2008年から3年連続で「M-1グランプリ」(テレビ朝日系)の決勝に進出したナイツ。そんなナイツのボケで、ネタ作りも担当する塙宣之(41)にM-1に対する思いを聞いた。

――塙さんの本『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』(集英社新書)が発売中ですが、僕が買いに行ける範囲の本屋さんに10軒ぐらい問い合わせましたが、全店売り切れでした。

塙 ないみたいですね。

――文教堂書店の店員さんに在庫を調べてもらったら、全161店舗で在庫が5冊しかないと言われて、あきらめました(笑)。

塙 いや〜 ありがたい。

――結局、版元に取材用でいただいて読んだんですけど、これは漫才の参考書ですよ。いまM-1の予選が始まっているので、若手芸人さんがみんなこの本を買い占めてますね。

塙 それは絶対あると思います。そこまで高くない値段ですから。まぁでも「ナイツの漫才が好きだ」という人が買ってくれていると考えると、ある意味、土屋(伸之)のおかげでもありますよね。だから9割ぐらい、あいつに印税をあげなきゃいけない……。

――いやいや、それはあげ過ぎでしょ(笑)。なんで9割も土屋さんに? 吉本じゃないんですから、取りすぎでしょ(笑)。

塙 これは書いといてください、ぜひ。土屋のおかげなんで、僕は全然……。 

――いや、へりくだりすぎですよ。土屋さんのイメージも悪くなりますし(笑)。1文字も書いてないのに9割搾取するって。ところで、本にも書いてましたが、M-1が競技化されてきているという話を芸人さんからも聞いたりします。塙さんはどう思いますか?

塙 僕はそこまで競技化と思ってなくて、むしろそれをみんな意識しすぎてます。「ボケを詰め込まなくちゃいけない」とか。僕らはそんなふうに思って作ってなかったですから。ただ「3分間で100個ボケを入れたら面白いかな?」って感覚で作ったんで。

 いまは「M-1はこういうのがいいんだろ?」みたいな分析をしすぎちゃっているから……。本来は4分間、何をやってもいいのがルールだから、若手はもっと自由に、たとえば何もしゃべらない漫才があってもいいし、それぐらいぶっ飛んだ奴がいてもいい。何か同じような漫才になっちゃって。

――強いてM-1の対策を考えるとしたらどんなことですか?

塙 4分の漫才を作る癖はつけた方がいいと思います。
 僕らは2006年(M-1グランプリ2002から2006まで3回戦敗退)までは、ボケからネタを考えていたんですよ。ボケから考えると結局同じような漫才になっちゃうので、形から、要はハードを考えた方がいいんじゃないかって。それで言い間違いの漫才(ヤホー漫才)のハードを作ったんですよね。

 それまでは形にこだわらなくて、俺の人間力で行けるんだと、俺はおもろいやつで絶対に自信あるから、「ネタなんかどうでもいいだろう」って感じで。

 だから「なんで俺、(M-1予選で)落とされんだ」とか思ってて。でもフタをあけるとネタが面白くないんですよ。

 M-1はそんな奴がいっぱいいるから、まずは漫才をお客さんに聞かせるには、やっぱりハード。自分の漫才の形を作ることしかないと思います。それがもしかしたら対策かもしれません。

※塙宣之『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』(集英社新書)発売中

取材・文/インタビューマン山下
 1968年、香川県生まれ。1992年、世界のナベアツ(現・桂三度)とジャリズム結成、2011年に解散。同年、オモロー山下に改名し、ピン活動するも2017年に芸人を引退。現在はインタビュアー・お笑いジャーナリスト