関係者30名登場の濃厚インタビュー本で迫る「必殺シリーズ」不変の魅力
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朝日放送・松竹の制作による必殺シリーズは、池波正太郎『仕掛人・藤枝梅安』を原作として1972年9月〜1973年3月に放送された『必殺仕掛人』から始まった。
金をもらって恨みをはらす殺し屋たちを主人公にしたアウトロー時代劇は、いわゆる「勧善懲悪」を放棄したダークな作風、深いキャラクター描写、斬新な映像表現から人気シリーズとなり、特に藤田まことが中村主水を演じた『必殺仕事人』はシリーズを重ねるごとにバラエティ感と娯楽性を強め、お茶の間の人気ドラマシリーズとしての地位を確立。今年1月にも新作テレビスペシャル『必殺仕事人』が放映されている。
「小学生のころから『三匹が斬る!』などのテレビ時代劇が好きだったんですが、次第にラストの「であえ、であえ!」で主人公に皆殺しにされる敵方の家臣がかわいそうになってきて、再放送の『必殺』はピンポイントで悪人しか殺さないのでグッと共感できました。
中学生の頃に土曜早朝に再放送されていた『必殺仕事人?』から本格的に観始め、神戸で女子大生をやってた姉に『必殺仕置人』の第1話を録画して送ってもらい、さらにハマりました。念仏の鉄(山粼努)と中村主水が初めて登場する、シリーズ第2弾の傑作回です。その直後に阪神・淡路大震災が起きてしまい、続きは観れなくなったのですが……。
その頃、ちょうど必殺シリーズや70年代の作品を再評価する本が次々と出た時期でもあったので、そういう文章を読んで、まだ見ぬ作品の妄想を膨らませたりしました」
高鳥氏は必殺シリーズのどんなところに魅力を感じていたのか。
「シンプルに作品トータルとしての ”かっこよさ” でしょうか。まず、昼行灯の同心で婿養子の中村主水が殺し屋という、昼と夜の顔のギャップ。いわゆる『ナメてた相手が実は殺人マシンでした』みたいなパターンですが、『必殺』は時代劇なのでフィクションとしてのカタルシスも大きいです。
脚本や演出の力も強く感じられます。旧来の映画の現場に比べて若いスタッフの多かった京都映画(現・松竹撮影所)の必殺シリーズは、ときに『邪道』と批判されながらテレビ映画という制約の中で新しい表現に挑戦していったんです。光と影を駆使したコントラストの強い映像、音楽や効果音がアウトローのドラマを引き立てます。あと、1話完結の1時間ものというコンパクトなフォーマットも良いですね」
本書作成にあたり具体的なコンセプトや目標はあったのだろうか。
「『必殺』というのは、時代劇のなかでも異色かつファンの多いジャンルです。今年も『仕事人』のスペシャル版が放送され、過去作の再放送や配信の機会も多い。その知名度や人気を利用して、なるべく多くのパートのスタッフにインタビューしたいと思いました。
どうしても監督や撮影・照明が注目されがちですが、そこだけでなく製作部やスチールマンといったあまり表に出ない方々の声も残したかった。関係各位の協力もあり、亡くなられた方以外の候補者全員にご参加いただくことができました」
インタビューは、シリーズ発足時まだ32歳の若手キャメラマンだった石原興をはじめ、照明、録音、編集、効果、殺陣、記録、演出部、製作部ほか、当初の予定を上回る30名の関係者が改めて必殺シリーズを振り返ることとなった。緒形拳や藤田まことら出演者との思い出、深作欣二や工藤栄一ほか名匠たちの演出についてなど、各作品の舞台裏に迫る内容となっている。
「当時のスタッフが若かったからこそ、これだけの取材が可能となりました。さらにご高齢で取材が叶わなかった方のご家族からは、貴重な資料をお借りすることができました。
残念ながら取材中の7月に元朝日放送の仲川利久プロデューサー、松本明監督がお亡くなりになってしまいましたが、故人となった方々の逸話も追加取材をふくめて、なるべく残そうと思いました」
取材時の印象的なエピソードを伺うと……。
「いざ取材を始めると、みなさん予想以上にサービス精神旺盛でした。だいたいみなさん関西人なので話に ”笑い” を入れてくるんですよ。そのあたりは、まとめるにあたって大事にしようと思いました。あと定番のキーワードとして、何人もの方が『遊びやから』と仰っていましたが、あるスタッフは『こんなしんどいのは仕事じゃなくて、遊びじゃないとやれへんな』と言っていたのも印象的でした(笑)。
『告白録』というタイトルは担当編集のアイデアだったのですが、まさに『告白録』と呼ぶしかない内容になりました。個々による視点の違い、ある種ミステリ的な要素もあると思います」
本書ラストを飾るスペシャルインタビューには俳優の山粼努が登場、『必殺仕置人』『新必殺仕置人』で演じたシリーズ屈指の殺し屋 ”念仏の鉄" について語る貴重な内容となっている。
「最初からレギュラー俳優陣で取材するなら山粼さんだけと決めていたのですが、ご快諾いただけてよかったです。取材当初はガチガチに緊張したのですが、とても物腰柔らかい方で、最終的にはリラックスしてたっぷりインタビューすることができました。撮影の石原興さん、亡くなられた照明の中島利男さんを中心とした京都映画の現場がいかに自由だったか、『役を壊したかった』という当時の心境や撮影のトラブルまで、にっこり笑いながら話されるのだからたまりません。
別れ際に嬉しいお言葉をいただいたのですが、そのあとTwitterでも『楽しかった。聞き手がよかった』と呟いてくださって、びっくりしました。あのツイートで本が出ることを知った方も多かったと思います」
最後に、本書を通じて読者にどんなことを伝えたいかを訊ねた。
「特にこれといって伝えたいことはないです。いま流行りの無責任な言い方ですが、読者の方それぞれの受け取りに委ねたいです。もちろんまったくないわけではありませんが、それは内緒にしておきます。
最近は『読めば人生の役に立つ』という実用性が映画本にも求められるみたいですが、そんな内容にはまったくなっていません。まぁインタビューしたみなさんの言ってることもバラバラですし、必殺シリーズという作品自体も『仕掛人』や『仕事人』など時代によってバラバラですから、そういう意味では多様性に富んだ、どこか偏屈で時代に逆行している本かもしれません。
もし『役に立ちました』『勉強になりました』と読者の方に言われれば、それはそれで感謝するしかないんですが。どんな反響があるか怖くもあり、楽しみでもあります」
高鳥都(たかとり・みやこ)
1980年生まれ。2010年よりライターとしての活動をスタートし、『映画秘宝』『昭和の謎99』『昭和の不思議101』などに執筆。編著に『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』、共著に『漫画+映画!』『完全版アナーキー日本映画史1959-2016』ほか多数。
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