コロナ禍でも倒れない映画館! 歴代2番目にまで興行収入が落ちても生き残れた収入源とは

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日本映画製作者連盟(映連)は1月25日、2021年における日本映画産業統計を発表した。それによると、全国の興行収入の総額は1,618億9,300万円。
これは2000年からの統計発表の中でも2番目に低い金額だ。

ちなみに歴代最低の興行収入を記録したのは、
その前年となる2020年で、1,432億8,500万円。
2020年、2021年のいずれも、新型コロナウイルス感染症による影響だ。

日本の国内興行収入は長らく横ばいと言われていたが、
コロナ禍直前の2019年は2,611億8,000万円と歴代最高を記録し、毎年微増ながら上向き傾向ではあった。

しかし、コロナ禍の対策強化によって、わずか1年でおよそ半減してしまった。

ところが、興行収入が半減しているにもかかわらず、
映画館のスクリーン数は微増を続けているのだ。
・2019年…3583スクリーン、このうち3165スクリーンはシネコン
・2020年…3616スクリーン、このうち3192スクリーンはシネコン
・2021年…3648スクリーン、このうち3229スクリーンはシネコン

シネコンとはシネマコンプレックス( Cinema Complex)の略で、同一施設内に複数のスクリーンを持つ映画館のことをいう。

国内の大手シネコンは以下の通り。
・イオンシネマ…イオングループ
・TOHOシネマズ…東宝系
・ユナイテッドシネマ、シネプレックス…ローソングループ
・MOVIX、ピカデリー…松竹系
・109シネマズ…東急系
・T・ジョイ…東映系
・コロナシネマワールド
・シネマサンシャイン

映画館は、コロナ禍により苦境に立たされているのは明らかだが、それでも新規オープンやリニューアルによって、スクリーン数を増やし続けているのだ。

映画館は、どのようなビジネスモデルを展開しているのだろうか?

そこで今回は、主にシネコンにおける収入源について紹介する。


■鑑賞料金
現在、映画の鑑賞料金(入場料金やチケット代ともいう)の一般料金は1,900円だ。
・毎月1日のファーストデー
・映画の日(12月1日)
・レイトショー
・レディースデー
・シニア割引
・ペア割引
・曜日割引や会員割引など映画館独自の割引
これらの割引サービスを適用すると一般料金でも1,000円〜1,500円程度で鑑賞することができる。
また、ムビチケや前売券であれば1,500円で鑑賞できる。


新宿バルト9(東京・新宿区)のチケット販売スペース


この鑑賞料金のおよそ半分が興行主、つまり映画館の取り分となる。
残り半分は、配給会社や映画制作のプロダクションなどに分配される。
ただし、上映期間や配給会社との契約内容によって、映画館の取り分は半分以下の場合もあれば半分以上の場合もある。

冒頭で年間の興行収入について触れたが、興行収入とはこの鑑賞料金のことである。


■グッズ販売
映画館ではパンフレットをはじめ、主に上映中作品のグッズが販売されている。


グランドシネマサンシャイン池袋(東京・豊島区)のグッズ販売スペース


グッズ販売は一般的な物販と同じく仕入れて販売することになっており、委託販売のものから買取販売のものまである。

映画館における物販スペースはあまり大きくない印象ではあるが、映画館でしか購入できないグッズもあるため、必ず立ち寄るという人も多い。

人気作のパンフレットやグッズは公開直後に売り切れる場合もあり、映画館としては大切な収入源のひとつといえる。


映画館のグッズ販売ではパンフレットやムビチケカードも購入できる



■映画館での飲食販売
フード販売スペースでは、ドリンクやポップコーン、そのほかの飲食物などが販売されている。


丸の内ピカデリー ドルビーシネマ(東京・千代田区)のフード販売スペース



TOHOシネマズのポップコーンL(塩&キャラメル)


コロナ禍では、シアター内の飲食も「本編がはじまってから」などの制限を設けている映画館もある。
以前のように積極的な飲食提供が難しい状況だが、映画館の収入源という面では飲食販売が大きな役割を担っているのは間違いない。

