車を運転する際、得意な人と苦手な人がいるのは自然なことです。しかし、「上手い運転」が具体的に何を指すのかは、なかなか明確な答えが出しにくい問題でしょう。

それでは、多くのドライバーを世に送り出す教習所の指導員は、「上手い運転」をどう捉えているのでしょうか。今回は指導員の方々に、教習生を教えていて運転のセンスを感じるポイントについて話を聞きました。

操作の上手さは「車両感覚」でわかる

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「運転が上手い」と聞くと、まず「運転操作の正確さ」を思い浮かべるかもしれません。今回のインタビューでも、「運転の上手さとは車両を適切に動かせること」という意見がありました。

ある関東エリアの教習所指導員(指導歴7年)は、「感覚の差が出やすいのはやはりS字・クランクですね。多くの教習生は車両感覚が掴めていないため、視界に入る前方ばかりを過剰に気にして脱輪することがあります」と話します。「しかし、たまに車両感覚が優れている教習生がいると、『おっ』と思います。後輪のタイヤの動きを感覚的に捉え、何も教えなくてもベストなライン取りで曲がっていくので、違いが分かりやすいです」と付け加えました。

もちろん車両感覚は慣れとともに身につくものであり、最初はできなくても問題はありません。しかし、「もともとのセンス」という点では、このような違いに表れるようです。車両感覚は空間把握能力と密接に関わっており、個人差が出やすいポイントと言えるでしょう。経験で十分に補える能力ですが、「最初から感覚を掴むのが得意な人」もいるようです。

大事なのは技術よりも精神面?

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インタビューを進める中で、「操作の正確さ」よりも多く挙げられたのが「精神的な面での運転適性」というポイントでした。他者の命を奪う可能性もある自動車を扱うにあたって、責任ある振る舞いができるドライバーを「上手い」と考える指導員は少なくありません。

都内の教習所指導員(指導歴11年)は、「教える側の立場もあると思いますが、こちらの指摘をすぐにフィードバックできる教習生は運転適性も高い傾向にあります。技術面というより、精神的な面で適性があると言えるでしょう」と述べます。

「反対に、技術的なレベルが高くても、自分のなかで『こうでなきゃいけない』という思いが強すぎると、公道を走る上では危うさがあると思います。公道には様々な交通主体が走っていて、それぞれ見えているものが違うため、安全運転のためには『相手の目線』を考えられることが何より大切です」とも語りました。このような意味で、自分とは異なる人の指摘や意見に耳を傾けられる人は、ドライバーとしての適性が高いと言えるでしょう。

確かに公道を走る上では、「自分の目線」だけでなく「相手がどう動こうとしているか」にまで気を配ることが重要です。相手の立場に立つという意味で、「人の話を素直に聞ける心」は安全運転にも通じるものがあるのかもしれません。

状況判断の適切さは「視点の移動」でわかる

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上記のコメントではドライバーの「精神面」に焦点が当てられていましたが、これに通じるポイントとして、「運転中にどこを見ているか」によって運転の上手さがわかるという指導員もいました。

別の都内教習所指導員(指導歴16年)は、「左折時の巻き込み確認が代表的ですが、死角を確認するタイミングが適切な人は、ちゃんと状況をふまえて運転できているなと思います」と指摘します。「教習生を見ていると、巻き込み確認は『とりあえず決まりだからやっておこう』といった感じで、形式的に済ませている人も多いのです。しかし、ちゃんと左折前の車を寄せる前に一度、曲がる前にもう一度と、流れの中で『ちゃんと死角を確認するために見ている』のがわかる教習生もいて、そうした運転には安心感がありますね」と続けます。

彼個人の感覚として、そういったところがスムーズな教習生は、状況判断も適切な傾向にあるようです。同じ「左後方を目視する」という動きでも、指導員の目から見れば「形だけやっている」のか「死角を確認するためにやっている」のかは明らかだと言います。

またこれに近い内容として、「ブレーキのタイミングや踏み方」を挙げる指導員もいました。状況が見通せているドライバーであれば、距離に応じて自然に減速できますが、しっかりと状況を読めていないドライバーはブレーキが急になったり、タイミングが不規則になったりしやすいとのことです。

今回のインタビューでは、「運転操作そのもの」よりも、「状況判断の適切さ」を評価する声が多く聞かれました。周囲の状況をしっかりと把握しながら、安全かつスムーズに目的地へとたどり着けることが、「上手い運転」において最も重要なポイントと言えるでしょう。