“穴埋め要員”から、まさかの正式オファーに!横浜内定の吉田真那斗のシンデレラストーリーは、偶然ではなく必然だった
「いきなり塩川勝行監督から『マリノスのキャンプでメンバーが足りないそうだから、行ってきてくれないか』と言われたんです」
右サイドバックができる選手を一人、試合の日だけに帯同させたい。ちょうど宮崎県の隣の鹿児島県にある鹿屋体育大サッカー部に白羽の矢が立ち、右サイドバックの不動のレギュラーであった吉田がその命を受けた。
「本当にびっくりしました。もちろん実力を評価されて呼ばれたというより、埋め合わせのために近くにいた大学生に過ぎないことは僕も理解していました。でも、こんなチャンスはないと思って、自分を出し切ろうと思って臨みました」
この心構えが運命を引き寄せた。ヴェルスパ大分との練習試合で15分ほど出場すると、激しい球際と守備から攻撃に切り替わった時に、インナーラップ、オーバーラップを状況に応じて使い分けて、攻撃にアクセントを加えた。
吉田が15分で与えたディープインパクトで、試合が終わる頃には『穴埋め要員』から『来季の戦力になるかもしれない選手』に切り替わっていた。ケヴィン・マスカット監督から「もっと見たい」と言われ、彼は4日後のツエーゲン金沢との練習試合では『視察』の意味を込められた状態で出場した。
2試合に参加するのみという、急遽の任務を終えると、今度は強化部から「横浜まで来て練習に参加してほしい」と言われ、正真正銘の練習参加オファーをもらった。
「またも驚きです。2試合に出て、それなりに手応えはありました。でも、正直に言ってしまうと、僕が参加したところで『さすがに興味を持たれることはないだろう』とは思いました。自分なりに良い経験ができたし、次のチャンスに活かそうと思っていたら、そのまま横浜での練習参加オファー。もう正直、驚きの連続でついていけませんでした(笑)」
そして湘南ベルマーレとの練習試合にも出場し、練習参加後に正式オファーが届いた。
「これもびっくりしましたが、迷いはありませんでした。日本一のチームでプロサッカー選手として挑戦できるなんて光栄なことですから」
まるでシンデレラストーリーのような流れだが、これは決して偶然ではなかった。なぜなら吉田は非常に稀有な能力と、強烈な向上心、思考力を持った選手だからだ。
浜松開誠館高では170センチと小柄ながら、ずば抜けたバネを活かした空中戦の強さと対人の強さを買われCBとしてプレー。CBの位置から攻撃に切り替わった瞬間に、一気に相手陣内に入っていき、チャンスに絡むという前への推進力も魅力だった吉田は、大卒プロを目ざして鹿屋体育大に進学した。
鹿屋体育大では右サイドバック、ウイングバックにコンバートされると、爆発的かつ知能的な攻撃参加の能力が開花。1年時からレギュラーを掴み、ボランチやCBに入ってのビルドアップにも磨きがかかり、一気に九州屈指の右サイドバックに成長を遂げた。
圧巻だったのは昨シーズンで、右サイドバックでありながらチーム内得点王である7ゴールをマークした。
得点パターンも豊富で、セットプレーから強烈なヘッドを突き刺したと思えば、インナーラップで一気にゴール前に侵入し、リターンパスやスルーパスを受けて決めたり、カットインからシュートなど、多彩なゴールアプローチを誇る。九州では知る人ぞ知る存在だった。
