ブログから論壇は作れたのか 12年7ヶ月で時代と合わなくなったBLOGOSにあっぱれ! - 中川 淳一郎

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※この記事は2022年03月29日にBLOGOSで公開されたものです

2022年3月31日をもって論壇サイト・BLOGOSが更新を停止、5月31日でサイトをクローズし、12年7ヶ月の歴史の幕を引く。BLOGOSの果たした役割や問題点等については、先日、私・中川淳一郎と常見陽平で語り合った。

「訪問はするけど読んでいなかった」ブログポータルサイト『BLOGOS』とは何だったのか 中川淳一郎×常見陽平対談

BLOGOSとは一体どのようなサイトかといえば、解説ページには「日本初、提言型ニュースサイト」を謳い「政治家から中学生までの意見がフラットに並ぶ面白さ」とある。そして3つの約束として「フィルタがかからない生の声を伝えます」「意見を発信できる土壌を作ります」「『提言』が生まれる場を目指します」とされた。

https://blogos.com/guide/about/

私も自分のライブドアブログを転載させてもらうほか、「今月のあっぱれ」という連載では、その月に目覚ましい活躍をした人々に張本勲氏のごとく「あっぱれ!」を入れた。その対象は、NHK紅白歌合戦のスタッフ、ガチャピン、ブロガー全般、私の知り合いの女性ライター、そして『サンデーモーニング』を降板した張本勲氏、そして今回は最終回ということでBLOGOS本体に「あっぱれ」を入れる。

どこがホメポイントかといえば、私自身は「なんだかよく分からんが雑多過ぎてまとまっていない」という点が案外好きだった。あと、人気のある記事が、私の志向に案外合っていたのだ。左派からすれば「ネトウヨめ!」と言いたくなるだろうが、実際は中道左派的な音喜多駿氏の記事が人気になったり、橋下徹氏のツイートまとめも同様に人気になったりしていた。

私は理想論者ではなく、超現実論者であり、自分では中道左派から中道右派をウロウロするタイプだと思っている。要するに、「アベは許せない!」や「立憲民主党はパヨク!」という結論に向けた原稿を書くのではなく、その都度是々非々で原稿を書くし、意見も言う。だからこそ左派からは「ネトウヨ!」と罵られ、ネトウヨからは「パヨク!」と言われてしまうのである。

BLOGOSについてはバリバリの左派も右派もいたものの、ランキングの上位に来るような意見は案外是々非々的でかつ明確な思想を決めていない人々のものだったように感じられる。そして当然左右両側もランキング上位入りしていたため、冒頭の多様な意見のプラットフォームを目指す、と解釈できる「約束」については守られていたといえよう。

編集部が付けた15文字程度の短縮タイトルも要点を簡潔にまとめており、読みたい、という気持ちをそそるものがあった。だが、ブログの著者としては「私の意図はそこにはない」と言いたくなることもあっただろう。そうした場合、撤退をチラつかされて編集部もその点は困っていたのではないだろうか。私のように、自分の文章に対して一切の愛情もプライドもない人間からすれば「あとはどうぞ自由にやってください」というスタンスなのだが、案外、この「著者対応」ってヤツがかなり大変だったのでは、とも思うのである。もちろん、「このブログ記事は転載してもらいたくなかった」といった意見もあったことだろう。

転載すべきでない記事を載せた長谷川豊事件

とはいっても、編集部は闇雲に全部を転載しているわけではなく、「オピニオン」「貴重な体験」「鋭い分析」といったブログ記事を選んでいる。当然、私が書くニンテンドー3DSの『三國志』攻略法などは載らないし、食べたものを紹介するだけのブログも出ない。こうした編集作業はされていたのである。

ただし、2016年、フリーアナウンサーの長谷川豊氏が「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!今のシステムは日本を亡ぼすだけだ!!」という優生思想とも取れる主張をした時のブログを掲載したことについては、長谷川氏のみならず、転載先であるBLOGOSも非難された。後に削除・謝罪文の掲載という流れになった。ネットでは「お前のブログでやれ」「チラシの裏に書いておけ」という言葉があるが、多くの人はBLOGOSを公的なニュースサイトと捉えていたのである。私もこの件については長谷川氏との関係性に対する忖度はあったかもしれないが、明らかに炎上案件だったため、掲載のボタンを押した担当者は危機感が弱かったかもしれない。

私自身も自分がブログに書きなぐった文章が転載された時は「これを載せるか……」と思ったことはあるが、「これは載らないだろう」と思ったブログ記事はほぼ載らなかった。その面では明確な編集方針はあったといえよう。そして「これは載るだろう!」と自信満々だった2021年7月のコロナの政府分科会・尾身茂会長を批判する文章は掲載されなかった。BLOGOSでランキング上位を取るであろう感触はあったのだが、掲載にさえ至らなかった。

理由を田野幸伸編集長にメールで聞いたところ「『バカ』という言葉が多過ぎます」とのことだった。ガハハハハハハ、いつの間にか編集方針で基準を変えていたのですね。より健全なサイトを目指したことは理解します!

