「自立しすぎたこじらせ女」を好む激レア男。彼が隠し持っていた衝撃の本性とは?
結婚・出産・転職。
20代には人生を大きく変えるイベントがぎゅっと詰まっている。
そんな大きな決断をまえにすると、多くの人は悩む。
世間一般で言われる“幸せ”と、「わたしはわたし」と考える“セルフ・ラブ”はズレるから―。
これはさまざまな葛藤を抱えながら、自分だけの正解を見つけようともがく、20代女子の内面を描いた物語。
これまでは「身体の関係だけで十分」と考えるミア、結婚を夢見るこじらせ女子マイ、“若妻ステータス”に取り憑かれたレイカを紹介した。
▶前回:望めばいつでも結婚できると思っていた…。”若妻ステータス”に取り憑かれた女の末路

File4 工藤マキ(27) 大手IT企業勤務の場合
どんな幸せも、自分で自分を幸せにできた上で成り立つもの。誰かに幸せにしてもらおうと望むものではない。
そう思ってきた。
けれどもし、好きになる男性は決まって「隙のある家庭的な女性」がタイプだったら?
自分が目指すキャリアと、好きな男性が望む女性のキャリアが一致しない場合、どうすべきなのだろうか。
◆
「お前って女性なのに本当すごいよな。まだまだ上目指して泥臭く働いてるし、そのうえ結果もちゃんと出してるし。
俺の周りの女性なんて社会人3年目までは野心的だったけど、なんかもう頑張らなくていいや、安定重視でいこうってなってる人ばっかりだもん」
大学時代のサークルの先輩であり、元彼でもあるヤマトはそう言った。
ヤマトは総合商社勤務で、今年8年目。仕事に対する価値観が似ていて、就活の時から仕事の相談に乗ってもらっていた。
今日は、最近悩んでいる今後のキャリアについて相談したくて、新居祝いも兼ねてアポを取りつけた。同じサークル出身で同期入社のタイキも、なぜか一緒だった。
「仕事で認められるのが一番嬉しいんだよね。将来的には独立したいし、それまでは実力つけないと」
「ほんっと、マキはなんでも完璧にやってるよな。勇ましいというか。絶対同期にはなりたくないわ」
嫌そうな顔でビールをぐびっと飲んでいるタイキの言葉に、むっとした顔で答えてみる。
「失礼な。誰にでもできる仕事をやってる時のストレスが、すごいんだよね。まだまだ自分は普通じゃないって思っちゃってるかも」
「おい、俺みたいなどんな仕事でも引き受ける存在がいるから、会社が回るんだぞ」
どこか悲しげな表情で、冗談まじりにタイキが言う。
「まあ、マキは会社を引っ張っていく存在だろうけどさ。仕事ばっかじゃなくてそろそろ結婚とか考えないの?男はね、隙がない女じゃなくて、どこか放っておけなくて、帰ったらあったかいご飯を用意してくれるような女がいいのよ、結局」
「そんな男、こっちから願い下げだし」
ヤマトの発言に、ちょっとムキになって言ってしまった。
「俺は、仕事頑張ってる奥さんの方がいいけどなあ。お互い切磋琢磨し合えるというか」
タイキにそう言われたけれど、心から喜べない。私には、悲しき“ある傾向”があったのだ。
バリキャリ好きなハイスペ男子出現?
私はタイキよりも、ヤマトのような男のほうが好みなのだ。
成功するキャリアと、1人で家族を養えるほどの収入。そして全身から滲み出るような自信がある人。
もちろんそういう男性は競争率が高く、これまで何度もライバルたちと戦ってきた。そして結局選ばれるのは、一般職の子(顔は私と同じくらい)や、寿退社狙いのCAの子だった。
「私だって、ちゃんと知ったら隙だらけだし」
ムキになって出た言葉は、日本のサッカーチームが勝利を決めたことで沸き起こった二人の歓声によってかき消された。
仕事が好きとは言っても、恋愛を捨ててまで選べるものではない。なんなら恋愛体質な私は、恋愛なしでは生活が成り立たないと言っても過言ではない。
仕事好きな私を好むハイスペ男性は、いないのだろうか。

