「あくび」が脳に驚くべき影響を与えることがMRIスキャンで明らかに

あくびは大きく口を開けて深く息を吸う動作で、眠気や退屈、疲労などを感じた時に反射的に生じます。そんなあくびが脳に驚くべき影響を与えているとの研究結果が、プレプリントリポジトリのbioRxivに掲載された論文で報告されました。
Biomechanics of yawning: insights into cranio-cervical fluid dynamics and kinematic consistency | bioRxiv

Yawning has an unexpected influence on the fluid inside your brain | New Scientist
https://www.newscientist.com/article/2513692-yawning-has-an-unexpected-influence-on-the-fluid-inside-your-brain/
Yawning Does Something Surprising in Your Brain, MRI Scans Reveal : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/yawning-does-something-surprising-in-your-brain-mri-scans-reveal
人間だけでなくほとんどの脊椎動物があくびをしますが、動物があくびをする理由については謎に包まれています。提唱されている説としては「肺への酸素供給量の増加」「体温の調節」「脳周辺の体液循環の改善」「ホルモン濃度の管理」などがありますが、決定的な答えは出ていません。
オーストラリアの非営利医療機関・Neuroscience Research Australiaの研究者であるアダム・マルティナック氏は、「ワニも恐竜もあくびをしていたでしょう。これは進化の過程で驚くほど保存された行動ですが、なぜ人間にも残っているのでしょうか?」と述べています。
そこで、マルティナック氏らの研究チームはあくびが身体に与える影響について調べるため、健康な成人男女22人を対象に実験を行いました。実験では被験者に「通常の呼吸」「あくび」「あくびの我慢」「意図的な深呼吸」という4つの異なる呼吸パターンをしてもらい、その間に頭や首のMRIスキャンを行いました。

あくびと深呼吸は似たようなメカニズムを持っているため、研究チームは両者のMRIスキャンは似たような結果になるだろうと予想していました。ところが驚くべきことに、MRIスキャンではあくびと深呼吸で脳に及ぼす影響が異なることが示されました。
被験者が深呼吸した時は、これまで知られていたのと同様に「脳の空洞を満たす脳脊髄液が流入し、静脈血が心臓から脳へ血液を送る内頸(けい)動脈へ流出する」というパターンが見られました。一方であくびをした時は、「脳脊髄液と静脈血がともに流出する」というパターンが確認されました。
マルティナック氏は、「あくびは深呼吸の時と逆方向に脳脊髄液の動きを引き起こしていたのです。私たちはただそこに座って『うわあ、こんなことは予想していなかった』と驚きました」と述べています。あくびの際に脳脊髄液が排出される正確なメカニズムは解明されていませんが、一度に排出される脳脊髄液の量は数ml程度だとみられています。
今回の実験では、あくびをした時は深呼吸の時よりも、内頸動脈へ流入する血液の量が3分の1以上増えることも確認されました。これは、あくびをすると脳脊髄液も排出されるため、動脈に血液が流れ込むためのスペースが増えるからだと考えられています。
さらに、あくびをした時の舌の動きは被験者によって異なり、それぞれが独自のパターンを持っていることもわかりました。研究チームはこの点について、あくびのパターンは後天的に学習されたものではなく、中枢神経系にプログラミングされた生来のものであることを示唆していると述べました。

研究チームが次に解明したい謎のひとつが、あくびによる脳脊髄液の排出が体にもたらすメリットについてです。マルティナック氏は、「もしかしたら体温調節かもしれませんし、老廃物の排出かもしれません。あるいはそのどちらでもないかもしれません。あくびをしなくても生きられるかもしれませんが、6〜8個くらいの非常に小さな効果が積み重なって、老廃物の排出や体温調節、さらに集団の感情的なダイナミクスを調節するのに役立っている可能性もあります」と述べました。
なお、今回の論文はまだ正式な査読を受けていませんが、bioRxivで閲覧することが可能です。
