善とはいえないと述べた。「1カ月、3カ月、6カ月後には、ブランドにとって本当に役立つ可能性はある」とバンクス氏は語った。「ただ、技術はまだそこまで到達していない。これは信頼の問題だ。ブランドが自社コンテンツに明確なガードレールを設けたいのであれば、デメリットのほうが大きい可能性がある。しかしAIが大量の粗雑なコンテンツを生み出していくなかで、どれも差別化されなくなる。本当に重要になるのは、ブランドストーリーテリングと、長尺で質の高いコンテンツである」。[原文:Fashion Briefing: Meta is auto-generating AI ads for its advertisers, causing headaches for image-conscious fashion brands]Danny Parisi(翻訳、編集:藏西隆介)