「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今日の漢字は「完全」「完璧」の「完(カン)」。

たとえ残暑が厳しくても、8月が終われば「夏」は完了。宿題をまだ完成させていないのに、さあ次へ、と追い立てられるような気もします。

(TOKYO FM「感じて、漢字の世界」2019年8月31日(土)放送より)



「完」という字はうかんむりの下に「元(もと)」、「元気」の「元(ゲン)」と書きます。

うかんむりは、祖先の霊をまつる霊廟を意味する部首。

「元(もと・ゲン)」という字は、大きな首をした人が横を向いて立つ姿を描いたもので、人の頭の部分を強調してあります。

首から頭にかけては、人のからだの中でも最も重要な部分。

そこで「元(もと・ゲン)」という字には、「かしら、おおもと、はじめ」という意味があるのです。

では、うかんむりに「元(もと・ゲン)」と書く「完」という字からは、

どんな風景が見えてくるのでしょうか。

ある夏のこと。

ご先祖さまの霊をまつる霊廟で、元服の儀式を迎えた少年がいました。

きりっと結い上げた髪に冠をのせて成人となった彼は、そのあとすぐに、戦地へと赴いていきました。

そしてこの夏、彼は無事に村へと戻ってきました。

細い首、華奢な肩、あどけない顔には不釣り合いだった冠姿も今は昔。

彼ははじめての戦で勝利をおさめ、自信にあふれた表情と鍛え上げられた体で帰ってきたのです。

無邪気だったあの頃の面影が消え去ったかわりに、思慮深く多くを語らず、彼は静かに、祭壇の前で祈りを捧げます。

「完了」「完結」の「完(カン)」という字が示すのは、戦いに勝ち、戦死をせず無事に帰ってきたことを報告する儀礼の様子。

そこから「無事にことが終わる」、「最後までなしとげる」という意味をもつ漢字になったのです。

今日の漢字は「完璧」「完全」の「完(カン)」。

戦場から無事に帰還したことを祖先に報告する儀式の様子を表す漢字です。

お盆で亡き人をしのび、終戦の日に平和な世を望む。

休暇をとって日常を離れることで、自らの来し方行く末に想いをはせた人も居るでしょう。

そんな夏をしめくくるのなら、いにしえの人が「完」という漢字に封じ込めた心に触れてみてください。

与えられた時間を生き生きと生きぬいて、命をまっとうすることが「完」である、と、彼らは教えてくれています。

完璧でなくとも、不完全であっても、自分としっかり向き合って、自分らしく生きてゆけたら、それでいいのです。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。

その想いを受けとって、感じてみたら……。

ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献 『常用字解(第二版)』(白川静/平凡社)

9月7日(土)の放送では「素」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。



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聴取期限 2019年9月8日(日) AM 4:59 まで

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<番組概要>

番組名:感じて、漢字の世界

放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット

放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜8:20〜8:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)

パーソナリティ:山根基世

番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/kanji/