ペロブスカイト太陽電池、実用化に向け加速 工事屋上・空港で耐久性と使い勝手の実証実験

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耐久性と交換性――使い勝手の良さの実証実験

岸田文雄前首相が2025年の実用化を目指すとしていたペロブスカイト太陽電池。研究開発を進めている企業の一部では本社社屋や自社工場で実装したり、実証実験が進む。
さらに実用化に向けた大規模な実証実験も行われている。
6月には大林組とアイシンによる屋上設置実験と、積水化学による神戸空港での実験が開始された。

大林組とアイシンによって始まったのが、東京都清瀬市にある大林組技術研究所の共同実験である。
この実証実験では、アイシンが20年以上にわたり培ってきた有機系太陽電池の技術をベースに、薄ガラスと薄膜構造による耐久性向上を図った電池を使用。大林組は「ファスナー取り外し式工法」を提供し、施工中や維持管理中にパネルを容易に交換可能な仕組みを開発。この実証では、メッシュ状のシートに特殊ファスナーを取り付け、部分的な交換が可能な設計となっている。
大林組とアイシンは、ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けて「容易に交換できる工法」と「発電量を最大化する設置方法」の開発と検証を目的とした実証実験としている。

メッシュシートをファスナーで固定されたペロブスカイト太陽電地

また、この実証実験では、フィルム型のペロブスカイト太陽電池の軽量かつ柔軟で低照度時にも高出力を発揮する特性を活かし、最適な配置形状をシミュレーションにより算出。通常の30度傾斜設置と比較して同一面積あたりで20%以上の発電量増を見込み、耐久性や経年発電性能の比較評価を行うことで、技術の汎用性を探る狙いもある。

厳しい環境の空港制限区域での実証実験

同じ6月から始まったもう1つの実証実験は、積水化学、積水ソーラーフィルムと関西エアポート神戸が連携して神戸空港の制限区域内で行われるというもの。

空港の制限区域という公共インフラにおける国内初の試みであり、特に風圧など空港特有の環境に対する安全性評価を主眼んしいている。防草シート上に柔軟な電池フィルムを敷設し、施工方法、耐久性、発電効率のほか、飛散リスクや剥離の有無を多面的に検証する計画だ。また、施工・撤去の手順そのものも、設備更新時の負担軽減に資するかを評価する。
この実験は2025年6月から2027年3月まで約1年9カ月の予定で、季節変動を踏まえた長期耐候性や性能劣化のデータ収集も含まれている。

空港の制限区域に敷設された積水のペロブスカイト太陽電地

従来主力であったシリコン系太陽電池は、設置場所・重量の制限から設置条件に制約が多かった。しかし、両実験ともそうした制限の少ないフィルム型のペロブスカイト太陽電地の活用により、2050年カーボンニュートラル実現に向けた再生可能エネルギー導入の本格化を狙っている。
ペロブスカイト太陽電池は軽量・薄型・柔軟という物理特性に加え、ヨウ素を主要素材とするため、資源調達面でもメリットがあるとされる。しかし課題は依然として多く、変換効率や耐久性の向上、大面積設置、コスト競争力と信頼性の両立が求められる。

耐用年数を迎えるシリコン系太陽電池

従来型のシリコン系の太陽電地のおよそ8割は中国製が占めている。また、2009年に始まったFIT(固定価格買取制度)を活用し、東日本大震災後に広がった住宅用の10~15kWの小規模なシステムは、FIT期間が終了を迎える。
加えて、シリコン系太陽光電地の耐用年数は20~30年とされるが、太陽電地の出力劣化が進むと同時に、心臓部であるパワーコンディショナは、15年が耐用年数とされ入れ替えが必要になってくる。
ほかにもメガソーラーシステムにおいても、2024年には鹿児島県宮城県で相次いで火災、爆発事故が発生。経年劣化による事故も心配されている。

山を切り開いて設置されるソーラーパネル

今回の屋上・空港での実験は、こうした太陽電地の市場動向も踏まえた装置の交換性・施工性・発電効率・安全性・耐候性などを多角的に評価し、技術成熟度を高めるステップとされる。
大林組では、今回の実験をビルや工場、一般建築など各種インフラ構造物に展開する方針。一方、積水化学も空港での検証結果を踏まえ、鉄道駅舎や防音壁、商業施設や港湾施設への導入を想定している。

フィルム型のペロブスカイト太陽電池

フィルム型のペロブスカイト太陽電池は軽量で柔軟、かつ薄型で、屋上設置や空港、インフラ施設など用途・設置環境に左右されることは少ない。
今後は耐久性・大面積展開・コスト競争力という最終段階に向けた技術検証が求められるだろう。社会インフラや建築分野における実装が進めば、ペロブスカイト太陽電池は2050年の脱炭素社会を支える主力電源の一翼を担う存在となる可能性が大きい。