セミナーでの出会い
「普段どんなお仕事されてるんですか?」
今日はどうしても参加したいセミナーがあり、会社の同期であるリエを誘って参加していた。ビジネス人脈を築くためには、いろんな業種や職種の人が集まるセミナーに参加するのが一番良い手だった。
声をかけてきたのは、メディアの会社で働いているという男性2人組だった。
「ITの会社の人事で、おもに新卒の採用をします」
リエは、嫌な印象は与えない程度に、自信が滲み出ている微笑みで返す。
「お、僕も人事で社内のヒューマンリソースの最適化をしているんです。ちょっと詳しく聞きたいな。えっと…マキさんは?」
胸につけていた名前をちらっと見て、その男は尋ねる。
「私も同じ会社で、データアナリストやってます」
「実は僕も、データをよく使う部署にいるんです。もしよろしければ、もう少し詳しくお話ししませんか?」
優しい口調でスマートさが滲み出ている、もう1人の男が口を開いた。
私たちは2対2で別れて、それぞれに話すことにした。
◆
リエと二人、駅までの帰り道。
「マキ、なんか女出てなかった?」
ニヤニヤしながら、リエが私の顔をのぞく。
「仕事の話してたはずなんだけど、意気投合して結構プライベートなことも話したの。後日また会うことになっちゃった。彼、結構やり手っぽいし意識しちゃうわ〜!」
「まさかのセミナーで出会えるなんて!いいなあ」
ずっと妥協で付き合ってきた私を見ているリエは、私以上に興奮した様子だ。
◆
「で、どうだった?マサさんと」
リエと過ごす華金。今日はコリドー街には行かず、銀座にあるルーフトップバーでディナー。
「私完全にスイッチ入ったかも。価値観とか趣味が似てて、何より頭の良い女性が好きっていう希少価値な男性なのよ。しかも持っているものとか、それなりに稼いでいるんだろうなって感じで」
「え、いいじゃん。競争率高そうだけど、頭が良い女性が好きな時点で、敵が減るね」
「いつも恋すると前のめりになっちゃうけど、彼はきっと独立した女性が好きだから、心を落ち着けて余裕ぶって戦うわ」
「うん、焦りが見えると逃げちゃうからね。慎重に行きなよ」
携帯をチラチラ見ながら、リエとの会話を楽しむ。彼とは、四六時中連絡をとるような関係ではなかった。
ずっと相手と繋がっているような恋愛も好きだけど、長い付き合いを考えると、落ち着いた関係が良いだろう。自分にそう言い聞かせる。
―ピロン
『明日13時頃、代官山で待ち合わせよう』
彼からデートについてのLINEだ。
順調に進んでいると思われるこの状況に、思わず口元が緩んだ。
待ち望んだ相手が持つ裏の顔とは
セミナーのあと5回のデートを経て、私たちは付き合うことになった。夜景の見える公園で、目を見て告白されたのだ。
今まで、体の関係からなし崩し的に付き合うこともあった私にとって、ちゃんとした告白をされて付き合うのは久しぶりだった。
「ついに出会えた運命の相手と順調みたいで、親友としてもめちゃくちゃ嬉しいよ」
自分のことのように喜んでくれるリエを見て、改めて親友の偉大さを実感する。
「リエは最近どうなの?彼氏と」
「相変わらず喧嘩ばっかり。休日は、当たり前のように二人で過ごしてるから、友達との予定を入れるのが心苦しくて。でも、人付き合いが悪くなってるのは、よくないなって最近思ってるんだよねえ」
当たり前のように二人で過ごす、か…。
付き合って2ヶ月弱になる私とマサは、平日はお互い仕事が早く終われば会うし、休日もお互い他の予定がなければ会っている。
でもスケジュールの中心は、“お互い以外の予定”だ。
リエの話に、ちょっとだけ胸がモヤッとする。
◆
『金曜日、俺ん家で過ごさない?』
『ごめん、予定ある…。日曜は?』
『男友達とBBQだ』
今週は会えないことがたった今確定した。既読無視してスマホを伏せる。
先週も同じような状況だったが、私が彼に合わせてスケジュールを調整し、会うことができた。
「無理にとは言わないけど、少しはこっちの予定にも合わせてよ」
一人の部屋で愚痴が溢れる。
今日は、週の真ん中の水曜日。今週末会えないとなると、一気に仕事のモチベーションが下がる。すると彼からこんな提案がきた。
『今日会う?』
今週末会えずに拗ねていることを汲んで、提案してくれたのだろうか。単純な私の機嫌はすぐに良くなる。
『遅めになるけど、そうしよっか』
会えばお互い気持ちが繋がっていることを確認できる、気がした。なかなか会えないのは、本当に“友達付き合いを大切している人”だからなんだと。

その週の日曜日に…
「あれ、マサくんじゃない?」
今日はマサがBBQで会えないと行っていた、日曜日。普段行かないところに行きたくて、リエと三軒茶屋に来ていた。
信号の向かい側を、マサが女の人と手を繋いで歩いている。
サラサラのロングヘアに、ゆるくて自然体な服装。ひとをほっとさせるような可愛らしい彼女は、家庭的な雰囲気で私とは正反対だ。
これまで無理やり見て見ぬふりをしてきた違和感がどんどん膨れ上がり、次第に血の気が引くのを感じた。
その瞬間、それ以上傷つく前に、とっさにマサのLINEをブロックして削除した。
電話帳にない、LINEというSNSでしかつながりのない薄っぺらい関係。絶つのはこんなにも簡単だ。
何か事情があったかもしれないとか、たった一度の過ちかもしれないとかそういった淡い期待はなかった。こんなことをする男の彼女でいるなんて、私のプライドが許さなかった。
こんなことが起きたとき、彼氏の目の前で泣いて、もうしないなら許すと言える女だったならば。
好きになる人がいつか、ちゃんと私だけを見てくれる日がくるのだろうか。
答えは出ない。正解もわからない。それでも、知ってしまった今、前に進むしかない。
涙は出なかった。
そして、ずっと返事を保留していた転職先に、お願いしますとメールを送った。
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彼氏に満足できないけど、手放せない。結婚に貪欲な女を待ち受けていたこととは?

