後発のモバイル固定電話で巻き返しを狙うNTT、ドコモの「homeでんわ」を解説(石野純也)
▲ドコモは、モバイルネットワーク経由で固定電話の通話を可能にするhomeでんわを3月下旬にスタートする。写真はその端末のhomeでんわ HP01

ドコモは、モバイルネットワークを介した固定電話の利用を可能にする「homeでんわ」を発表しました。提供は、3月下旬に開始される予定です。専用機器の「homeでんわ HP01」に据え置き型の電話を接続して利用する形で、電話番号に関しては「03」などから始まる固定電話用のものが割り当てられます。

端末のデザインやネーミングから分かるように、homeでんわは8月にスタートした「home 5G」とのセット利用が想定されているサービスです。home 5Gは固定通信網の代わりとして、4Gや5Gといったモバイルネットワークを使うサービスですが、FTTHの「ひかり電話」に相当するような電話のサービスがありませんでした。固定網の代替と言いつつも、ネットだけで固定電話が利用できなかったというわけです。

▲同じ固定代替サービスのhome 5Gとセットで使うことが想定されている

料金プランも、セット利用が強く意識されたものになっています。homeでんわ向けには、家族内やビジネスグループ内の通話が無料になる「homeでんわ ライト」と、550円分無料通話や転送でんわなどの付加機能がコミコミになった「homeでんわベーシック」の2種類が提供されます。単独でも利用はできますが、前者が1078円、後者が2178円とひかり電話などと比べると少々割高です。

一方で、home 5Gなどをはじめとするドコモ回線とセットで契約すると、「homeでんわセット割」が適用され、どちらの料金プランに対しても528円の割引が受けられます。割引適用時の価格は、homeでんわ ライトが550円、homeでんわ ベーシックが1650円で、NTT東西のひかり電話の「基本プラン」や「ひかり電話A」と同額になります。ひかり電話もフレッツ光などの回線契約があるユーザー向けのサービスですが、homeでんわも同様に、ネット回線のhome 5Gが前提になっていると言えるでしょう。

▲料金は1078円からだが、割引を適用すると550円まで下がる

ただし、homeでんわセット割の対象には、home 5Gだけでなく、ドコモのスマートフォンも含まれます。そのため、データ通信をテザリングの容量まで無制限な「5Gギガホ」などの料金プランに一本化しつつ、固定電話を使うためにhomeでんわを契約することも可能。一人暮らしの場合、固定回線まで引くのは……とためらわれるかもしれませんが、そのようなユーザーもスマホさえ契約していれば割引価格が適用されます。

NTTによる完全子会社化で実現

20年12月にNTTの完全子会社になったドコモですが、homeでんわのようなサービスを提供できるようになったのは、その成果の1つだといいます。NTTグループでは、先に挙げたひかり電話をNTT東西が提供していますが、こうしたサービスとのバッティングを気にする必要がなくなったからです。NTTの澤田純社長も、決算説明会で「完全子会社化で固定、移動体の融合サービスをやると言っていたが、homeでんわはその1つ」と語っています。

▲NTTの澤田社長は、決算説明会で「homeでんわは固定と移動の融合サービスの1つ」と語った

NTTグループ同士で競合してしまう点は完全子会社化後も同じですが、競争環境を念頭に置くと状況は変わってきます。澤田氏によると、「すでに(homeでんわと同様のサービスを)他社がやっているので、NTT東西としてはどんどん(ユーザーを)取られている状況」だといいます。その巻き返し策として導入したのが、homeでんわというわけです。

例えば、SoftBank Airを固定代替サービスとして提供するソフトバンクは、「おうちのでんわ」を提供しています。こちらも、homeでんわと同様、LTE回線を使った固定電話のサービスで、「でんわまとめて割」を適用した場合の基本料金は550円から。ワイモバイルやLINEMOあての発信にはなぜか通話料がかかりますが、ソフトバンクあての通話料は無料になります。

▲ソフトバンクの「おうちのでんわ」も、割引適用後の料金は550円

同様に、KDDIにもLTE回線を使った「ホーム電話」や「ホームプラス電話」と呼ばれるサービスがあります。こちらの料金は月額1463円。Wi-Fiルーターをセットで契約すると385円の割引を受けることができ、月額基本料は1078円まで下がります。

ドコモやソフトバンクと比べると少々高めに設定されていますが、モバイル回線を持ついずれの会社も同種のサービスは提供済み。最後発のドコモが「スタートラインに立つ」(澤田氏)ためのサービスだと言えるでしょう。

固定回線の代替として登場したドコモのhome 5Gは、その手軽さが受け、販売は好調だといいます。サービス開始から間もない21年9月末で契約数は8万を突破、同年12月までの第3四半期には19万契約まで伸びています。この全員がhomeでんわを契約するとは限りませんが、ポテンシャルは十分あります。澤田氏が「(通信の)ラストワンマイルはコストを考えると、無線が多いことになっていく」と語っていたように、今後の電話の主流になっていく可能性もありそうです。

▲ドコモの第3四半期決算の資料。home 5Gは19万契約まで伸びていることが分かる