日向坂46、自己最多の初週売上更新の背景とは? 『クリフハンガー』に至る挑戦、ファンベースの広がり
日向坂46の16thシングル『クリフハンガー』が、Billboard JAPAN週間シングルセールスチャートの「Top Singles Sales」で58.7万枚を売り上げ、首位を獲得(※1)。あわせて、自己最多の初週売上枚数を更新している。「オリコン週間シングルランキング」でも初週47.3万枚で1位を記録し、1stシングル『キュン』から続く連続1位は16作へと伸ばした(※2/オリコン調べ)。今作の売上はなぜここまで伸びたのだろうか。
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挑戦的な新体制と松田好花卒業の重なり
前作の15thシングル『お願いバッハ!』は二期生の金村美玖と小坂菜緒がWセンターを務め、二~四期生の全員選抜という安定感のある布陣でこれまでの積み上げを示す一枚だった。一方で今作は、五期生の大野愛実がセンターに立ち、新体制への移行をはっきりと打ち出した作品になった。日向坂46はいま、そうした挑戦的な布陣を選び取れるだけの勢いがあり、その手応えがファンにも共有され、素直に数字へと繋がったと考えられるだろう。
さらに今作には、同シングルの活動をもって卒業する松田好花が作詞を手がけた「涙目の太陽」が収められている。新体制へさらに踏み出すタイミングと、長くグループを支えてきたメンバーの卒業が重なったことで、ファン側にはこの一枚を手元に残しておきたいという感情が自然と芽生えたのかもしれない。『クリフハンガー』は、新しい章を示すと同時に、これまでの時間にひと区切りをつけるシングルでもあるのだ。だからこそ応援の気持ちが強まり、松田の歩みを見届ける意味でも、この一枚を選び取る動機が生まれた。そうした感情の積み重ねが、数字にも表れていると考える。
一応触れておきたいのが、CD購入者のスペシャル応募抽選企画における応募者全員当選のミニライブ配信視聴用IDだ。これは目新しい仕掛けというよりは、これまで続けてきた導線が、いまの勢いと噛み合ったものとして捉えるほうが近い。日向坂46のみならず、坂道グループは以前から、CD購入とオンラインでの体験を結びつける仕組みを継続してきた。ファンにとっても、その流れはすでに馴染みのあるものになっており、その積み上げが売上に繋がったという側面もあるだろう。
とはいえ、今回の売上更新を考えるうえで、2025年のライブ活動は欠かせない。日向坂46はこの一年、いまの自分たちをステージ上で具体的に見せてきた。ライブのたびに更新されていく姿をファンに広く共有できたことが、支持の広がりとして積み上がり、今回の数字にも繋がったように思う。
象徴的だったのが、5月に東京・国立代々木競技場 第一体育館で開催された『日向坂46 BRAND NEW LIVE 2025「OVER THE RAINBOW」』だ。虹を思わせるライティングやスモークの中で立ち上がるカウントダウン、新衣装で登場するメンバー……。そうした演出が重なって、視覚的にも「ここから新しい日向坂が始まる」というメッセージをはっきり伝え、新体制としての初ライブという節目を、内向きの決起集会に終わらせず、“何かが生まれる瞬間”をステージ上で見せることに振り切った公演だった。
ライブで示した地力の更新、五期生 大野愛実が示した確信
9月からは全国6都市13公演のアリーナツアー『日向坂46 ARENA TOUR 2025「MONSTER GROOVE」』が行われた。ここで日向坂46は、ライブの見せ方そのものを更新した印象があった。開演と同時に会場が一斉に空色へ染まり、レーザーと重低音でグルーヴの世界観へ引き込む導入からテーマの提示が明確で、能動的にグルーヴを作り上げる姿が前面に押し出されていたのだ。大野愛実がMPCでビートを刻み、正源司陽子がエレキギターを鳴らし、平尾帆夏が鍵盤で旋律を支えるなど、楽器演奏やシャッフルユニットを見せ場として切り離すのではなく、ライブ全体の流れの中にきちんと組み込まれていた。だからこそ、日向坂46のライブ力が底上げされていることが伝わってきたのだと思う。笑顔や幸福感だけで成立させるのではなく、歌唱やダンスの精度、長丁場を支える体力、曲ごとに空気を切り替える集中力までを含めて、グループの地力が強くなっていることを感じさせるツアーだった。
また、ツアーを重ねる中で、五期生が“これからの存在”ではなく、すでにグループの中心として機能し始めていることが、現場ではっきりと伝わってきた。期別曲ではまとまりのあるパフォーマンスを見せ、特に大野はセンターに立つ場面で表情や空気の切り替えの先陣を切り、楽曲の顔として立っていた。新メンバーだから目を引くのではなく、表現そのもので納得させることのできる段階にすでにあったのだ。それを考えると「クリフハンガー」で大野がセンターを務めることが自然に受け止められたのも頷ける。ツアーの中で積み重なった成長と手応えが、そのまま作品の顔へと繋がった形だ。そこに納得感があるからこそ、新体制を支えたい、いまを手元に残したいという思いが自然に生まれ、購入という行動へ結びついていったとも考えられる。ライブを通して広がった支持と、世代交代の進み方が噛み合ったことが、今回の数字を押し上げたのだろう。
『クリフハンガー』は、そのタイトルが示す通り、この先を見届けたくなる感覚を残すシングルだ。いまの日向坂46がこの体制でどこまで景色を変えていくのか、その続きを見届けたいと思わせるだけの説得力が、すでにあると思う。
※1:https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/158131/2※2:https://www.oricon.co.jp/news/2434112/full/
(文=川崎龍也)
