image: RR Auction

なんでもきれいに取っておくもんです。

あるオークションで落札された小切手の原本。お値段、約247万ドル(約3億7000万円)です!署名欄には、スティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックの直筆サインが入っています。

以前にも、スティーブ・ジョブズのサイン入り小切手が10万6985ドル(約1440万円)で落札されたニュースはありましたが、桁が違いますね。

ガレージから始まった伝説の「証明書」

今回、RRオークションに出品されたのは、1976年3月16日に振り出されたApple Computer初の小切手。金額はわずか500ドル(当時のレートで約15万円)でした。

RRオークションは1976年に創業した、ボストンを拠点とするオークションハウス。歴史的文書や記念品を多く取り扱っていて、大統領のサイン入り文書、音楽関連の記念品、宇宙開発の遺品、テクノロジー関連のハードウェアなどを中心に、700回以上のオークションを開催してきました。

たとえば、アポロ15号の宇宙飛行士が月面で使用したブローバの時計が162万5000ドル、アインシュタインが「E=mc²」について書いた手紙が124万ドル……Apple(アップル)関連だと、ジョブスのApple-1コンピュータのプロトタイプが67万7200ドルということも。

さて、今回の小切手が特別なのは、支払い先が「ハワード・カンティン」という人物だったこと。彼はApple Iのプリント基板を設計したエンジニアで、いわばAppleの最初の「外部パートナー」でした。

ジョブズとウォズニアックがガレージで起業したばかりの頃、製品化に必要な基板設計を彼に依頼したんですね。

image: RR Auction

小切手には2人の創業者が連名でサイン。ジョブズのさらりと細い文字と、ウォズニアックのちょっと太めな筆跡が並んでいます。

Appleの最初の公式住所である「770 Welch Rd., Ste. 154, Palo Alto」も刻印されています。これは、ジョブズ家のガレージで営業していた当時、留守番電話サービスと郵便受けの場所でした。

トレーディングカード・記念品鑑定で知られるPSAの鑑定では「MINT 9」という最高クラスの評価を受けており、保存状態も抜群です。

ちなみに、MINT 9は「ほぼ完璧な状態で、わずかな欠陥が1つだけ認められる」レベル。トレーディングカードならまだしも、50年近く前の紙製品としては驚異的だと思います。

デジタル化で失われるものもあるなぁ

今回の小切手がこんな価格になったのはなぜなのか。

まずは、Apple設立後の「記念すべき第1号小切手」というレア度は間違いなさそう。

記録によれば、この小切手が振り出された同日に、AppleはWells Fargo銀行に500ドルの初回入金を行なっています。つまりこの小切手は、Appleが「企業として」最初に行った金銭のやりとりを示す物理的証拠でもあります。

さらに、この小切手は4月1日のAppleの正式設立より16日前に振り出されており、まだ会社としての体裁が整う前だったと推察できます。 テック業界の歴史的文書を扱うコレクターにとっては、まさに「Appleの起源」を物語るような財務文書というわけですね。

それにしても、超高額な落札になったニュースはもちろんですが、「紙」の小切手という存在そのものの面白さも考える出来事でした。今ではクレジットカードや銀行振込が当たり前で、個人間でも借用書なんか作らずにPayPayってお支払いも進んでいます。ビジネスの現場でも、きっと小切手を何年も書いていないでしょう(というか、一度も使ったことがない人も多いはず)。

取引はすべてデータとして記録され、サーバーのどこかに保存されています。確かに便利です。手数料は安いし、記録も正確。でも、デジタルデータには「物理的な存在感」がないんですよね。50年後にオークションハウスで「これが歴史の瞬間だったんだ!」なんて感じることもできない。

image: RR Auction

インクの擦れ、紙の経年変化、筆圧の強弱といった要素すべてが、デジタルではまだ捉えようのない情報や要素になっていて。ジョブズがペンを走らせた瞬間、ウォズニアックが隣でサインを加えた瞬間……紙の小切手はそんな「時間」も閉じ込めている。

なんて書くと、ちょっとエモーショルすぎますね。正直、アナログ保存なんて環境負荷もあるし、保管コストもバカになりません。でも、本当に大切な瞬間、歴史に残したい出来事については、あえて物理的な形で記録を残すという選択肢も、僕らはまだ捨てるべきではないのかもしれません。

3億7000万円の紙切れは、そんなことを考えさせてくれる一枚でした。

Source: RR Auction, Cult of Mac, IT Home, MacRumors

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