『純愛上等!』『人間標本』『黒崎さん』 M!LK 山中柔太朗、俳優として劇的な“進化”
ダンスボーカルグループ・M!LKのメンバーとして活躍する山中柔太朗は、白い肌にクールな瞳、端正な顔立ちと、どこか儚げな雰囲気が印象的だ。触れようとすれば霧のように消えてしまいそうな透明感と、そこに佇むだけで見入ってしまうビジュアルは、見る者を自然と惹きつけていく。
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M!LKのヒット曲「イイじゃん」では、王道アイドルのキラキラ感から一転、山中の登場によって、一気に「ダークモード」へと突入することも話題となった。金髪でクールな表情の山中が「アレ、今日ビジュいいじゃん?」と流し目で囁く瞬間は、インパクトも絶大だ。SNSでは「金髪確変ニキ」「神ビジュだからこそ唐突な確変が刺さる」といった声が相次いだ。
近年の山中は、アーティストとしての活動に加え、俳優としての進化が目覚ましい。公開中の映画『純愛上等!』では、停戦中の敵校・白岩高校のトップと噂される佐藤美鶴役を好演。その他にも、映画『人間標本』やドラマ『黒崎さんの一途な愛がとまらない』(日本テレビ系)など、話題作への出演が相次ぎ、今やドラマ・映画から引く手あまたの存在となっている。
本記事では、『純愛上等!』のストーリーとともに、主演を務める山中柔太朗の演技の魅力、そして過去作で見せた表現力についても掘り下げていく。
映画『純愛上等!』は、明るさと人望で仲間を束ねる紅桜高校のトップ・亀井円(髙松アロハ)と、白岩高校を率いるクールなトップ・美鶴が織りなす、笑いあり・恋あり・アクションありの純愛ストーリーだ。敵対する高校同士でありながら、ひょんなことから円の祖母が営む駄菓子屋「かめいや」の2階で共同生活を送ることになる。
美鶴は寡黙で、何を考えているのか一見わかりづらいキャラクターだ。そんな美鶴は、常に冷静沈着で、一歩引いた視点から円たちと関わっていく。一方の円は、美鶴の美しさと独特の魅力に初対面からすっかり心を奪われてしまう。
やがて、彼の唐突な「壁ドン」や思わせぶりな仕草に振り回されていく円は、すっかり美鶴の虜に。美鶴はそんな円に優しい眼差しを向けながらも、どこかぎこちない笑みを浮かべ、決して心の内を明かそうとしない。
美鶴の瞳は、円や1歳下の弟・亀井樹(白鳥晴都)を静かに見守るようでもあり、同時にどこか寂しさを帯びている。彼が唯一動揺を見せるのは「兄」の話題に触れられた時だ。その瞬間だけ、抑えていた感情が表情に滲み、目に熱が宿っていく。
美鶴は家族から十分に愛されずに育ち、「愛されること」そのものに強い憧れを抱いていた。その背景が物語の進行とともに少しずつ明らかになり、やがて彼が円に惹かれていく理由へと繋がっていく。人との出会いや恋を通して、閉ざしていた心を少しずつ開いていく姿を、山中は自然体で丁寧に演じ切っていた。
山中の澄んだ美しさは、時として作品によって「影」や「歪さ」へと姿を変えることがある。映画『人間標本』では、標本の犠牲となった美少年・赤羽輝を演じた。まっすぐな瞳で「人の心に華やかな光を照らす絵を描きたいんです」と語る赤羽は、無垢でありながら、どこか神秘的な美しさを纏っている。
ところが物語は、残酷にも「少年たちが殺される前提」で進んでいく。
劇中には、赤羽が華麗に踊るシーンも登場する。躍動感あふれるダンスの中で際立つのは、赤羽の細く長い手足のしなやかな動きだ。その美しさは、まるでひとつの芸術が生まれる瞬間を目撃しているかのようだ。また、踊りの最中にふと浮かぶ赤羽の儚げな表情には、自らの運命をどこか悟っているかのような憂いが滲んでおり、より切なくなった。
ドラマ『黒崎さんの一途な愛がとまらない』では、おにぎり屋「しらせ」の娘・白瀬小春(豊嶋花)に恋をする黒崎絢人を演じた。当初の黒崎は抑揚のない声で、ぎこちなく思いを伝える不器用な青年だった。しかしその裏には、仕事のスランプで何も食べられなくなっていた時期に、明るく接客してくれた小春に救われ、恋心を抱いたという背景がある。やがて戸惑いながらも、嘘がつけず真っ直ぐな黒崎の姿に、小春の心も少しずつ揺れ始める。
小春が自分の気持ちを表情や言葉で伝え始めるにつれ、黒崎の瞳には少しずつ光が宿り、穏やかな笑みが零れ始めるようになる。その変化の過程を、山中は自然体の演技で丁寧に描き出していた。
映画『純愛上等!』のクライマックスでは、美鶴が円への溢れる想いを告白するシーンも登場する。しかしその告白は、実に切なく、そして美鶴に恋焦がれる円にとってはあまりに残酷なものだった。
美鶴の言葉を受け、円は頭が真っ白になり、呆然としたまま「会わなければよかった」とこぼし、涙をぽろりとこぼす。そんな円の前に、優しく涙をぬぐう美鶴の「幻想」が現れる。白く滑らかで細い美鶴の指が円の頬に触れ、涙をそっと拭うその瞬間は、あまりにも神秘的で、その美しさに思わずぞくりとした。
ずっと隣にいて、当たり前のように「これからも近くで過ごせる」と信じていた相手が、ある日突然いなくなってしまったら、人は一体どれほどの絶望を抱えるのだろうか。「お互いを深く想っているからこそ、傍にいられない」という矛盾を抱えた2人の姿はあまりにも切なく、気づけば涙が止まらなかった。
そして、この別れがより胸に迫ったのは、美鶴が円のもとを離れる前から、ずっと自分より円のことを思い続けていたからかもしれない。そのいじらしさに触れるたび、言葉にならない切なさが込み上げていたからこそ、美鶴の辛い告白と、快活だった円が放心状態になる様子を見て、思わず胸の奥がキュッと苦しくなった。
離れることを選んだ美鶴と円は、このまま疎遠になってしまうのか。それとも、もう一度笑い合える日が訪れるのか。(文=みくまゆたん)

