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全国的に頻発するクマの出没や目撃。

【写真を見る】【警戒】夏はクマにとって「特別な時期」だった 攻撃する理由は?人はエサなのか?今後の国の対策と課題は? 多角的に熊について考える時か…自治体・大学など専門家の意見は

岩手県北上市では民家の居間に侵入したクマに住人が襲われ死亡し、北海道福島町では新聞配達をしていた男性がヒグマに襲われ死亡するなど、クマによる被害は拡大しています。

ヒグマとツキノワグマで違いはあるものの、とにかく連日報告されるクマ被害。

1度人を襲ったクマは人をまた襲う、人喰い熊だ、という報道もされています。私たちはどうクマと向き合っていくべきなのでしょうか。

※去年と今年の取材をもとに再構成

国は去年4月にクマを指定管理鳥獣に追加しました。適切な個体数まで減らすのが狙いで、各県は国の交付金を使い対策を取ることが可能になりました。

こうした中、山形県でも去年、今年と人的被害が出ています。

冬眠しているはずの冬に襲われたのは県内初という出来事でしたが、注意すべきは本格的な夏に入る時期。なぜ注意が必要か、それには理由がありました。

県内でも人が襲われた

去年7月、山形県西川町で、当時73歳の男性がクマに襲われ、腕や下腹部を嚙まれました。命に別状はありませんでしたが、近くでの住民からは不安の声もきかれました。

警察などによりますと西川町志津で、1人でタケノコを採りに来ていた山形県川西町の73歳の男性がクマに襲われ、右腕や下腹部をかまれるケガをしました。


男性は命に別状はなかったということですが、付近で宿泊施設を営む人からは不安の声がきかれました。

スキー客などが宿泊する施設を営む男性「クマが登山者を襲ったということは今までなかったのよ。時たま、クマを見てきたというお客さんはいる。この頃、秋田(去年被害があった)のように頻繁に人間が襲われるということは、ちょっと考えもんだな」


クマによる人への被害の発生に、県でも警戒を強めています。

県内でクマの捕獲数は

おととし、山形県で捕獲されたクマの数は762頭。過去2番目の多さでした。県は、そのほとんどを捕殺せざるをえなかったとしています。

おととしは目撃件数も765件と急増。その前の年は約300頭だった捕獲数が、おととしは大幅に増えていることをみても、やはり頭数は増えていると言えそうです。

このように目撃件数が増えている中で、人的被害も増えていると考えられています。

今が危険な理由があった


県の担当者「非常に人身被害というのは、痛ましい事故」

では、なぜ夏にかけてが注意すべき時期なのか。県でクマなどへの対策を検討する部署の担当者(当時)はクマにとってこの時期は、非常に重要なタイミングであるといいます。

県の担当者「これから夏に向けて、繁殖期ということになる。オスグマから子グマを守る行動に出るのです」

目的は「交尾」

繁殖期を迎えたオスグマはメスグマを見つけると、連れている子グマを襲う習性があります。

子グマを殺されたメスグマは発情するということで、オスグマは自分の交尾のために、他のオスの子である子グマを殺すのだそうです。

このためメスグマは、子グマを守るために行動範囲を広げていて、さらに神経質になっているといいます。


クマの繁殖期は春から夏にかけて続くとされていて、おととしは人的被害5件のうち4件が、5月から8月に起きていました。

山に入る人間は「侵入者」

繁殖期で気が立っている状況である上に、クマにとって森や山は自分の場所、という意識があり、そこにも注意が必要です。

県の担当者「森・山は(クマにとって)自分の領分。逆に人は”侵入者”であると言える」

人は、クマにとって”侵入者”なのです。

人は「えさ」なのか

では、人は「えさ」だと認識されるのでしょうか。

県の鳥獣担当者(当時)は「人をえさだと考えて、狙って襲うことは考えづらい」としています。

人が襲われ死亡した件については、人食いグマなどの報道がされていますが・・・それについては。

「クマ(ツキノワグマ)は基本的に人に近づきません。出合ったときの対応が大切だと思います」

「クマは背中を向けて逃げる、大声を出すなどのことをすると襲ってくる習性があります。食べるというより、逃げる相手に思わず襲い掛かった結果ではないかと思います」

気が立っている時期や子グマを連れているなどの場合は危険が増すものの、基本的には向こうが逃げていくと考えられているとのことです。

街中での目撃も増えているが・・・

近年耳にするようになったアーバンベアという言葉。

街中にクマが出た場合は、人的被害につながるリスクも高いことから、対応はどうあるべきかも注目されています。北海道の被害も、人里の、明らかに住宅街にヒグマが出没しています。

こうした事態に、国が動いています。

政府は2月21日、市町村の判断で銃を使用しクマに対処できるようにする鳥獣保護管理法の改正案を閣議決定しました。

しかし課題も。今後、市街地にクマが出た場合はどうなるのか、専門家に聞きました。

クマの生態や鳥獣保護管理法などに詳しい岩手大学の山内貴義准教授です。

岩手大学 山内貴義 准教授「捕獲しなきゃいけないときに法律の壁があったので法整備されるのは非常にいいこと。各自治体が対応しやすい」

■クマによる被害は

国によりますと、2023年度のクマによる人的被害は全国で198件、219人。

これは統計史上最悪の数字です。

このような事態を受け、政府は鳥獣保護管理法の改正を閣議決定しました。

■法改正も現場の負担が心配 

今は市街地でのクマへの発砲は原則禁止。人が危険になる場合などは県と警察の許可が出れば発砲が可能でした。(しかし手続きが複雑かつ時間がかかり現実的ではなかった)

改正案では人の日常生活圏に侵入し、緊急性を要する場合などに、市町村の判断で銃の使用が可能になります。

しかし山内准教授は対応に当たる現場の負担を心配します。

岩手大学 山内貴義 准教授「猟友会のメンバーも数がどんどん少なくなっている。鉄砲を持てば誰でも獣を撃てるかといえばそうではない」

■ハンターに求められるスキル

市街地などの人の住む場所でクマの活動がみられる中、ハンターに求められるスキルも高度になっています。(そもそも市街地でクマのみを一発で仕留めるのは困難)

岩手大学 山内貴義 准教授「各自治体人手不足で非常に対応に苦慮してるところ。さらに、この法整備があって動けるようにはなったけれど、実際に動かせるのかは今後人材確保とか研修会を踏まえておこなっていく必要がある」

■誰が銃を持ち、撃つのか

また、山内准教授は人材確保として行政担当者が銃を持つこと、専門の民間業者に頼ることも必要だとしています。

今回の改正案では、他にも銃の使用で家屋などが壊れた場合は市町村が補償する内容が追加されました。(保険への加入を想定。国が費用を支援へ)

岩手大学 山内貴義 准教授「安心するのではなく、この法改正をして実際にこれがクマ問題をいかに対処していくかのスタート地点に立ったという認識で皆さん捉えていただきたい」

鳥獣保護管理法の改正案は審議され、秋ごろの運用開始が見込まれています。

私たちにできる対策は

県の担当者「近年、里山の手入れがされていなくなっている。以前ですと、クマと人間との住みわけがきちんとなされていた。それが手入れが行き届かなくなって、境界が曖昧になってきている」


県では、人とクマとの境界を区別するために、人が出した生ごみや、木に実った果樹を放置しないこと、山に入る際は音の出るものを身に着けて、人間の存在を知らせるといった基本的な対策を呼び掛けています。

クマと人とのすみ分けがはっきりするのが1番だとは思いますが、クマが増えて人的被害も出ている状況である以上、多角的に対策を立て、スピード感を持って対応することが行政に求められています。