実機で感じたiPhone 12|12 Proの違い。どちらを選ぶかは「価格」か「将来性」の2択(西田宗千佳)
▲iPhone 12とiPhone 12 Pro。サイズは全く同じだ。

さて、同じ誌面では、他のライターの方々がiPhone 12シリーズのレビューを書いていることだろう。筆者もこれからその話をするのだが、普通の切り口でも面白くない。

というわけで私は、「12か、12 Proか、どっちがいいの?」という話をしようと思う。まだ悩んでいる方は参考にしていただければ幸いだ。

サイズも同じ、ディスプレイも同じ。箱のサイズまで同じな「12」と「12 Pro」

今回貸し出されたのは、発売日が同じである「12」と「12 Pro」だ。これはなかなか悩ましい。正直、「12 mini」と「12 Pro Max」だったら全然悩まずに済む。キャラクターが全く異なるからだ。

だが「12」と「12 Pro」はサイズが全く同じで、仕上げとカメラが違う……という格好。サイズは本当に全く同じなので、ケースも同じものが使える。

▲正面から。さて、どちらがiPhone 12でしょうか?(答え:左)

iPhone 11まではディスプレイが違ったわけだが、12シリーズでは、どちらも有機ELに統一された。輝度が少々異なるようだが、普通に使っていて差がわかるものでもない。短時間の試用では「ぶっちゃけ同じ」に見えた。後述するが、今回から「有機ELであること」はとても大きなことになったので、「どちらも有機ELである」ことは望ましい。

さて、そうなると、どっちを選ぶべきやら。

しかしながら仕上げは対象的だ。背面が光沢でサイドがマットな「12」、背面がマットでサイドが光沢な「12 Pro」。今回借りたブルーとシルバーという話であれば、好みはブルーではある。だが、まさに「スターリングシルバー」という感じのサイドの仕上げは、これはこれで好ましい。「白いiPhone」を求める人にとって、実はシルバーはいい色なのではないか、と思う。新色・パシフィックブルーもいい色なのだが、正直に言うと筆者の好みは、「12」のブルーだ。

▲iPhone 12 Proの、シルバー(左)とパシフィックブルー(右)。空の青というより海の青。

ちなみに箱は、「12」が白で「12 Pro」がブラックである。どちらも同じ大きさで、ACアダプターとヘッドホンが付属しなくなった分、厚みが従来の箱の半分くらいになっている。

▲箱の色は白(12)と黒(12 Pro)で違うが、サイズはまったく同じだ。

昼間の撮影なら大差なし?! LiDARは夜間撮影と「将来性」に価値あり

となると、ポイントは「カメラ」になる。「12」はスタンダードモデルなので、広角と超広角の2つ。「12 Pro」はそれに加え「望遠」がつく。ここはiPhone 11 Proと同じである。

デジタルズームでも気にならないシーンが増えているとはいえ、2倍の望遠のありなしはやっぱり大きい。これは、昨年同様重要なポイントである。

もう一つのポイントは、「LiDARの搭載」。AR関連に興味があるなら、もう何も言う必要はない。12 Proを買わないのは損失だ。iPhone 12用のARアプリはまだ少ないのだが、iPad Proでの経験からいえば、LiDARのある・なしは体験を大きく変える。だから、そちらのクラスタの人は悩んではいけない。

このLiDARは写真にも影響する。だが実のところ、日常的には「そこまで大きな差でもないかな……」と思っている。どうやら、iPhoneのカメラにおけるLiDARは、「暗いところ」限定のようなのだ。日中の撮影では差が見つからなかった。日中の写真重視なら、「12」と「12 Pro」の差は小さい。

iPhone 12
iPhone 12 Pro
iPhone 11 Pro Max ▲日中、木々に囲まれた銅像を撮影。カラーバランスが少し変わったのか、iPhone 12系の方が緑が少し鮮やかで全体が見やすい。

