ブレーキにはバックアップ機能が設けられている

 新車試乗などで、ブレーキについて語られることはあまりない。しかし、エンジンの加速性能や、操縦性にまつわるシャシー性能以上に、ブレーキにもっと注目が集まっていい。そして、高性能車ほど、優れたブレーキが装備され、その操作感覚は、まさに人とクルマが一体となったような快さを覚えさせるものだ。

 当然ながら、安全に減速し止まる点においても、ブレーキは安全の基本だ。そのブレーキが壊れたら大変だし、壊れるまででなくとも、性能低下を起こしたら事故につながりかねない。

 万一、ブレーキが利かなくなってはならないので、ブレーキにはバックアップ機能が設けられている。

 ブレーキは、ペダル操作を通じてマスターシリンダーから油圧が送られ、各車輪のブレーキを作動させ、パッドがローターやドラムと接触し、その摩擦によって熱が発生して、その熱を大気中に放出することで減速・停止が実現している。

 ペダル操作を確実にブレーキへ伝達する配管が破れるなどしたら、たちまちブレーキが利かなくなる。そこでブレーキ配管は二重の機構となっている。前輪と後輪の2系統に分けた配管や、X配管といって前後を交差状に配管し、左右どちらかの前後のブレーキで減速できるようにしている。しかし停止までの距離は、2倍前後伸びることになる。

 あるいは、通常は軽いペダル操作でブレーキが利いているのは倍力装置という機能を介しているからなのだが、万一この倍力装置が壊れた際にも、ペダルを思いきり力任せに踏めば減速する。

突然壊れることは考えにくいが定期点検は重要

 ブレーキを作動させる圧力を伝えるのは、ブレーキ液だ。これも次第に水分を含んで、油圧を正しく伝えにくくなる。そこで、定期的な交換が必要になる。また、パッドやローター、あるいはドラムも、摩擦させて使うため摩耗する。ことにパッドは減りやすいので、これも車検などを目安に減り具合を確認し、新品に交換することが肝心だ。またかなり距離を走り込んだクルマの場合は、ディスクやドラムも摩耗していくので、その交換を必要とする場合もある。

 ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)が壊れた場合は、通常と変わりなく減速できるが、滑りやすい路面状況などでの安定性は損なわれる恐れがある。

 何か部品が突然壊れるということは通常の運転ではまずないだろう。一方で、日々使っているクルマでは、ブレーキ液の劣化やパッドの摩耗などは徐々に進行することなので、気づきにくい。そこで、定期点検や車検の意味がでてくる。年間走行距離の違いで、一律にはいえないが、点検の際に必ず調べなければならない項目にブレーキがある。

 もう一つ、ブレーキ性能に関わるのがタイヤだ。ブレーキをいかに整備しても、あるいはブランド品の高性能ブレーキを装備しても、タイヤが摩耗していたり、グリップの高くないタイヤを装着していたりすると、本来のブレーキ性能を発揮しきれないことになる。ブレーキ性能とタイヤ性能は常に一組で考え、兼ね合いをはかることが、価格と性能との調和、そして安全を守る要になる。