格安を超えて爆安。月290円〜の「HISモバイル」は通話メインの人にオススメな格安SIM(石野純也)
▲HISモバイルが、6月上旬に新料金プランを導入する。最安の料金は290円

旅行代理店大手のHISとMVNOの老舗である日本通信がタッグを組んで展開しているHISモバイルが、6月に料金プランを改定します。低容量ユーザー向けの既存プラン「格安ステップ」を刷新する形で、最低利用料は税込みで290円からとまさに格安を超えた爆安。3G停波でスマホへの移行を余儀なくされている、通話利用が主体のユーザーを取り込むのが狙いです。

HISモバイルの新料金プランは、1GBプラン、3GB、7GBプランの3つに分かれます。290円なのは、最低容量の1GBプラン。通常料金は550円ですが、同プランでデータ使用量が100MB未満の場合に290円になります。同社にMVNEとして回線を提供する日本通信は、1GBプランを290円で提供しているため、HISモバイルが最安というわけではありませんが、同社の代表取締役社長、猪越英知氏によると、「データ容量を使い切ったあとも低速通信(200Kbps)できる」のが大きな違いだといいます。

▲290円になるのはデータ利用が100MB未満の場合

ドコモとの交渉で総務大臣裁定を勝ち取り、音声卸の値下げに成功した日本通信から回線の提供を受けているだけに、通話料も割安です。アプリなどの利用は一切不要で、標準の通話料は30秒9円。これは、回線提供元である日本通信の30秒11円よりも2円安い設定です。

日本通信にはかなり無理を言いつつ、HISモバイル側の利益を削ることでこの価格を実現したとのこと。その意味では、日本通信よりも音声通話の利用が多いユーザーに向いた料金プランと言えるかもしれません。

▲音声通話料は30秒9円。アプリの利用も不要だ

標準の音声通話料金が安いことに加え、かけ放題も割安に提供しています。100MB未満の場合、5分かけ放題をつけた料金は790円。完全かけ放題にしても1770円と、非常にリーズナブルです。

100MBを超えるとそれぞれ1050円、2030円に料金は上がりますが、音声通話の利用が多いユーザーにはうれしい金額。音声通話のみを使いたい場合、日本通信の290円プランよりも料金は安くなります。

3G停波に伴い、スマホに乗り換えたものの、ほとんど通話しか使わないというユーザーのいい選択肢になりそうです。

▲5分かけ放題や完全かけ放題もリーズナブルな価格で提供される

ただ、290円で本当に利益が出るのか……というのは至極もっともな疑問だと思います。仮に1万契約あっても、290円で済んでしった場合、HISモバイルには月に290万円しか入らないからです。これでは、人件費や家賃などのコストすらまかないきれないでしょう。こうした見方に対し、猪越氏は290円だけで済むユーザーは実際には少ないのではという見方を示しています。

上記のように、音声通話料や音声定額料が割安なため、290円の最低料金で維持する人は少なく、実際には5分かけ放題や完全かけ放題をつけ、790円なり1770円なりの料金を支払う人が大勢を占めるのではというわけです。データ通信の料金を割安にしてきたMVNOが音声通話料で稼ぐ構図には何となく違和感もありますが、音声卸の値下げを勝ち取った日本通信の回線を使ううえでは合理的な戦略です。

290円という金額に目を奪われがちですが、3GBや7GBのプランも割安。特に7GBプランは月額990円と1000円切っており、破壊力があります。7GBというと、数年前には大手キャリアの料金プランで主力だったデータ容量。各種割引適用時で3000円台でしたが、HISモバイルの7GBプランは何の条件もなく990円です。

▲290円の陰に隠れてしまいがちだが、7GBプランも990円と税込みで1000円を下回った

▲ほかにも、3GBプランが用意されている。音声通話定額を組み合わせた際の各料金はこの表のとおり

ユーザーのデータ利用量は、年々上がっていますが、7GBはある程度Wi-Fiにオフロードすれば十分な容量。総務省の実施した調査ではデータ利用量が月8GB未満のユーザーは、全体の74.7%にもおよびます。7GBあればこの大半をカバーでき、対象となる潜在的な利用者の数は非常に多いと言えます。MVNO他社でも7GBがここまで安い会社はなく、インパクトが大きいプランです。

この料金プランの導入に合わせ、HISモバイルはフランチャイズ方式でリアル店舗の展開も拡大していく構えです。1店舗目は群馬県太田市。賃料の安い郊外にある空き店舗などを活用することで、コストを抑えながら出店を拡大させていく方針だといいます。この店舗では、HISモバイルの新規契約だけでなく、スマホの修理も行っていくそうです。

賃料が安いのは人が来ないからでは、と思われるかもしれませんが、猪越氏は、「Androidスマホの修理のように、ほかがやっていないサービスを提供することで集客は可能」だといいます。人通りの多いところに店舗を構え、フラッと訪れるユーザーを対象にするのではなく、サービスの独自性を調べてあえて来店するユーザーを狙った店舗と言えるでしょう。

▲フランチャイズ方式でリアル店舗を出店する

こうしたリアルな店舗も、3Gの停波でスマホに乗り換えざるをえなくなったユーザーと相性がよさそうです。ただ、折りたたみ型のベーシックフォンを使い続けたいユーザーも多そうなだけに、端末のラインナップがスマホ一辺倒になっているのは気になるところ。Androidを活用したベーシックフォンタイプの端末を増やしてもいいのかもしれません。

筆者個人としては、この料金であれば固定電話代わりにも使いたいと思いました。かつてエイビットが発売していた「ホムテル3G」のような端末の4G版があれば、自宅や親の家に設置しておき、安価に電話を使うことができそうです。音声通話に商機を見出したMVNOなだけに、電話が使いやすい端末のラインナップを拡充することも期待しています。

最後になりますが、Engadget日本版の終了に伴い、本連載も今回が最終回になります。Engadgetの体裁に沿って他の媒体以上にぶっちゃけることや面白がることを意識しつつ、原稿を書いてきましたが、ここまで続けられたのは読者の方の支持があってこそ。そんな原稿を一緒に生み出してくれた編集部の皆様にも、ここで感謝の意を表したいと思います。15年9月から約6年半の間、本当にありがとうございました。