ただ、夜にポートレート撮影をすると、いわゆる「シルエットの切り抜き」精度がかなり変わる。ピントもシャッキリして、ブレ感・ボケ感が減る。少し暗いところでの写真の写りに不満があるなら、「12 Pro」は良い選択肢だ。

iPhone 12
iPhone 12 Pro
iPhone 11 Pro Max ▲夜間のポートレートモード撮影。こうみるとあまり変わらないようだが、拡大すると結構違う。「12 Proがシャッキリしている」とも感じる。
iPhone 12
iPhone 12 Pro
iPhone 11 Pro Max ▲上記写真の頭のところを拡大。iPhone 11 Pro MaxとiPhone 12では切り抜き精度が大きく違う。さらに12 Proは誤判定も見えず、より精度が高い。

また、将来的にLiDARをさらに活かしたカメラアプリ・動画アプリが出てくる可能性は高い。そこを考えると、ここもARと同じく「将来に期待」で選んでおく……というのもアリではないだろうか。

動画については、iPhone 12シリーズ全体が「Dolby Vison方式によるHDR撮影」に対応した。これがなかなかすごい。ディスプレイが有機ELになってコントラストが劇的に上がったこともあり、HDR動画では、輝度を突き上げて再生するようになった。要は、HDR対応の映画と同じ扱いになったのだ。だからすごく見栄えがする。

機能自体は「12」でも「12 Pro」でも同じなのだが、「12」では4K・30フレームまでの撮影であるのに対し、「12 Pro」は4K・60フレームでもOK。この辺も、「カメラなら12 Pro」という印象を強くする要因である。

「12 Pro」はメインメモリーが6GB! ストレージが「128GB基準」でみると案外お得

さて、中身は本当に同じなのだろうか?

おなじみの「Geekbench 5」で調べてみると、メモリー搭載量が異なることがわかった。「12 Pro」は6GBで、「12」は4GBだった。なんと、メモリーもCPUコアのクロックも、「Pro」はiPad Proよりも上なのだ。CPUのベンチマークスコアも、コア数の違いからか、マルチコアの値こそiPad Proが上回るも、シングルコア性能では3割近く速い。

▲左が12、右が12 Pro。CPUなどのスペック。クロックは同じだが、メモリー搭載量がiPhone 12 Proは2GB多く、6GBになっている。
▲左が12、右が12 Pro。ベンチマークの値。12と12 Proの値はほとんど変わらない。この値は、iPhone 11はもちろん、シングルコアならiPad Proを超える。

iPad Pro並みのパワーが手のひらサイズに入っていると思えば、「12 Pro」は安い。さらに言えば、最廉価モデルで比較した場合、「12」のストレージは64GBだが、「12 Pro」は128GBである。128GB同士で比較すると、価格差は1万6000円に縮まる。

「望遠」と「LiDAR」、さらにメインメモリー2GB分と考えれば、1万6000円という価格差はそんなに悪いものではない。ほら、さっきまで「同じサイズで同じような性能なのに高い」と思っていた「12 Pro」が、途端にお買い得に見えてきた。

本当は4機種から選びたいけれど……

もちろんこれは詭弁。お金はやっぱり大切だ。

だとすると、そもそも「12」を選ぶよりも「12 mini」を選ぶ方がいい。実機で確かめる必要があるものの、「12」と「12 mini」のスペックは、画面の大きさ・解像度とバッテリー動作時間しか違いがない。だったら、2週間我慢して、さらに9000円安くてコンパクトな「12 mini」に……という選択もあっていい。ただ、正直、9000円で2週間悩むなら、買ってしまった方が精神衛生上良いような気はする。

そして、カメラに注目するなら、センサーサイズと手ぶれ補正、「望遠」の光学ズームが「広角」比で2.5倍になる「12 Pro Max」の方がいい。ただし、価格はさらに1万1000円上がるが。

2機種で選ぶよりも4機種から選ぶのがベストなのは言うまでもない。ただし、問題は「待てるなら」なのだが。2週間が待ち遠しくてもう待てない気持ちもわかる。よくわかる。

その場合には結局、「価格」を取るか「将来性」を取るか、の2択と言っていい。個人的には、この価格差なら128GBの「12 Pro」がいいのではないか……とも思う。「12 Pro Max」のカメラに未練がないなら、という前提条件で、だけれども。

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