医学部を目指す静岡学園の諸田拳(背番号70)【写真:荒川祐史】

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諸田拳は昨夏インターハイ後に引退、1月中に医学部受験予定

 第98回全国高校サッカー選手権の決勝が13日、埼玉スタジアム2〇〇2で行われ、静岡学園(静岡)が青森山田(青森)に3-2で勝利。両校優勝だった1995年以来、24年ぶり2度目の優勝を手にした。サッカーだけではなく、学業も重視しているという同部には、医学部を目指す部員がいた。

 華麗なパス回しや積極的なドリブル突破が特徴的な“静学スタイル”を貫き、決勝では2点差を大逆転。創立初の単独優勝を果たした静岡学園は、サッカー以外にも大切にしていることがある。

 優勝後、川口修監督は「サッカーだけじゃなくて勉強もやる学校なので、勉強とサッカーをやりたいという生徒がたくさん集まってきた」と明かす。J1鹿島内定のMF松村優太(3年)のように、サッカーの実力で進路を切り開く選手も多いが、今大会4得点のMF小山尚紀(3年)のように一般入試で大学進学を目指す部員も多く、学業もおろそかにはしていない。

 この日、スタンドで優勝を見届けた3年生の中には、医学部を目指す諸田拳がいた。1月18、19日のセンター試験を受験後、1月中に大学医学部の試験を受験するという。準決勝は受験勉強の時間を確保する必要があったため、現地に赴くことはできなかったが、優勝の瞬間を見届けるため、スタンドで声援を送った。決勝が終われば、毎日10時間超の勉強に打ち込む予定だという。「(指導者からは)学校生活をおろそかにするなと言っていただいてきた。一浪してでも頑張りたい」と目を輝かせた。

1年冬から予備校通い、夢は「スポーツドクター」

 きっかけは1年生の頃。捻挫など小さな怪我を数回していた諸田は、静岡市内の整形外科で出会った医師から感銘を受けた。スポーツ経験が豊富な医師だったため、リハビリなどをこれまでになくわかりやすく説明してくれたという。「スポーツを経験しているからこそわかるリハビリなどがあると思う」という諸田の心に、いつしか医師への憧れが生じていた。「サッカーをやっていたということを生かして、医者で多くの人を救えられたらいいな」。サッカー部の活動と受験勉強を両立することを決意した。

 1年生の冬から、静岡市内にある医学部進学を目指す学生のための予備校に通い始めた。毎日がハードスケジュールだった。早朝5時に起床。サッカー部の朝練に参加し、学校の授業と放課後の練習を終えて、午後8時から10時までの2時間を予備校での勉強に充てた。この生活を続けた。「正直、結構しんどかったけど、習慣化されてきて、だんだんと苦ではなくなってきた」。当然、一般に高校で学ぶレベルでは足りず、応用レベルの学習や医学の専門用語も学ばなければならなかったが、夢への情熱が諸田を突き動かした。

 悩んだ時期がなかったわけではない。静岡学園中時代はMFとして、スタメンで全国ベスト16を経験。高校進学後は主にサイドハーフを務め、2年生の新人戦でAチーム入り。3年生になった当初もAチームだった。昨夏のインターハイ時はBチームだったが、サッカーの実力もある。選手権が終わるまで部活動を続けることもできたため「難しい決断だった」と考えたが、医学部進学の目標を叶えるにはこれまで以上に勉強時間を確保することが必要と判断し、インターハイ終了後に引退することを決めた。

 プロになりたいという夢もかつては持ったが「選手ではなく、ドクターとしてJリーガーを支えていけるスポーツドクターになりたい」と、今は医師としてサッカーに携わることが大きな目標だ。仲間は全国制覇という夢をつかんだ。次は自分。医師と引き合わせてくれたサッカーに報いるためにも、机に向かい続ける。(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)