「結婚式直前に水道検針員の女性が殺害された──地元で“危険視”されていた犯人。“史上最悪”とも言われた奥州市の事件を再取材し、独自入手した裁判資料が示す新事実とは。そして、近隣住民が今も犯人を恐れる訳」。そう題した動画が、YouTubeチャンネル「日影のこえ」で公開された。
岩手県奥州市の静かな田園で、10年前、ひとりの女性が突然姿を消した。水道検針員として地域を回っていた31歳の女性だ。
女性は数日後、遺体で発見された。
取材班の1人は当時、事件記者として毎日のように現場を這い回っていたという。ただ、数多くの事件を追ってきた中でも、この事件だけは“異質”だったと振り返る。
現場で耳にした住民の証言、犯行の異様さ、地域に漂う恐怖。そして後に「史上最悪の事件」とも言われた残虐性──。
取材班にとっても、忘れようとしても忘れられない“痛点”として胸に残り続けていた。
十分な深掘りができないまま時間だけが過ぎてしまった事件。今年、その事件から10年を迎える。

記者は再び、この田園の片隅に立った。
さらに、今回の再取材に際して 判決文を独自に入手した。そこには犯人・渡辺豊の供述が克明に記されていた。読み進めるほどに、10年前、記者として感じた“怒り”が静かに呼び起こされたという。
女性が最後に姿を見せたのは、2015年5月22日。水道検針の仕事中、いつも通り地域を回っていた。夕方になっても戻らず、すぐに捜索が始まった。警察の動きが早かった理由はひとつ。この地域には“要注意人物”がいたからだ。
渡辺豊、当時40歳。
小学生の頃から下着を盗み、成人後は刃物を使った性犯罪で実刑判決を受けた男である。
住民はこう証言する。
「小学校2、3年ころから女、女、女よ。下着を盗んでさ。出てきては繰り返し。」「いつか人を殺すんじゃないかって、みんな思ってた」
行方不明直後から、警察は渡辺を聴取。そして供述をもとに、自宅から約2キロ離れた山林で女性の遺体を発見した。

再取材で見えてきたのは、渡辺の生い立ちの“歪み”だった。住民の話では、渡辺は幼い頃、別の姓を名乗っていたという。
理由は、父親の借金だった。
「田んぼとか機械を買って借金して、返せなくなってね。夜逃げみたいにいなくなった。家族は借金から逃れるために、母親の旧姓に変えたんだべ」
父親はその後もあちこちから金を借り、やがて衰弱死した。渡辺の家の敷地には、今も“未完成の家”が残る。

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