by ESO/K. Iłkiewicz and S. Scaringi et al.

ヨーロッパ南天天文台(ESO)が、地球から約730光年離れた位置にある連星「RXJ0528+2838」の周囲に、「謎めいた衝撃波」を観測したと報告しました。ESOは、この衝撃波の発見はこれまでの天文学の常識を覆すものだと述べています。

Astronomers surprised by mysterious shock wave around dead star | ESO

https://www.eso.org/public/news/eso2601/

ESOはチリ北部のアタカマ砂漠内に、超大型望遠鏡(VLT)と呼ばれる施設を抱えています。今回報告された観測結果は、このVLTに搭載されているMUSE (Multi Unit Spectroscopic Explorer)という非常に強力な可視光分光装置で得られました。



by J.L. Dauvergne & G. Hüdepohl (atacamaphoto.com)/ESO

RXJ0528+2838は、白色矮星と太陽に似た伴星からなる連星系です。白色矮星は低質量星が進化の終盤で残す高密度の核で、伴星からガスを受け取って明るくなります。一般には、伴星から移ったガスが白色矮星の周りに降着円盤を作り、その円盤が回転しながらエネルギーを放つとされています。

星が銀河の中を動くと、星間空間のガスと相互作用し、「ボウショック」と呼ばれる弓形の衝撃波構造を作ることがあります。通常、この種の連星系で見られるボウショックは、中心天体の円盤から外へ吹き出すガスが星間ガスを押しのけることで生まれると考えられています。

しかし、今回の観測結果から、RXJ0528+2838の白色矮星が持つ磁場は42〜45MG(メガガウス)と、非常に強力であることが判明。この強力な磁場では降着円盤を形成できないため、巨大なボウショックを形成するメカニズムが既存の天文物理学で説明できないとのこと。



by SO/K. Iłkiewicz and S. Scaringi et al.

さらに、ボウショックを維持するために必要なエネルギーは、RXJ0528+2838の全物質が落下して生み出せる全エネルギーの約3.4倍だったことがわかりました。また、RXJ0528+2838のボウショックは少なくとも1000年以上にわたって継続的にエネルギーが注入されていると推定されており、一過性の新星爆発によるものと説明できません。つまり、観測されるボウショックを1000年以上にわたって維持するだけのエネルギーがどうやって捻出されているのかがわからないというわけです。

研究チームは、既存の物理学では説明できない以上、この謎の動力源として白色矮星の磁気活動に関連した強力で見落とされてきたエネルギー損失メカニズムが存在する可能性を示し、磁気活動に結びつく仕組みかもしれないと述べていますが、あくまでも仮説の段階にとどまるとしています。今後、同種の円盤を系統的に調べ、どんな条件で長寿命のアウトフローが生まれるのかを解明できれば、連星の進化そのものにも影響する新しいエネルギーの抜け道が見えてくる可能性がある、と研究チームは論じました。