「名物」であったコメント欄を閉鎖

かくして2000年代中盤~2010年代前半にブログ界隈で存在感を示してきたオッサンを中心としたブロガー(含む政治家)がBLOGOSに次々と参入し、活況を呈したように見えていた。その理由の一つが、コメント数が表示されることにあった。2010年代中盤以降、多くのニュースサイトはコメント欄が炎上の温床になっているほか、著者を傷つけたり他者を誹謗中傷する場になっていることから続々と廃止。

Yahoo!ニュースは維持していたし、東洋経済オンラインも装備していたし、BLOGOSも活発な読者の意見こそこの場の価値の一つ、と考えていたのだろう。BLOGOSのコメント欄は名物ともいえるものだった。

だが、明らかにコメントの質は低かった。冒頭で紹介した常見陽平の記事への意見の大半は「自撮りがキモい」に始まり、「チクショー、またグロ画像見てしまった。事前に注意書き入れてくれよ」といったものだった。私に対しても「アル中のくせにエラソーに意見言いやがって」というものが多かった。

基本、BLOGOSのコメント欄は「アンチが集まる場所」という認識を私はしていたため見なかったが、常見は反応が気になったのだろう。必ずチェックし、アンチに対してツイッター等で反論することもあった。ただ、自分の書いたコメントがどのように評価されているかを見たい人や、自分の「同志」がどれだけ著者をボコボコに叩いている人なのかを見る場として、一つのコミュニティを形成していたのだと思う。著者としてはまぁ、不快ではあるが、アンチの集団からすれば一体感を得られる快適な空間だったことだろう。

だからこそ、BLOGOSはコメント欄を閉鎖し、実名のフェイスブック経由でのコメントしかできない措置を取った。田野編集長は「あのような誹謗中傷が書き込まれる場所を放置しているのは忍びなかった」と語った。確かに、編集部が訴えられる恐れもあるだけに仕方のない措置だったといえよう。

芸能・スポーツ・皇室に勝てなかった「オピニオン」

さて、次のテーマに移る。BLOGOSは元々「ネット発言論人」が活躍する場所という側面があった。それはブロガーであり、ブログを熱心に更新する政治家や様々なプロである。しかし、ある時からニュースサイトの転載が上位を席巻する事態になった。この時、私はBLOGOSが「負けた」と思ったのだ。

私が編集にかかわっていたNEWSポストセブンは、女性セブン・週刊ポストの記事をネット用に編集するサイトだが、芸能人やスポーツ選手のスキャンダルを掲載し、これが実に多数のPVを獲得する。この記事をBLOGOSに配信したのだが、配信直後から我々の芸能・スポーツ、そして皇室記事がランキング上位を席巻するのだ。結局、読者はこの手の下世話なネタを読みたいわけで、「ネット言論人による多様な意見」よりもオールドメディアの著名人関連記事の方が強いことが露呈してしまったのだ。

自分がかかわるサイトが配信していて言うのもナンだが、この時は若干の寂しさを覚えた。「あぁ、オレがこの10年以上精魂込めてやってきたネットが、芸能人・スポーツ選手・皇室関連の話題には勝てないのか……」と。別の出版社系配信メディアもBLOGOSでは強く、この思いは一層強くなっていった。

こうした状況に加え、BLOGOSの役割が終わったことについては、BLOGOSの運営会社・LINEの親会社であるZホールディングス傘下のヤフーが運営する「Yahoo!ニュース個人」が存在することも影響したのではなかろうか。プロによるオピニオンについては「Yahoo!ニュース個人」は圧倒的強さを誇る。傘下にBLOGOSと「個人」の両方を持つことのハレーションは間違いなくあるだろう。

「個人」は契約している著者が「個人」に書く原稿をオリジナルで作る。BLOGOSはオリジナル記事はあるものの、多くは「転載」である。より公共的な役割が求められるZホールディングスとしては、転載から受けるデメリットと炎上や訴訟を考慮したのではないか。

メディア運営をしているとこの3つの懸案事項は常につきまとうものだ。だからこそ、Yahoo!ニュースも配信元には厳格なファクトチェックを求めるし、エビデンスに乏しい医療系記事は書かないよう指導してくる。これが影響力のあるポータルサイトの役割の一つである。

そういった意味では2022年5月31日をもってBLOGOSがサービス終焉を迎えるのは、これまで様々なネットサービスが終焉を終えたのと同様に、「時代と合わなくなった」ということだろう。それは動きの速いネット界隈ではごく当たり前の話である。私もサイバーエージェントとこの21年間一緒に仕事をしてきたが、サービスのクローズは何度も見てきた。

BLOGOSもその一環である。こうした終了するサービスがあってネットは発展する。間違いなく「ブログから論壇を作る」という流れをBLOGOSは作った。かかわったスタッフの皆さんには心からの「あっぱれ!」を入れたい次第である。これまでおつかれさまでした。そしてありがとうございました! 今後の皆さんの活躍を祈念します。