人気作品や動員数が多い作品、イベント上映などの際は、フード販売スペースには長蛇の列ができる。ときにはドリンクを購入するだけでも一苦労する場合もある。


イオンシネマ海老名(神奈川・海老名市)では「映画すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ」のオリジナルグッズ「ふぁいぶポップコーンバケット」を販売(左)
新宿バルト9では「劇場版 呪術廻戦 0」のオリジナルドリンクを販売(右)


上映中作品とのコラボグッズやコラボメニューが販売されることも珍しくない。ファンの動員を増やすため、映画館独自のサービスやメニューを提供することで、収入だけでなくほかの映画館との差別化も図っているのだ。


■映画館のロビー活用
映画館によって異なるがロビーには、
・待合スペース
・物販スペース
・フード販売スペース
・発券機スペース
・チケット販売スペース
・インフォメーションスペース(案内所)
・ロビーから近い場所に設置されたトイレ
これらが存在する。

特にシネコンではロビーが広く、ここ数年の間にオープンした新しいシネコンのロビーは、非日常を演出した幻想的な装飾も特徴だ。


2019年6月にオープンしたグランドシネマサンシャシン池袋のロビーは吹き抜け



2019年11月にオープンした109シネマズグランベリーパーク(東京・町田市)のロビー



2020年6月にオープンしたT・ジョイ横浜(神奈川・横浜市西区)のロビー


こうした広いロビーを活用して、プロモーションスペースやチラシなどの配布をするサンプリングスペースとして、企業に有料で貸し出すケースもある。

ただし、映画館側の事情や地域性のほか、コロナ禍では積極的に貸し出せないという実情もあるようで、最近ではあまり見かけない。

ロビーとは別に、シアター入場時にスタッフが手渡す「BOXサンプリング」と呼ばれるサンプリングプロモーションもある。


■レンタルシアター
シアター自体を貸し出すサービスを実施している映画館もある。イオンシネマやHUMAX CINEMA(ヒューマックスシネマ)、ユナイテッド・シネマなどのシネコンから、ミニシアター、プライベートシアターと呼ばれる映画館まで、シアターのレンタル(貸し切り)サービスを実施している。

会議や講演会、発表会、各種パーティーなど様々な催しにシアターが利用できるサービスだが、こちらもコロナ禍になってからは特にシネコンではサービスを休止している映画館も多く、積極的に取り組めない様子がうかがえる。


イオンシネマでは2020年3月からシアターレンタルを休止している


一方で、ミニシアターやプライベートシアターと呼ばれる映画館では、1時間あたり2万〜3万円程度での貸し出しを実施しているケースもある。

ちなみに、シアターを貸し切って上映していない作品のDVDやBlu-rayを持ち込み、身内やファンだけで楽しみたいという発想は結構ありがちだが、映画館側はたとえ貸し切りであっても「版権作品の上映はNG」というルールが一般的だ。

公に版権作品の上映可能を謳っている映画館は恐らくひとつもない。もちろん、プライベート動画や版権作品ではない映像を流すことは問題ないため、そういう意味での「上映会」は可能だ。


■スクリーン広告(シネアド)
シネアドはシネマ・アドバタイジングの略で、スクリーンに上映するCMのこと。映画本編の前後に上映される広告映像がこのシネアドにあたり、これも映画館の収益源となっている。


本編上映前には予告映像のほかにも様々な広告映像が上映される


コロナ禍になってからは、シアター内での感染症対策に関する映像が増えたが、企業広告も見かける。また、本編作品に合わせたイベントやキャンペーンの映像が流れるケースもよく見かける。

このように、映画館は映画上映以外にも様々なサービスで収入源を確保している。

・レンタルビデオ店登場
・DVDやBlu-rayの高品質媒体の普及
・近年のNetflix(ネットフリックス)など定額動画配信サービス台頭
・新型コロナ感染症による制限
これらの社会変化により、映像作品を鑑賞する環境も激変しており、
映画館の経営は厳しい状況が続いている。

新型コロナウイルス感染症はいまだに終息しておらず、今後も厳しい状況が続いていくことが予想される。

映画館は、これまでも知恵を絞り企業努力によって数々の難局を乗り越えてきたことで
、我々に多くの名作や感動体験を届けてくれた。

今後も、映画館ならではの幸福感が得られる体験を提供し続けてほしい。

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一般社団法人日本映画製作者連盟


執筆:S-MAX編集部 2106bpm