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プリウスにしてプリウスにあらず

5代目「プリウス」が、プリウスとして大変貌を遂げた。

【画像】これまでとは違うスタート地点に【新型プリウスを詳しく見る】 全152枚

大変貌といっても、先に登場した「クラウン」と比べれば、プリウスの変化はユーザーにとって許容範囲なのかもしれない。


新型トヨタ・プリウス

とはいえ、スポーティな4ドアクーペとして生まれ変わった5代目プリウスは、4代目プリウスとは明らかに違うクルマに思える。

記者会見では「コモディティ(利便性重視の乗り物)」か「ラブ(愛車)」という二極化した選択肢を設定するという、思い切った製品企画のプロセスを踏んできたことが明らかになった。

結果的に、5代目プリウス開発チームは「ラブ(愛車)」として、これまでのプリウスの常識を覆すようなデザインフォルムを追求することになったという。

会見後、筆者はデザイナーや各部門のエンジニアと意見交換したが、彼らは5代目プリウスに対して実に自然体に接している点がとても印象に残った。

彼らの言葉を要約すれば「プリウスとしてのこれまでの実績は尊重するも、今回はまったく新しいクルマを作り上げた」というイメージである。

こうした思いに至る経緯としては、やはり先代の4代目プリウスの存在が大きいと思う。

実は、4代目プリウスが登場した際、同車の開発関係者らと話した中で「次のプリウスがイメージできない」という言葉を筆者は聞いている……。

5代目はなかったかも……

4代目プリウスでは、当時トヨタが量産を本格化させたプラットフォームである、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)を採用したことでプリウスの走りは大きく進化した。

パワートレインについても熟成が進み、またコネクティビティの領域でも新たなる取り組みが始まった。


4代目トヨタ・プリウスはTNGAを採用し、走りは大幅に進化した。

当時は、ドイツのメルセデス・ベンツがCASE(コネクティビティ・自動運転・シェアリングなど新サービス領域・電動化)というマーケティング用語を使い始めたばかりだった。

その後、CASEは日本でも経済メディアやテレビを通じて一般名詞化し、日本ではCASEの影響によって「100年に1度の自動車産業大変革期」というフレーズが広まっていった。

4代目プリウスは、そうしたCASEの大波の中の船出となった訳だ。

そんな4代目プリウスの開発幹部と当時、じっくり話す機会があったが、その中で「こうした大きな時代変化の中、もしかすると、次のプリウスはBEV(電気自動車)になっているのかもしれない」と指摘した。

さらには「これまでのプリウスという製品性が通用しなくなっているのかもしれないし、プリウスという存在自体がどうなっているのか……。まったく想像できない」とまで言い、5代目プリウスの姿を連想することの難しさを表現していた。

「普通のクルマ」化した背景

なぜ、4代目の時点で5代目の方向性が読み切れなかったのか?

それは、CASEが今後、社会全体に対して、そしてユーザーとクルマとの関係について具体的にどのような影響を及ぼすのかが見通せなかったからだろう。


2代目トヨタ・プリウスは環境意識の高まりを背景に世界中で人気となった。    トヨタ

見方を換えると、4代目以前のプリウスの進化、つまり初代から3代目までの進化については予想しやすかったといえるかもしれない。

あらためて、初代から3代目の進化を考えてみると、1997年登場の初代は自動車エンジニアリングとしては、ガソリンエンジンとモーターとの理想的な融合を求めた机上論から試作でとどまっていた技術が、ついに量産に辿り着いたという自動車産業史に残る大きな1歩だった。

ただし、ユーザー目線でみれば、回生ブレーキの操作性に過敏さが残り、いわゆるカックンブレーキといった感じの制動力が気になるなど、改良の余地はまだ大きかった。

次いで2代目になると、操作性という面、またパッケージングでも「普通のクルマ」として扱えるようになった。

そうした中、米西海外の有名俳優や学識者などが地球環境問題に対する意識の高まりからプリウスを称賛し、自ら日常生活の中で使うようになる。

その後、プリウス支持の動きは全米に拡がると同時に、世界各地にも熱烈なプリウスファンを生み出していくことになる。

これまでとは違うスタート地点に

本格的なグローバル展開を受けて、トヨタとしてはプリウスの走行性能と燃費性能、そしてパッケージングをさらに向上させる必要が出てきたことで、3代目に向けた道筋が自然と見えてきた。

こうして、現時点からプリウスの歴史を筆者の世界各地での実体験をもとに振り返ってみると、初代から3代目までの進化は、ハイブリッド車の黎明期、普及期、そして拡大期という流れの中で、トヨタとしてはプリウスの未来図が描きやすかったはずだ。


5代目トヨタ・プリウスはハイブリッド車の立ち位置が変化していく中での登場となった。

そして迎えた4代目では、ハイブリッド車としての進化のみならず、CASEというさまざまな領域への進化を模索する船出となった。

CASEの中でも、2010年代後半からBEV(電気自動車)シフトが一気に進み、グローバル市場でのハイブリッド車の立ち位置が大きく変化していく。

そうした中で、5代目プリウスの製品としての方向性は、単なる4代目の技術進化にとどまらず、トヨタはプリウスという製品性を抜本的に見直さぜるを得なくなったのだと思う。

プラットフォームとパワートレインは、4代目や他のトヨタ車との共有性をもとに改良しているが、5代目は明らかに初代から4代目までの流れとは違う。

ハイブリッド車もプラグインハイブリッド車も同一デザインの4ドアスポーツクーペ。プリウスは今、これまでのプリウスとは違うスタート地点に立った。